おなじみ「ゴドーを待ちながら」。ベルギーのLORENT WANSON演出によるエストラゴンとウラジミールは、若くて暴力的なエネルギーに満ちていた。怒って、笑って、抱きあって、なぐって…はじける体の動きをふんだんに交え、2時間という長丁場、観客たちの関心をがっちりつかんで離さない。

「何する、今?」

「ゴドーを待ってただろう」

「そうだった!」

ゴドーを待つ行為のみが2人の当面の関心事だ。

しかし、ゴドーとは?

『それは神(God)だ』

 ある逸話がこう解釈している。エストラゴンとウラジミールは神の到来を待っていると。確かに、2人の姿を「迷える子羊」ととらえると、「待つ」という行為が信憑性を帯びてくる。もっとも、当の作者サミュエル・ベケットはこの説を否定しており、実際、家族中で一人だけアンチ・プロテスタントだったという。

   さて、ビエンナーレ等、世界のビジュアルアートが集まる秋のモントリオール、今月はデジタル音楽や3Dなどマルチメディアを駆使した公演が目玉!
Fri.11.1 - Sun.11.3.2002 8:00pm

「ある人気映画監督とそのファンの冷酷な対面。ある事件を発端に、ストーリーは精神的、美的領域へと流れ、その核となるテーマが浮き彫りになる。「芸術とは何か?」アーティストが主役であるこの作品だからこそ、このテーマ。それは、芸術の価値を完全に認識していながら一方で断念しているこの映画監督のことだ。秋の夜に出会う、暴力と精神世界そして芸術が渦巻く異色作。

<演目>Le Silence 2<劇場>Theatre la Chapelle (3700, St-Dominique x Prince Arthur, metroSherbrooke)<劇団>Theatre Deuxieme Realite<シナリオ・演出>ALEXANDRE MARINE DUBOIS<料金>$20(学生・シニア$15)

Wed.11.13 - Sat.11.23.2002 9:00pm (11、17休演)

「ミックスメディア」なる新舞台が、シテ・マルチメディア内の新スペースFonderie Darlingで発表される。「裸のサル」の著者、英国人類学者デズモント・モリスの衝撃的な考察を映像・音楽化したこの作品。ダンス、映画、3D投影を駆使しつつ、領土や宗教、死についての人類の認識を問いかける。地元では知る人ぞ知る注目パフォーマーMICHEL LEMIEUXが、12年間の沈黙を破って演出も手がけた。集うパフォーマーたちはLEMIEUXの他、人気ダンスカンパニーやサーカスで演技してきた面々ばかりだ。シテ・マルチメディアは、もう一つのモントリオールの顔を見せてくれる新興エリア。工場跡と最新ビルの対照が、なんともいえずいい味を出している。早めに出向いてエリア内のカフェに入ってみるのもいい。

<演目>Anima<劇場>Fonderie Darling (745 OttawaxPrince,metroSquare-Victoria)<劇団>4D Art<演出>MICHEL LEMIEUX/VICTOR PILON<料金>$26(学生・シニア$20)

Tue.11.12 - Sat.11.16.2002, Tue.11.19 - Sat.11.23.2002 8:00pm

カンパニーPMEによる英仏バイリンガル作品。このカンパニーは演劇、ダンス、ビジュアルアートなど、分野の違うアーティストたちの寄り集まり。だから、その作品は他では見られない、カテゴリー付け不可な様相をしている。演劇が演壇と化した新作"Unrehearsed Beauty"、世界がテロ戦争の危機にある昨今、アートが世論にもつ影響力を再認識させてくれる作品となりそうだ。PMEはこの作品をもって北米の他、ヨーロッパツアーをする。ダンスと演劇の境界を取り払った、独自のユニバースを確立しつつあるマルタン・ベランジェのしなやかな存在感に注目。

<演目>Unrehearsed Beauty / Le ge´nie des autres<劇場>MAI-Montreal, arts interculturels (3680 Jeanne Mance x Prince Arthur, metro Place des Arts)<劇団>PME<料金>$14(学生・シニア・Carte Acces Montreal $10

Thr.11.7−Sat.11.16.2002 8:00pm

第7回国際フェスティバルElectraは、今年もドイツ、イギリス、アメリカ等から、時代を先走るデジタル音楽アーティストたちを紹介。

<イベント>Electra<劇場>Usine C (1345 Avenue Lalonde x Vigitation, Metro Beaudry)
<観劇後感>

観 劇 日:Mon.9.23.2002
シリーズ:Les voies du mime
場   所:Espace libre
劇   団:Omunibus/Teatro Linea de Sombra(メキシコ)Theatre du Mouvement(フランス)

一ヶ月にわたって繰り広げられたマイムフェスティバル。「現代マイムとは?」という命題を胸に、ケベック、メキシコ、フランスの3カンパニーそれぞれの作品の後、国境を越えての共同創作を観た。

 関係者によると、演劇、ダンスそしてマイムというように、マイムは一つの分野として独立したものと認識されている。確かに、演劇の台詞を体で置き換えてしまったようなもので、演劇と呼ぶには、その核的部分が取り払われているように見えた。マイムを他分野と一線引かせているのは、なによりもまずテクニックだろう。この3カンパニーはフランスのETIENNE DECROUX(マルセル・マルソーの師)から受け継がれた技術を基としている。自己をとり払う集中力。ダンスコンタクトに即興。それらを駆使しつつ、ひとつのストーリーやテーマを追う。そして、その次に歴史。紙幅が許さず、これについてはまた別の機会に書きたい。

 さて、想像に難くはないものの、3か国各々の傾向は異なっていた。まず、ケベックのOmunibusによる"Interieurs femme"は感情と日常のモノローグ。絵日記、フォト日記などいろいろある中で、この作品はいわば「ジェスチャー日記」。舞踏を思わせる、濃縮した人生図がそこにあった。実際、日々、周囲の人々の知恵も借りつつ蓄積したジェスチャー集をもとにできあがった作品だという。虚勢と誇りが入り混じり、情けないようでいて自分で立っているだけの力をもっている、ごくごく人間的な女性像。このOmunibusの作風、他のカンパニーの作品と比べ、古風さが目立つ感があった。人間、感情だけの生き物ではない。時代を超える要素は確かにあるが、「現代」マイムと呼ぶからには今の時代らしさを映す要素をもっと見たかった。

 メキシコのTeatro Linea de Sombraによる"Galeria de Moribundos"。やはりドラマチックな要素はOmunibus作品のイメージに重なるものの、こちらは文学性が強い「演劇」をアクロバティックな技術も駆使して表現し、飽きさせなかった。サミュエル・ベケット作品に出てくる人物像へのオマージュで、その不条理性が狂気と理性の対比を通して表現されていた。青髪の娼婦の登場が不条理性の中に妙な現実味を吹き込む。死の願望にとりつかれた男と無表情な息子(等身大のマリオネット)とのやりとりには、欧米よりは日本に近い、死に対する観念が反映されていた。

 3番手は"Chant perdu des petits riens"。フランスのカンパニーTheatre duMouvementによる。洗練された、これぞコンテンポラリーの世界。ミニマルな視点で、体の動きの豊富さを存分に追究していた。そして行き着いた表層はごくごくシンプル。ショートコント的な筋書きひとつひとつが、常に自分の周辺から生まれている。「人間の感情は喜怒哀楽だけではない」とばかりに、「感情1」、「感情2」、「感情3」…と披露、「感情23」になってもまだ終わりは見えてこない。

 さて、以上3カンパニーによる共同制作"L'attitudes croisees" はというと、総勢15名が舞台に出ずっぱりで、かなり異様な雰囲気を持つ作品だった。常に豪華船の甲板が舞台。冒頭、海を想定した奥の壁を皆が見つめており、観客には背を向けた状態だった部分が興味深かった。求愛したり、愛が芽生えたり、失恋したり。それぞれの個性がしぐさや行動ににじみ出る。オリエント急行を思い出させるこの作品、オールスターはいいけれど、皆が主役で脇役というのには少々退屈感をおぼえた。

表紙写真:Theatre Deuxieme Realite "Le Silence 2"

取材・文:広戸優子
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