ナスカの地上絵を思わすトリがトレードマーク。金曜の夜はやはり人でいっぱい。女性2、3人のお客さんが意外に多い。
サーバーとバーテンダーを兼ねた男女が楽しそうに働くカウンター内。厨房は奥と、メインバーの中央に。
ピンキリのピンだったセビチェ$20。本日の魚スギが新鮮。茹でたコーンと軽くサクサクの揚げたコーン違う2種類のコーン粒が意外な美味しさ。ライムをメインにしたマリネ液が印象的。
スパイシーカリフラワー$10。ペルーでは重要なチリペッパーAji Amarilloとココナッツミルクのシチューで和えてある。家で作ってみたくなるほんわかな一皿。
ほろほろ崩れるカリフラワーをココナッツミルクの甘いシチューと混ぜながら。
ペルーのサンドイッチ、Butifarra$10。本国ではハムやソーセージなどを挟むらしい。ここでは、カモの炭火焼きとCriolla(ペルーではいろんな料理に合わせて食べられる薬味ソース)を蒸しパンのような柔らかいパンで。
EL VATO$13と呼ばれるカクテル。面白いカクテルが豊富。
 12月はパーティーシーズン。友人たちは、クリスマス前後から各国に散らばっていく。出発前に会って、「今年1年色々とありがとうね」の杯を酌み交わす時期。2月までバミューダで過ごすというウォレンを夕食に誘った。こういうキラキラの時期にふさわしいのはTiradito。ペルー料理をベースにしたタパスや食事が楽しめる場所だ。さらに、ヨーロッパでは注目の「Nikkei」(日本料理のエッセンスを加え独自のジャンルになりつつある日系ペルー料理)の世界も少し覗けるレストランだ。プラスαとして、Place des arts駅やPlace d’armes駅から、外を長く歩くことなくたどり着けるので、薄着でキメた日に立ち寄るのにもちょうどいい。

 ユニークなカクテルが評判で、音楽と人々で店は少し騒がしい。飲み物のメニューは見るのが面倒で、こんな感じの飲み物をとお願いすると、El Vatoというのが出てきた。それと同時に、ウォレンから電話が。待ち合わせ時間ジャストの電話は、不吉な香り。案の定、車が路肩で動かなくなったらしい。「プレ・バミューダトライアングルだ」という彼。「じゃ、次は5次元で繋がりましょ」と適当なことを言って電話を切った。そうとなれば、カクテルではなく、しっかり食事を楽しんで帰りましょ。早速、カウンタのーの向こうで代わる代わるやってくるバーテンダー兼ウェイターに意見を聞きながら、次のものをオーダー。

ー 本日の魚を使ったセビチェ$20
ー スパイシーカリフラワーのココナッツシチュー$10
ー ペルーのサンドイッチButifarra$10

 街にはいろんなレベルのセビチェがある。店の人に勧められて頼んだら、ガッカリなんて経験は何度もあるから、ピンキリな食べ物だと認識している。ペルーでは、日本のコンビニぐらいの密度で、セビチェを売る店があるらしい。ここでも勧められて、リスクあるかも〜と迷ったが、お寿司屋さんにあるような魚用のショーケースがカウンターに設えてあるNikkeiぶりと、そこにJapan Food Supporterというステッカーが貼られているのを見て、ピンである方に賭けることにした。

 本日の魚Cobiaの薄造りと、茹でたジャイアントコーン、canchaという揚げたタイプの見たことのない形のコーンが、ライム果汁をベースにしたマリネ液leche de tigre(タイガーのミルク)に浸かって出てきた。結果はピン! 魚の鮮度が良いせいか、臭みは微塵もない。作りたてを出してくれるので、ライム果汁の酸で魚が焼けすぎていない、洗練されたセビチェ。さらに、初めて見る大きさの茹でたコーン粒のふっくら感と、さっくり仕上げの細長いコーン粒との意外な組み合わせが新鮮だ。Cobiaという魚は、日本ではスギと呼ばれる魚。アルコールのお供のタパスという感覚なのか、味付けは相当濃い。

 2番目に出てきたのは、スパイシーカリフラワー。少し甘いココナッツミルクのシチューと、ぺルビアンチリとも言われるAji Amarillo(アヒ・アマリージョ)が、ソースがわりに器の底に敷いてある。柔らかく料理されたカリフラワーを崩しながらシチューソースと絡めて食べると美味しい!クリーミーな甘さと、香り高いチリペッパーが、脇役になりがちなカリフラワーを主役に押し上げてくれている。

 以上の2皿だけでも満足だったけれど、carne(肉)のページから何かひとつ試しておこうと頼んだButifarra(ブティハラ)は、ペルーではよく知られたサンドイッチのこと。ここでは、炭火焼きのカモ肉が、ペルー特有の赤タマネギの薬味と一緒に、蒸しパンのような真っ白いふわふわパンには挟まれて出てくる。グリルしたばかりのカモの香ばしさと薬味の甘さが良い。味が口の中で弾けてからまとまる感覚がある。いろんな方向の味と食感が一緒に詰まっているからなのか。もう一個食べたいと思った。

 この赤タマネギの薬味というのは、Criolla(クリオージャ)と呼ばれ、ペルーではいろんな料理に添えられる。カタルーニャ語で「地元の」という意味のCriollaは、ペルーやアルゼンチンなど南米の国では広く使われているソースまたは薬味で、その地域ごとに特色がある。キーとなるのは、やはりライム果汁で、一緒に使うタマネギを甘くし、他の料理を引き立たせると言われる。ペルーでは、CriollaにはAji Amarillo(アヒ・アマリージョ)が欠かせない。そこで思い出したのが、ペルーで料理の勉強をしたというシェフの話。

 つい先月、南米のとある町で1人でふらっと入った店のオーナーシェフと話をする機会があった。彼は、リマにあるル・コルドン・ブルを卒業し、パリのレストランで修行を続け自国に帰って店を持ったという人だ。なんでペルーなの?という質問に答える形で、ペルー料理というのは、南米では他の南米諸国とは一線を画すキュイジーヌの世界があるのだと言う。さらに、チリペッパーにしても、奥深い世界があると続ける。私は、チリペッパー=辛い という1次元でしか捉えてないが、チリを種類によって使い分ける人々にとっては、奥行きのある世界のようだ。2皿目のスパイシーカリフラワーでも使われている、Aji Amarillo=イエローチリペッパーはわずかにフルーツに振れたフレイバーを含み、グリーンペッパー、レッドペッパーとはまた違う’何か’があるらしい。複雑系のようだ。ペルー料理はAji Amarilloなくして成り立たないのだとか。そういえば、Aji Amarilloとニンニクと赤タマネギとは三位一体なのだという話もしていたが、今日Tiraditoでその端っこをちょろっと味わったような気がする。

子供の頃に絵本で見た「ごちそう」と「ぶどう酒」のクリスマスに飽きていたら、今年はペルー+Nikkeiテイストでスパイスアップしたホリデーシーズンを!

Tiradito(ペルー料理)
1076 Rue de Bleury
Place-d'Armes

取材・文:稲吉京子
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