子供専門劇場ラ・メゾン・テアトル(laMaison Theatre)に、このごろ注目している。ふだん親同伴でも通常の劇場への来場が限られる子供たちが、このラ・メゾン・テアトルだけではシーズンを通して主役なのだ。ここでは観客席のライトは公演中も字が書けるほどの薄明かりだし、観ながら声をあげたってかまわない。実際にそういう子供たちは劇場内のたくさんいる。

 人形劇に限らず、ダンスや語りなど公演ごとにタイプが異なる作品群。これがいかに子供の想像力を刺激するか計り知れない。子供にここまで?と驚くほど懲った舞台装置は、大人も見て楽しめないはずがない。これなら目が肥えるわけだ。その上、比較的わかり易い仏語をはっきりと発音するので、仏語学習初心者が課外学習として利用することもできそう。

 私の知っている限り、日本では見られない徹底した子供主役の世界、ぜひ、たくさんの親子に訪問してみて欲しい。初日に行けば、公演後には子供向けレセプションもある。その他ワークショップなど、舞台芸術を通して子供と大人、果ては社会とのコミュニケーションに敏感な施設だ。もちろん、子供連れではない人が半数はいるので、子供抜きでもどうぞ。
Thr.11.21- Sun.12.22.2002 8:00pm

消防士のマダムピンポン。今日も二つの森火事を消火し、3匹のブタを救出し、龍に水をかけ(?!)、ご帰宅。制服を脱ぎバスローブに着替え、やれやれお風呂タイム。おや、バスタブの陰でぶつぶつ言いながら服を脱いでいるのはだれ?現れたるはピンクの子ブタ!「濡れるからいやだぁ」とすねる子ブタだが、マダムの話術か手練か、ついに風呂に入り上機嫌。親子、はたまた友達同士の対話を楽しむ彼らに、あるひとつの日常生活を投影した作品。子ブタの繊細な動きに注目。

<演目>Le Bain(3〜6才児対象)<劇場>laMaison Theatre (245 Ontario Est x St-Denis, metroSt-Laurent)<劇団>Theatre Bouches Decousues<シナリオ・演出>JASMINE DUBE<料金>$17(子供$13)

Thr.11.28 - Sat.12.14.2002 8:00pm

端的な言葉に表れる人間の生命原理―魂・霊魂・心。ノルウェーの脚本家JON FOSSEが描く、嫉妬の物語。ナショナル・アーツ・センター仏語劇とTheatre UBUの共同制作。ロベール・ルパージュかドゥニ・マルローか、と言われるほど評価の高い演出家ドゥニ・マルロー。フランスはアビニョン演劇祭でも注目された。

<演目>Quelqu'un va venir<劇場>Usine C (1345 Avenue Lalonde x Vigitation, Metro Beaudry)<劇団>Theatre UBU<演出>DENIS MARLEAU<料金>$26(学生・シニア$20)

Tue.10.22 - Sun.12.1.2002 8:00pm (Sun. 7:00pm)

ケベック人気現代作家ミシェル・トランブレの作品は、世界20ヶ国語で翻訳上演されている。モントリオールのケベック人を描いた作品が定番だが、それだけ普遍的な人間の側面が描かれているということだろう。この新作は、人気オペラ歌手パトリシア・パスケッティを中心に展開する。「サロメ」を演じる千秋楽、音をはずしてしまった彼女。それに気づいた観衆たちだが、特別感知しなかった。ところが、これが彼女のキャリアがおびやかされる始まりだった…。当作英語版公開は世界初。

<演目>Impromptu on nuns'island<劇場>Theatre Centaur (453 St-Francois Xavier x Notre-Dame)<原作>MICHEL TREMBLAY<劇団>Centaur/Tarragon Theatre (Toronto)共同制作<料金>$23-37(学生$20
<観劇後感>

観 劇 日:Fri.11.8.2002
シリーズ:La Bible
演   出:ANTOINE LAPRISE
場   所:Theatre d'aujourd'hui
劇   団:Theatre du Sous-Marin Jaune
写   真:SOPHIE GRENIER

ケベックの演劇界でよく見かけるのは、おもちゃ箱のようにいろいろな要素を盛り込んだ作品だ。あふれんばかりの想像力に彩られたその箱を覗き込むときの心持ちは、子供のそれに似ている。そんな思いで作品を観たTheatre du Sous-Marin Jaune(テアトル・イエロー・サブマリン)は、マリオネットにこだわった演出を追求している劇団。でも演出家ANTOINE LAPRISE>が「作品は8歳から88歳向け」と言うように、必ずしも子供向けではない。

 さて、「旧約聖書」という、とてつもなく人間的かつ宇宙的な題材をこの劇団なりに解釈し、自由に演じたこの作品。アダム、エバ、カイン、アベル、モーゼ、ヤコブ、アブラハム…聞きなれた名前が次々と登場。ほとんど場面が変わるごとに、人形の大きさや素材も変わる。冒頭の人類創世は粘土製。黒ずくめの人間が出てきて、粘土の塊から人型を形作る。その次の世代はスポンジ生地の人形。そして木製のノアの時代の人々、などなど。果てには人間の顔プラス高さ30センチほどの人形の胴体といった組み合わせの「人」人形が登場。このめまぐるしい素材の変化は、同時に人間の進化を表していた、というのも演出家の談だ。

 2時間という長丁場を支えたのは、この豊富なアイディアと、聖書に出てくる逸話の普遍性だろう。ジョークで笑わせ、アメリカによるイラク爆撃に触れて苦笑させ、モーゼをピストルを乱射するチャールトン・ヘストンにかけてまた笑わせ、そして聖書を解釈して学ばせる。1960年代以降はカトリック勢力が衰え、聖書を読む人は皆無になったというこのケベック州。さまざまな要素が盛りだくさんのこの作品、少しかけて頭を整理し、そんな背景もあわせて改めて観るとおもしろい。

表紙写真:La Bibleより
写真:SOPHIE GRENIER

取材・文:広戸優子
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