お店外観。
ポークのスネ肉の燻製、焼きナス、バッファローのヨーグルトやハーブ類を和えたサンドイッチ。主張がある。$9
トラウトの燻製を、レモンコンフィ、コリアンダーと紫玉ねぎのソースで和えたサンドイッチ。バランスの良い味。
今日のスープ$2.50。アーティチョークのスープをアニスとレモンの香りで。いい加減なスープではないので、しっかりと受け止める準備を。
ここで作られた商品は全て購入できる。同オーナー経営のワインバーに運ばれる。知識があれば、ワインと合わせてちょこっと買いたいところ。
オマケ。(外につないだ犬も観察できるテーブルの配置)
 狂犬病のワクチン接種のため、獣医に犬を連れて行く。いつもと様子が違うことに大興奮の犬を、取り押さえるだけでかなりぐったりして、どこかに入ってゆっくり座りたかった。しかも、安全に外に犬をつないでおけて、店の中から様子が見られる、できれば気の利いたものが食べられるところ。ありました。Sherbrooke駅から南東に歩いた、Ontario通りとAmherst通りの交差点にあるLa Réserve du Comptoir

 店の名前にもあるように、保存食に力を入れているらしく、外から野菜のマリネ瓶が並ぶのが見える。Sandwichの文字が見えたので、新しいタイプのサンドイッチ屋さんにも見えるけれど、店のストイックでミニマルな感じ、どうもマニアックな匂いがする。犬をつないで中に入ったら、いわゆるcharcuterie artisanal、自家製のソーセージやサラミ、ハム、燻製作りに特化したアトリエ的アンテナショップだった。それもそのはず、St-Laurent通りのワインバーLe Comptoir charcuteries et vinsのオーナーシェフが、店の料理に使う加工肉を仕込み熟成させるために作った製造所の一部を、1年ほど前にサンドイッチショップにしたのがこの店だ。このワインバーは過去、数々の新聞で取り上げられ高い評価を得ている。自然派ワイン愛好家や保存肉ファンにも定評がある。

 事情がつかめたので、早速注文しようと店の親切な男の子に相談。けれど、冷製肉の世界に暗い私がピンときようもなく、黒板に比較的大きな字で書かれているものを頼んでみた。

いろんな部位や加工肉が完璧な環境で乾燥・熟成の過程にある。お客さんがいない時は、これは何かどこの部分か聞くと、面白い事が聞ける。
その日のサンドイッチのメニューはボードに手書きで表示される。好みの加工肉がある人は、こちらからこんなのはできないか、相談するといいかも。
店はきっちりすっきりして潔いスタイル。注文をして、座ってしばらく待つと奥からできたてが運ばれてくる。
Jarret de porc fumée(豚のスネ肉の燻製、グリルしたナス、バッファローのヨーグルト、バジル、ミント、玉ねぎのマリネ、ボストンレタス)のサンドイッチ$9
Truite fumée (トラウトの燻製、レモンコンフィのマヨネーズ、レタス、コリアンダー、紫玉ねぎドレッシング) のサンドイッチ$9
・今日のスープ(アーティチョークとアニスとレモンのスープ)$2.50

 スープは材料の合わせ方が気に入った。ただのサンドイッチ屋さんにはないシェフのセンスが感じられる。量は少ないが、かなりしっかりした重量感。冬の午後は、コーヒーの代わりに、ここの日替わりスープを買いに立ち寄るのはありだなぁ、と思う。サンドイッチは、小さい。メニューの黒板を見直して、運ばれてきたサンドイッチを見て、やはり小さい。けれど、食べてみてわかる。ガラス張りになった乾燥・熟成室の設備などを見ているとわかってくる。同オーナーのワインバーで出す、ここで作られた加工肉を使ったメニューを見ると、$14〜22はする。それもスモールポーションで有名な店だ。例えば、その一皿をさっくりと和えてまとめ、デリケートなパンで挟んだものが、La Réserve du Comptoirで食べられると考えると$8〜$9のこの一皿は悪くないと思う。小粒でも存在感がある。クリエイティブで、パンチのある新しい味がする。ソースに頼らない、肉の持つ味の良さが楽しめる。

 100gから切り売りしてくれるという商品のショーケースで、どんなものが買えるのか聞いてみた。パンチェッタ(2週間の乾燥熟成)、ヴォントレシュ(タイム、ローリエで押さえ込んで10週間熟成)、フェンネルのソーセージ(5週間乾燥熟成)、血のソーセージ、まだまだ説明は続く。自然に飼育された豚だけを使い、混ぜ物なしの上質な豚肉100%で作っているそうだ。あいにく私はこっちの道には疎いのだけれど、手製の上質なソーセージやハム、燻製肉とワインさえあれば生きていけるという人たちにとっては、ここは天国なんじゃないかと思えてくる。保存肉の種類、特徴を理解していて、少しの料理の心得とわずかなイマジネーションさえあれば、もうワインバーに行く必要すらなくなる。

 もう少し話を聞いて世界を知りたいところだけれど、外で待たせている犬が吠えている。クリスマスディナーの前菜にするものを探しに、また戻ってこよう。

La Réserve du Comptoir(サンドイッチ)
2000, rue Amherst
(514) 521-8467
Sherbrooke

取材・文:稲吉京子
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