1年ほど前から改装中だった劇場Espace libre (表紙写真:ビル再建中) が今季、再オープンする。Theatre Denise-Pelletierを始め、モントリオール東部、仏語系地区には旧い劇場が点在している。1960から70年代の国際博覧会、オリンピックを経ていかにこの地区が整備され、文化的な中心地とされていたかがうかがわれる。1981年から存在するこのEspace libre、実験的な創作を試みる劇団Nouveau Theatre Experimental, Omunibus, Carbone 14の前身である Enfants du paradisの拠点だった。当建物は半世紀以上さかのぼる1904年に落成した旧消防署だ。その面影を残した独特な劇場で、「実験的な伝統劇」がシーズンを通して見られるようになる。
■Thr.9.12 - Fri.9.13.2002 8:00pm

3人の若者と一人の大人が繰り広げる、友情と父性の物語。 「不寛容、それは恐れや偏見が変形した一つの様相?」…そんな疑問を投げかける。1996年、YVES GAUTHIERによって設立された劇団Anima 21は、ゲイの人々の特性を活かして、演劇という形態で表現し、世に広めていくという目的を掲げている。社会的なアクションの一環としても、人間心理の探求としても捉えることのできる部分がこの制作の価値だろう。

<演目>Une place au soleil<劇場>Centre Culturel Calixa-Lavallee (3819 ave Calixa-Lavallee ; parc Lafontaine)<劇団>Anima 21 - Theatre gai de Quebec<料金>$20、学生$15

■Tue.9.10 - Sat.9.14.2002 8:00pm

モントリオールを舞台とした物語。とある若いアーティスト仲間にふりかかる「ありきたりの」不幸の数々。バクテリア、事故、がん…。社会における表現者として、友人として、運命にとらわれた彼らはどう状況をくぐりぬけていく?―新生Espace Libreを飾る一作。

<演目>Scenario (drame en 3 actes)<劇場>Espace Libre (1945, Fullum x Ontario ; metro Frontenac)<シナリオ・構想>FRANCOIS MARQUIS<劇団>Nouveau Theatre Experimental

■Fri.9.27 - Sat.10.19.2002 8:00pm他(劇場サイト参照)

モリエール、コルネイユ、チェーホフ等、古今の代表作家作品を取り揃えたTheatre Denise-Pelletier の今シーズン。まずは1953年の創作以来、世界で演じられているベケットの不条理劇「ゴドーを待ちながら」から。浮浪者エストラゴンとウラジミールは待っている。とあるゴドーという人物を。何故待っているのか?ところでゴドーとは?誰も知らない。裸木ひとつの舞台で繰り広げられるこの作品。ポッツォというサド的な人物がとおりかかる。奴隷ラッキーをつないだひもを手に、自慢やら陶酔の話をひとしきりしては去っていく。ゴドーは果たしてやって来るのか。結局、「待つ」という行為について2人、そして観客たちは何か発見できるのか―。ベルギー国立劇場の芸術監督LORENT WANSON、ベルギーの役者たちによる公演。エストラゴンを演じる CYRIL BRIANT に注目。

<演目>En attendant Godot<劇場>Theatre Denise-Pelletier (4353 Ste-Catherine est x William David, metro Viau + bus #34, metro Pie-IX + bus #139s)<原作>SAMUEL BECKETT<演出>LORENT WANSON<劇団>Centre Dramatique Hinuyer(ベルギー)<料金>$31、学生$19

■Tue.9.24 - Sun.10.20.2002 8:00pm他(公式サイト参照)

16世紀。あるイタリアの村では、才能豊かで愛すべき少年レオナルド・ダ・ビンチの保護者を巡って一騒動起こっていた。未婚の母 Caterina か、ダ・ビンチ家の権力者か。当家の友人である Bartolomeo はその調停に乗り出す。絵画に限らず、彫刻、建築、工学、音楽、解剖学、数学等に才を表したダ・ビンチ。あまりに精密なルネッサンス期を築いた彼の幼少時代を描く。

<演目>Vinci<劇場>Theatre Centaur (453 St-Francois Xavier x Notre-Dame (4353 Ste-Catherine est x William David, metro Viau + bus #34, metro Pie-IX + bus #139s)<演出>MAUREEN HUNTER<料金>$23-37、学生$20
<観劇後感>

観 劇 日:Wed.8.21.2002
演   目:Jocelyne est en depression
演出/シナリオ:OLIVIER CHOINIERE
場   所:Theatre d'aujourd'hui 階上テラス
写   真:CHRISTIAN TREMBLAY
劇   団:LARGGL!

 冬。モントリオールの冬。3年も越冬すれば何か肩に荷を負ったような思いを味わい始める。一方ここは涼風さわやかなモントリオールの夏の夜。テラスで冬の話をする。現地の人々は苦笑し、夏の観光客たちは実感のないまま笑う、「くそ長く、くそ寒い」冬のことを。思えば冬の真っ只中、数十年、雪とともに生きてきた現地の人々との会話に雪の話題など出てこない。しかし陽気な彼らに、比較的新参者の私は雪の話を何気なく、してしまう。すると、冬はスキーやスケートをする楽しみがあると言ってたたえていた笑みが苦笑にかわり、やっぱり何十年いても冬を好きになるわけではないのだと告白する。う〜ん、たかが冬、されどモントリオールの冬!

 さて、冬の話だとわかれば 某“Jocelyne” が「鬱」気味なのもうなづくことができる。実はこのJocelyneとは、ラジオカナダでおなじみの天気予報士とのこと。そう、この物語は冬、えてして天気予報に翻弄される人々の告白をコミカルに描いたものなのだ。ほぼ愚痴に近い「告白隊」を構成するのは労働者、学生、自由業者風の3人。天気予報が真っ白な未来に光を灯してくれるとばかり、その依存感を示す。そこに現れた天使とも悪魔ともつかない「冬の精」Evelyneは、辛らつな言葉で3人をいなす。メキシコやフロリダの話をすれば、「その話だけはしないで!」とちゃちゃを入れられつつも。

 天気の話ほど月並みで、かつ気になる話はない。舞台作品を使ってこのモントリオールの冬の話をもちかけた作者。こうして「悲劇」をネタに笑ってみても、冬が近づけば早速人々の心には憂鬱感が漂い始めるだろう。でも、現地の人にとっては何十年と「ともに生きる」冬だからこそ、ちょっと違う角度から見直してみるだけで、また一つ冬を乗り越えるきっかけとなるのでは、という作者のささやかな提案を感じた。

表紙写真:劇場Espace libre再建中

取材・文:広戸優子
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