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レストラン
La Tamaleraの外観。お隣の「Le fruit shop」には、カラマタのオリーブオイルのレフィルに何度か来ていたが、ずっとカフェだと思っていた。
前菜的に頼んだワカモレ&トルティーヤチップス$7。注文が入ってから作られるワカモレは新鮮そのもの。黒豆のソースもついてきて、メキシカン気分アップ。
チキンのタマレスがまだ準備できていなかったため、チーズとハラペーニョのタマレス、ポークのタマレス各$2.75を頼む。小ぶりで穏やかで優しい味。
ハイビスカスが自然にこんなきれいな色を作り出すオルチャータ$4.50
スペインのバレンシアが発祥といわれるタイガーナッツで作られた植物性ミルクは、メキシコに持ち込まれてこんな風に。
エビフライのタコス$12。中身がエビのフライだと知らずに頼んだ人気のあるタコス。北アメリカのタコスにも希望の光が!
ポークのマリネのタコス$9.50。これも店の人気定番メニュー。辛いソースは、ホントに辛いので量に注意!
今日のデザートはコーンの焼ケーキ$5.50。頼んで良かった~。
さっぱりと清潔な雰囲気に好感が持てる。食べ物はその日に作られ、新鮮な印象は食べ物や飲み物からも感じられる。
 タマレスという中南米の食べ物がある。トウモロコシを挽いた粉を、肉などの具と一緒にバナナの葉っぱやトウモロコシの皮に包んで蒸した、ちまきのような食べ物だ。国や地域によって形も具も味も変わってくる。私が初めて食べたのは、南米の険しい岩山の麓にあった小汚い売店兼食堂で食べたタマレスで、しっとりむっちりふっくらしていて、野菜とチキンが一体となってめちゃくちゃ美味しかった。つなぎとなっていたふわとろがトウモロコシの粉だとわかったのは、ジャングルに近い地域に住んでいる人々が作るタマレスを食べたときのこと。その後、街に降りてからだんだんわかってきたのは、タマレスは都市部ではあまり人気のある食べ物ではなくなってきていること。もちろん食堂でも見かけるが、あまり美味しくなかった。いわゆる昔から作られてきた地味な食べ物で、今では「田舎のおばあちゃんちでは、たまに食べるけど・・・」という位置づけなのかもしれない。となると、外でわざわざ食べる人が少なくなり、店も力を入れなくなり、味が落ちていくという図式が想像できる。

 説明が長くなったが、岩山の麓で食べたタマレス、田舎のジャングル地帯で作られたタマレスに似たものが作れないかと、レシピを検索していたら、Mile EndにあるLa Tamaleraというメキシカンレストランが検索に上がった。あの地味な食べ物を作っているレストランがあるとわかっただけで大発見な気分だ。しかも、定期的に買っているカラマタの農場直売のオリーブオイルの店にも近い。オリーブオイルのために出かけるのが億劫だっただけに、早速オイルの詰め替え瓶を持って出かける気になった。

 カラフルな小物が配された爽やかな雰囲気の店内は、もう6年も営業しているとは思えない清潔感がある。ソフトな物腰のメキシコ出身の男の子が、メニューについて説明してくれる。定番で一番人気のあるタコス2種類と、店の名前にもなっているタマレスを2種類頼んだ。 フルーツジュース以外のメキシコらしい飲み物はあるか尋ねると、オルチャータ(Horchata)を勧めてくれた。タコスやタマレスが出てくるまでつまむワカモレ&トルティーヤチップスも頼んでみる。

オルチャータ:Horchata $4.50
ワカモレ&トルティーヤチップス:Guacamole & Chips $7
エビフライのタコス:Baja Tacos $12
マリネしたポーク・コリアンダー・パイナップルのタコス:Tacos al Pastor $10
ポークのタマレス:Porc Adobo $2.75
チーズとハラペーニョのタマレス:Fromage Jalapeno $2.75
今日のデザート:コーンケーキ $5.50

 La Tamaleraのオルチャータは米、ミルク、シナモン、バニラ、ハイビスカスの花を使って毎日お店で作られる飲み物だ。アーモンドミルクやライスミルクをイメージさせる優しい味わいに、ハイビスカスの天然カラーである鮮やかなピンクが添えられている。元々は、ヨーロッパの大麦を使った飲み物が起源と言われ、ヨーロッパ各国で独自の発展を遂げている。スペインではバレンシア地方でタイガーナッツ(キハマスゲの地下茎)の絞り汁に水と甘味を加えたものが有名で、オルチャータの発祥の地ということだ。スペインの侵略以降、メキシコでは米やアーモンドがタイガーナッツの代わりに使われ、オルチャータは普段からよく飲まれる飲み物となった。

 注文が入ってから作るという新鮮なワカモレとトルティーヤを、オルチャータを飲みながらつまむ。トマトがたっぷりでアボカドが少な目な感じのワカモレだが、しっかりパリパリ感のきいたトルティーヤと合わせると、トマトのジューシーな感じがいい。黒い豆のペーストもついてきて味にバリエーションが出る。

 次に運ばれてきたのは、蒸したてのタマレス。私がいろんな場所で食べたタマレスよりずっと小さいが、穏やかで素朴で品がよい。インカの時代から食べられてきたというタマレスは、メキシコの家庭では年末や年始にたくさん作られることもあるという。こんな小ぶりのかわいらしいちまきルックが山積みになっているのを想像する。日本なら、年越し蕎麦に何玉湯がく?お正月のお雑煮にいくつお餅入れる?という情景に通じるものがあるのかもしれない。この店では、タマレスも作り置きせずに、その日ごとに蒸したてのものを出す主義ということもあり、チキンのタマレスはまだ準備中だったのは残念。

 そして、La Tamaleraでゆるぎない人気メニューだというタコスが登場した。 長~いプレートに、タコス3つと真っ赤な辛いソースと一口サラダが盛られている。よく中身を把握しないままオーダーし、目の前におかれたタコスを頬張ったら「あら、美味しい!」北アメリカのタコスに興味が湧かない私の口から出た言葉とは思えない。そこで中身を調べたら、エビフライのタコスだった。揚げたてのさっくりアツアツのエビと柔らかく暖かなタコスの皮のハーモニー。メキシコの路上で立ち食いするタコスの味・スタイルにより近く、具材、見た目、細かい仕上げは北アメリカ流を取り入れている印象。ポークのマリネのタコスも同様、本場の印象を残しながらひと工夫されたフレッシュな味に仕上がっている。

 今日のデザートは、温かなコーンケーキ。1日以上経った焼き菓子なら頼まないが、注文を受けてから作るというので頼んでみた。これが素晴らしかった。ふんわりさっくり焼き上がっている。南米のある地域でよく食べられる、甘みの強い種のトウモロコシを使ったアレパ(南米の常食パン)に似ている。日本の昔ながらの純喫茶にあった厚みのあるまん丸ホットケーキを、一口サイズにして、もっと軽く甘くさくさくにした感じだ。

 そういえば、南米の都市部で出会った大学生の女の子に聞いてみたことがある。
「タマレスってこんなに美味しいのに、どうしてみんな食べないの?」と私。
「アイ・ドン・ノウ、もっと美味しいものが選択としてあるからかな。」と彼女。
「もっと美味しいものって何?」
「ピザとかハンバーガーとかフライドチキンとか。」

La Tamalera(メキシコ料理)
226 Avenue Fairmount O
最寄り駅:Laurier, Outremont


取材・文:稲吉京子