「モントリオールを車で通過するから、ブランチしながらキャッチアップしよう」とダニエルがいう。Magogにある自宅で休暇を過ごした彼は、今日明日と二日かけて車を運転し、職場があるジェームス・ベイまで戻る。アメリカ先住民のクリー族のコミュニティで医者として働く彼は、3ヶ月毎に1ヶ月間の休暇を取るというサイクルで生活している。仕事場の村では川魚を釣り、厳しい冬でも自作の発電システムを装備した小さな温室で野菜やハーブを育てる。自宅の地下では硫酸塩などの保存料が入らないワインをこっそり作っているのを見たことがある。歯磨きペーストやデオドラントから、自宅のログハウスまで自作する、いわゆるサステイナブル(sustainable)な生活を地で行く人だ。北アメリカの牛肉や豚肉は汚染されすぎているから、オーガニックチキン以外はなるべく口にしたくないと言う。クリー族の村に持ち帰る水のフィルタリングシステムやソーラーパネルなどを満載した大きな四駆車を駐車しやすい場所で、ハイウェイの乗り口からそう遠くないベジタリアンレストランにしようと言う。やれやれ。

夜はその賑やかさでつい足を止めたくなる魅力がある。
季節のオムレツ(時価)卵を食べるベジタリアン向け。卵、乳製品を摂らないビーガン用のメニューや、グルテンフリーのメニューもあり。
緑づくしのグリルドチーズ($11)外はアツアツ、中はトロトロながらアボカドのフレッシュさが口の中で広がる。山羊のチーズやペストが挟まれていて結構リッチ。
バー機能はかなり充実している様子。夜はカウンター席もいっぱいになるという。
これが結構人気があるというプティン入りグリルドチーズ。
人気のブラッディ・マリーと「おつまみ」のセット。「おつまみ」($3)はいくつも頼みたくなりそう。
 L’Gros Luxe 100% Végéは、Parc la fontaineSherbrooke駅からほど近い住宅街にある。季節を問わず夜ここを通りすぎると、絶え間ない歓談や食器が立てる音が店から漏れ出て、どうにも立ち寄りたくなるオーラを放っている。週中の夜は賑やかで、土日はブランチを楽しむゆるいベジタリアン達で溢れる。さて、私たちはわけなく駐車スペースを路上に見つけて、土曜日の13時過ぎに店内に入ると、大きなテーブルはグループ客で埋まり、カウンター席と1〜2人用の小さなテーブルがわずか空いているだけだった。湿気で冷え込んだ外と一転して、客層や店内の雰囲気は華やかでいて優しい。古いものを使った折衷デコレーションや大胆な配色はモントリオールならではのスタイル。サーバーも無駄がなくさっぱりしていてフランク。メニューはベジタリアンの真髄を行くというよりは、菜食主義ビギナーや何となくベジタリアンというスタンスの人々に応える構成だ。つまり、ベジタリアンではない人でも楽しめる緩めのメニューになっている。

 まずは、ワッフルと’チキン’フライ(シイタケをチキンにみたてたフライ$15)を頼もうとしたら、ワッフルがすでに売り切れだというので、以下のオーダーに落ち着いた。これで物足りなかったら、後で豆腐のブリトー($9)を頼むつもりでいたが、それは全く必要なかった。

季節のオムレツ 時価
緑づくしのグリルドチーズ $11
オレンジジュース $3
ダブルエスプレッソ $3

 その日のオムレツの中身は、マッシュルーム、チェリートマト、ズッキーニ、ホウレン草、スプラウト。それに、トーストとポテトフライ、フルーツが付いて来た。野菜の量もいいし、味はしっかりして結構なボリューム。山羊のチーズを使った緑づくしのグリルドチーズは、アボカドとペストの鮮やかなグリーンが切り口から覗き、綺麗なきつね色にグリルされたアツアツの状態でサーブされる。アボカドの新鮮さを残しつつ、口の中でとろりするのがいい。いずれのプレートにも、ポテトのフライが付いてきた。サラダを選択することもできたのに、うっかりしていたのを少し後悔。ジュースは絞りたてでもハウスメイドでもなく、スーパーで見かける紙パックに入ったジュースをグラスに注いだだけだった。リッチなブランチの後のエスプレッソは悪くい。ブランチのすべてのメニューは、ベジタリアンソーセージやベジタリアンベーコン、野菜、フルーツなどを好きなように足して自分流に変化をつけることも可能。グルテンを含まないパンへの変更なども気軽に応じてくれる。

 通常メニューと土日のブランチメニューはだいぶ異なる。平日の夜に出される通常メニューの定番は、黒豆や穀類でできたパテを使ったベジタリアンバーガー($9)、プティンが挟み込まれたグリルドチーズ($9)など。面白いところでは、シイタケをチキンに見立てた’チキン’バーガー($12)。個人的には、ほうれん草とアーティチョークのディップ・ピタパン付き($11)、野生のキノコのブルスケッタ($9〜$12)、ナン付きのバター’チキン’カレー($12)あたりを、開放感が増してくる木曜の夜に知人とつまみ合いたい気分。実は、夜のバータイムがL’Gros Luxeの強みでもみある。人に聞いたところによると「テンションが上がる」というクリエイティブなカクテル類が充実していると言う。特に、そのユニークなプレゼンテーションが話題のブラッディ・マリーのセットが人気らしい。いくつかの選択肢からベースとなるウォッカと、それを割るトマトジュースの種類を選び、自分好みに仕上がったブラッディ・マリーには、一口サイズの串刺しになった「おつまみ」($3)を付けられる。この「おつまみ」には定番のベジバーガーやサンドイッチから、オニオンリング、野菜サモサ、ケサディーヤ、ミニベーグルのクリームチーズサンドなどがあり、サーブされる姿も可愛くてちょっと嬉しくなる。「おつまみ」を2つ、3つと追加する人も多いとか。

 寒さと雪で閉塞感が増すこの時期は、人と落ち合って食べたり飲んだりするだけで心身が温まったりする。草食系の集まりで暖をとるなら、こんなところで今年1年を振り返るのも良さそうだ。

L’Gros Luxe 100% Végé(ベジタリアン)
3807 St-Andre
(514) 447-2227
Sherbrooke

取材・文:稲吉京子
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