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混み合うランチ時間帯を避け、2時過ぎに店に入る。入り口正面に構えるオープンキッチンとそれを丸く囲むようにしつらえた賑やかなカウンター席を通り越すと、テーブル席が整然と並ぶセンターエリアが広がり、その脇には、ひとりで座って外を眺められる独立したコーヒーカウンター、店の奥の壁沿いには、まったりと過ごせるソファー席が続く。かなり広い店内の3、4割は、お客さんで埋まっていた。仕事の同僚たちと連れ立って、小さな子供を二人連れた家族連れ、ビジネスランチ風なちょっとかしこまったグループ、華やかな女子会などの客層が確認できる。 グループ客から離れた静かなテーブル席を選んで、時間をかけてメニューを眺めてみた。そういう余裕を与えてくれる店だ。オーダーしたのは4品。 ○サーモンのグラブラックス$12.75 グラブラックス(Gravlax)とは、ディルを使ったスカンジナビア特有のサーモンのマリネ。黄色いビーツとセロリをレモンマヨネーズで合わせて、自家製のサワードウのパンと一緒に食べる爽やかな半生サーモンの一皿。グラブラックスは自宅でも比較的気軽にできるマリネなので、食べ慣れていたはずが、一緒に合わせるものでこんなに面白いものになるのかという発見があった。軽く焼かれ香ばしさが立つパンを下敷きに、青臭いセロリと大地くさいビーツを作りたてのマヨネーズが抱擁し、サーモンのリッチさを際立たせている。 ○スペルト小麦、ドライイチジク、ナスのグリルのサラダ $11 私の好きな食材が並んだ名前に惹かれて頼んだサラダだったが、運ばれて来たのはサラダというより、スペルトをひたすら楽しむ主食になりうる品だった。炒りナッツのカリカリ感、しっとりした黒イチジクの甘み、とろけるナス、そして歯ごたえがたまらないつぶつぶスペルトが、トマト果肉を使った甘酸っぱいドレッシングで和えてある。 ○そば粉と季節の果物の焼き菓子と、自家製アイスクリーム$7、コーヒー$3 全く角がないレモンアイスクリームは、また食べたいと思わす嫌味のなさ。焼き菓子の方は、そば粉というだけに、もったりした食感を想像していたが、軽いふわっとした口当たりで甘さも完璧だった。デザートにも本気を感じる。 この世には迷うメニューと迷わないメニューがあるが、Mélisseのは迷うメニュー。可能性が広がるメニュー構成だからだ。小皿同士を組み合わせるのか、単品でしっかり量のあるものを頼むのか、少量だけれどリッチなものを頼むのか、ある種のダイエット法に基づいて選ぶのか、誰と食べるのか、どの時間帯に食べるのか、などいろんなニーズに応えられる可能性を感じた。 今回は、古代穀類がメインのどっしりサラダと、脂質豊富なグラブラックスという組み合わせにしたが、メニューを読み込んでいると、いろんな組み合わせが頭をよぎった。一皿で完結するランチメニュー(Les Plats du Jour)$17〜$18を頼むのもいい。遊び心をくすぐるサイドメニュー(LES Á-CÔTÉS)から、いくつかピックアップするのも次回の作戦候補だ。例えば。日替わりのスープ(小:$5、大:$7)、鴨のコンフィと自家製ハリッサ:チュニジアの唐辛子のペースト($8)、ケフタ:子牛の串焼きにホムスと焼きリンゴ添え($5)などを頼み、いろんなものをちょっとづつという企み。 それ以外には… 黒毛牛をチミチュリ:アルゼンチン発祥のパセリベースのソースで($9) 炭火焼きチキンにコリアンダーとゴマソース($4.5) アルゼンチンの天然シュリンプを焼きパイナップルと合わせて($6.5) ピクルスと自家製モルタデッラ:イタリア・ボローニャ伝統のハム($4.5) など素材が良くないと成り立たないサイドメニューが並ぶ。素材にこだわり、地元ケベックの厳選された生産者と連携をとるシェフの姿勢も見えてくる。 12月は大切な人々との絆を再確認する場面が増える。さらに、自分の背中をポンポンと叩いて褒めてやるような季節でもある。そんなシーンには白い雪とMélisseが似合うかもしれない。 Mélisse(カフェレストラン) 719 rue William
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取材・文:稲吉京子 | ||||||||||||||||||||
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