Theatre du Nouveau Monde, Theatre du Rideau Vert, Theatre d'Aujourd'hui、これらモントリオールの主要劇場はすべて仏語系。読者の皆さんの中には、英語の作品を観たい!という方も多いだろう。第一公用語である仏語を州法101号により保護しているケベック州のこと、演劇界でも例にもれず英語系は少数派。ただ、あまり知られていないところで常時ワークショップや制作は行われている。

 英語劇の観られる劇場・スペースを挙げてみよう。美術館近くの教会Erskine and American United ChurchCheney Hall、コンコーディア大学構内のD.B. Clarke Theatre、東部ではパーク・ラ・フォンテーヌのCentre culturel Calixa-LavalleeSt-Laurent通りを北上したInfinitheatreなど。大学やコミュニティ関連の劇場が目立つ。また、カナダ演劇学校(The National Theatre of Canada)が経営する劇場Monument-Nationalでは約2か月に一回の割合で卒業生たちによる制作を一般公開している。英仏語それぞれの公演あり。学校でも英仏両語のコース受講可。

 さて、年を追うごとに冬を代表するイベントとして定着してきた真冬の光の祭典、フェスティバル・モンレアル・オン・リュミエール(Festival Montreal en lumiere)。その枠内でも英語系イベントがさまざま用意されている。オペラなど舞台演出家として著名なアメリカのロバート・ウィルソンによる講演の他、MARIE BRASSARDJimmyの英語版を上演。後者は国内外のツアーを経た凱旋公演。二夜のみ。お見逃しなく!
Sat.2.8 - Sun.3.2.2003 Tue.-Sat. 8:00pm, Sun. 7:00pm, Sun.3.2 4:00pm

英語劇。辛らつなジョークを散りばめた悲喜劇。ハワードは家に閉じこもりがち。まわりのすべてに毒づくその習癖にはパートナーのケイアも困り果てている。人間にとどまらず、虫や物の落ち度まで採り上げては批判するのだ。そんな二人のところに隣人たちが尋ねて来る。雨降りの日にも花に水をやる呑気者ルイーズ。ハワードをすっかり軽蔑しているテレサ。そして彼らの友人バーンは世間に山積みされた問題に不安を抱えている。そんな人々が繰り広げる会話の行方は?20年以上のキャリアをもつ演劇人たちを集めた劇団。

<演目>Still Once<劇場>Theatre la Chapelle (3700 St-Dominique x Prince Arthur, metro Sherbrooke)<劇団>Le Nouveau Theatre Anglais<脚本>THOMAS MORISON<演出>MICHAEL SPRINGATE<料金>$18(学生・シニア$14)<写真>KIRK WIGHT

Tue.1.21 - Sat.2.22.2003 8:00pm

特別イオネスコびいきでない方々にも、ぜひ観て欲しい。生まれて50年を経たこの作品、今なお生きがいい。裸電球のような薄明かりのかもし出す幻想的な雰囲気が常に舞台を支配している。ヒッチコック映画のように、劇画的で小気味よい演出。本が山積みされた小さな机に向かって、せっせと作品を生み出すイオネスコのところに、バルトロメウスと名乗る男が次々と尋ねてくる。この3人のバルトロメウスたちは評論家であり「演劇専門医」である。彼らはイオネスコに社会政治傾向の強いブレヒト風の表現を強要する。イオネスコの妄想か現実かは別として、当時の時代の波を覆っていたブレヒト派教養人たちの暴走ぶりを風刺する。演出のELIZABETH ALBAHACAはまさにそんなイデオロギーと教義の時代を生きた演劇人だ。

<演目>L'Inpromptu de l'Alma<劇場>Theatre Prospero (1371 Ontario E. x Champlain, Metro Beaudry)<原作>EUGENE IONESCO<演出>ELIZABETH ALBAHACA<料金>$22(学生$17

Thr.2.13 - Sun.3.2.2003(各公演日時・料金等は公式サイト参照

劇場で観るサーカスアート公演。アクロバットだけでなく音楽や歌に彩られた作品。外国ツアーがますます多くなっているシルク・エロワーズ公演をモントリオールで観る機会は限られているだけに貴重。

<イベント>Festival Montreal en lumiere<演目>Nomade<劇団>CIRQUE ELOIZE<写真>Source: Festival Montrel en Lumiere
英語劇。ロベール・ルパージュ作品でおなじみの顔MARIE BRASSARDの創作・自演。夢の中に生きる、人間の空想の創造物ジミー。ごくシンプルな様相でソロ作品の枠を広げた話題作。2001年の初演以来、再演を重ねている。

<イベント>Festival Montreal en lumiere<演目>Jimmy<演出>MARIE BRASSARD<写真>Source: Festival Montrel en Lumiere
60年代にブロードウェイで好評を博し、日本でも松本幸四郎主演でおなじみのミュージカル「ラ・マンチャの男」。ケベック版はモントリオールを代表する演出家の一人、RENE RICHARD CYRが演出。当作品を書いたセルバンテスが投獄生活中に構想したドン・キホーテとサンチョの物語をジャック・ブレルの仏訳版で。

<イベント>Festival Montreal en lumiere<演目>L'Homme de la Mancha<演出>RENE RICHARD CYR<写真>les 仕itions Libretto

Wed.2.26.2003 8:00pm

英語劇。ケベック州のヘルスケアシステムをテーマにしたコメディシリーズ。2002年11月から6ヶ月以上に渡り7作を上演。ただし、一作につき一回公演のみ。Part I 「問題は?」、Part II 「医者と公務員」をこれまで上演してきた。毎回上演後、ゲストを招いてのトークを開催。社会派ならずとも大いに気になる当地の医療システムをドキュメンタリー劇を通じて追究したい。仏語系演劇では滅多に見られない、実質的でユニークな社会劇だ。

<演目>Sante! Part III - The Economics of Health Care<劇場>J. Armand Bombardier Theatre, McCord Museum (690 Sherbrooke West x University, metro McGill)<劇団>Projet Porte Parole<演出>JACOB RICHMOND<料金>$12-15

Thr.2.13 - Sat.2.15.2003 8:00pm

英語劇。中国系オーストラリア人三世のWILLIAM YOUNGは、人種差別をテーマとした作品を披露。オーストラリア先住民のおかれた状況とドイツ人による南アフリカ移住という二つの社会史実をもとに創作した。社会に正面から切り込み、人類移住の問題に焦点をあてる。舞台にミュージシャンを伴い、一方で800の映像を投影。実験演劇の世界に入り込む前は建築家志望だったYOUNG。77年から約10年間は演劇界を離れ、写真撮影に没頭してきた。その後、モノローグとスライド撮影を使った演劇表現法を進化させていった。

<演目>Shadows<劇場>Usine C (1345 Avenue Lalonde x Vigitation, Metro Beaudry)<脚本・演出>WILLIAM YOUNG(オーストラリア)<料金>$25(学生・シニア$20
<観劇後感>

観 劇 日:1.15.2003
作   品:Au bout du fil
演   出:DANIEL BRIERE
場   所:Theatre de Quat'Sous
脚   本:EVELYNE DE LA CHENELIERE

「人生の中で、大人になることをいつの時点から義務づけられたのだろう」

そんなことを考えさせる作品だった。握ったさおにぶら下がっている釣り糸の先(Au bout du fil)には何もない、そんな時代が誰にもあっただろう。行動範囲は狭いけれど、無限の時間と空間をもったそんな頃が。

この作品の登場人物、11人の「子供」たちは、それぞれ釣りざおを与えられて湖畔へと送られた。子供たちは口々に主張しあう。

「ぼくのママはぎゅうっと抱きしめてくれる!」

「先生はぼくの作文がおかしいと言って直したけど、パパはそのままでいいと言ったのさ!」

実はこの「子供」たち、年齢がさまざまだ。見るからに20代、40代、50代、70代までも、見事に世代をまたがっている。いや、誰が彼らを子供たちだと言っただろう。夏のキャンプのために湖畔にやって来た彼らには、大人、子供、女性、男性という区別は見られない。

『北風と太陽』の物語を思い出す。この作品『Au bout du fil』はさながら「太陽」だ。何も押しつけることなく、すっと心をつかむ陽だまりのような存在。かといってメランコリックでもノスタルジックでもない。そこには、現実のみが浮き彫りになる。それは子供の辛らつさ、大人の世界に届かない未熟さ。そしてジレンマ。このようにごく心理的、社会的なテーマをあくまで空想の層で組み立てている。先ほどから子供子供と言っているが、結局、この作品のフォーカスは「老い」に当てられているのだ。なるほど、湖畔の11人たちは老人施設の入居者たちだという説もある。子供時代と老年に潜む共通点という逆説がそこにはある。誰もが通過するだろう切り離された二世代。でも社会では似通ったところのある存在。

11人の中の一人Laを演じるのは、当作品の脚本家EVELYNE DE LA CHENELIERE。彼女の人気作品の英語翻訳版Strawberry in JanuaryCentaur Theatreにて3月9日まで上演されている。こちらは二組の恋人たちの物語。DE LA CHENELIEREは、今後の活動が楽しみな脚本家だ。また、Doを演じるJEAN-PIERRE RONFARDはケベック州の実験劇や演劇分野の教育に没頭してきた演劇人。こじんまりとした舞台に11人という大所帯の中、ベテランと若手役者たちの共演も見ものだ。

表紙写真:L'Inpromptu de l'Almaより
写真:CARMEN JOLIN

取材・文:広戸優子
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