レンズ豆と栗とフォアグラのクリームスープ:フレッシュなフォアグラの塊が舌の上で溶ける濃厚なスープ。
マスと海藻の前菜:自家製の青じそドレッシングとサワークリームが新鮮なコンビネーション。
ちらし寿司:10種類の魚介で彩りも味も華やかなちらし。ごまソースや甘辛いソースがすでにかかっている。
リブステーキ・パリジャンスタイル:典型的なビストロメニュー。
抹茶のクレーム・ブリュレ:マックスおすすめのデザート。控えめに薫る抹茶がよい。日本人には少し甘め。
いつも暖かく、居心地が良い。
寿司バーのカウンター:クリエイティブなサトシシェフにリクエストして、オリジナル寿司を作ってもらえるかも。
11時から閉店の23時まで通しで営業。
 街はすっかりクリスマス一色。いつも通り過ぎるだけの店に、なんとなく入ってしまったり、普段飲まない甘〜いココアを注文していたりする。なぜか食事の誘いが増え、国籍問わずみんなが12月の雰囲気に盛り上がっているようだ。今回は、そんな華やかで軽快な気分に合うレストランを紹介したい。

 St-Denis通りとDuluth通りが交わる辺りにあるSa-Franは、Sushiバーを備えるフレンチ・ビストロ。アプローチしやすい雰囲気で、友達同士でもデートでも家族の集まりでも使える。料理もフレンチメニューと和メニューがあり、どちらからも好きなように組み合わせられるようになっている。サーバー、マックスはソフトで感じがよく、店全体の雰囲気がリラックスしている。レストランの斜め向かいのthéâtre d’aujourd’huiの客、フランスからの旅行者、日本食が恋しい日本人など、客層はいろいろのようだ。食べたいお目当てが決まっていれば、ふらっと寄ってアラカルト、という楽しみ方もあるが、ここでの本命は夜のセットメニュー(tables d’hôte$38)だと思われる。メニューを見てもらうとわかるが、和とフレンチどちらかに統一もできるし、両方からピックアップすることもできる。アラカルトにある価格に関係なく、好きな前菜、主菜が選べるのも嬉しい。

●今日のスープ
●フレンチメニューか和メニューから好きな前菜1種
●寿司12貫 もしくは オールスター巻き寿司 もしくはフレンチメインメニューから1種
●お茶 もしくは コーヒー もしくは ハーブティ
●デザートメニューから1種(+$5)

ランチメニューは$8〜$19と幅広く、本格的なビストロメニューや鮮魚を使った寿司メニューが気軽に試せるのも、口コミ旅行者や地元ファンを確実に増やしている理由のひとつかもしれない。さらに、ここの魅力のひとつは、選びやすいメニューだということ。長々と続く斬新な素材の組み合わせに、あれこれ味の創造をしてみるタイプの食事ではなく、衝動のまま最初から胸ぐらを掴んで引き寄せるようなストレートな食事だ。つまり、「発芽蕎麦の実とからすみのターメリックソースの和えをベットに敷く鱈のポワレ、カブのライムと蜂蜜マリネの薄造り添えをマルコ風で」ではなく、「鴨胸肉のローストをイチジクと赤ワインソースで」というビストロらしい真っすぐさがある。

昼も夜も、ちょうどメニューが変わったばかりだという。今回頼んだ物は以これ。

●レンズ豆、栗、フォアグラのクリームスープ(仏メニュー) $9
●マスと海藻の前菜(和メニュー) $9
●ちらし寿司(和メニュー) $15
●パリジャンスタイルのリブステーキ、フレンチフライとサラダ付き(仏メニュー) $19
●抹茶のクレーム・ブリュレ $8
●エスプレッソ・アロンジェ

「レンズ豆、栗、フォアグラのクリームスープ」はフレンチらしいしっかりしたスープで、心から満足する前菜。 「マスと海藻の前菜」は、塩と米酢に軽く漬けたトラウトと海藻に、サワークリームと青じそペーストが添えられる。日本のシソで作られるオリジナルペーストには感心。 「ちらし寿司」は10種類もの魚介で見た目が美しく、味付けも面白い。具とご飯をわさび醤油で融合させるあれではなく、ごまだれや、甘辛いたれ、ゆず香のする自家製の漬け物などで華やかな味に仕上がっている。ご飯もほんのり温かく、この季節でも食が進む面白い主菜のひとつ。前菜も寿司も含め、和食の伝統的な味付けをそのまま持ち込むのではなく、カナダ人にも受け入れられやすいように、創意工夫を重ねて来たとサトシ・シェフは言う。一方、フランソワ・シェフから、典型的なフランスのビストロ料理だと薦められた「パリジャンスタイルのリブステーキ、フレンチフライとサラダ付き」は、肉料理をがっつり食べたい人には人気のメニューに違いない。ミディアムレアの焼き加減はよく、マスタードシードを使ったソースがユニークで食欲を煽る。このソースは10種類程の材料で作られていて、マスタードとディル、ニンニクは見えたが、パルメザンチーズ、タイム、ローズマリーなどの他の材料は舌で感知できない程バランスよく調和していた。デザートの「抹茶のクレーム・ブリュレ」は、抹茶が全面に出ず、ほんのりと香を残す優しい味。表面の焦がし砂糖の面積が広く、クリームの部分が浅いので、最後まで甘くサクサクした感触が味わえる。コーヒーを出すタイミングも良かった。他には、梨のタルト、ライムとシソの冷たいテリーヌなどのデザートが気になるところ。

メニューは店のウェブサイトで見られるが、参考までに気になったメニューの一部を以下に紹介。

●鴨の砂肝のコンフィ、ビーツとヘーゼルナッツのサラダ(仏メニュー) $10
●温かいヤギのチーズを蜂蜜とローズマリーで(仏メニュー) $8
●牛のほほ肉を長時間煮込んだバーガンディスタイル(仏メニュー) $23
●マグロのタルタル、ロケット菜とウズラの卵(和メニュー) $14
●ココナッツとカレーで味付けしたご飯や、バジルご飯などを使った変化形巻き寿司(和メニュー) $9〜$14
●寿司バーで2貫ずつの握り(刺身、軍艦巻きも可) $4.50〜$6

 フレンチビストロのアラカルトを目当てに行くなら、「クラシック・ビストロメニュー」のセクションは、要チェック。グラスワインを頼んでみたが、グラスが小さい上、注がれる量が少ない。ワインはあえてSAQで買えるような物を置いているという。種類も広げず、最低限にとどめている。この夏に開店した新しいレストランであるため、今までは料理の方に重きを置いてきたが、今後はワインの方も充実させていくそうだ。

 フランソワ・シェフはフランス南部の出身。パリで学生時代を送り、そしてケベックにやってきた。「フランス料理と日本料理はいずれも長い歴史や文化背景があるので、全く違う食材や料理法を使いながらも、どこか共通するものがあるんですね」と、フレンチ・ビストロと寿司バーの組み合わせの発想について語ってくれた。一方、何においても、作り出すことに興味があるというサトシ・シェフは、ここの和メニューの面白さをこんな風に説明する。「食材でも合わせてみる、混ぜてみるという行為が元々好きです。それが料理という仕事の場では、最高の組み合わせや割合を見つけるということに生かされています」両シェフともに10年以上ケベック州で暮らし、土地の傾向や人々の好みをよく見知った料理人である。自国の伝統的な料理を掲げながらも、この地の人々に愛される味を創造してきた。そういう意味で、あらゆる人種を受け入れ、融合を許してきたケベックを体現するレストランとしてみて見ると、また違った楽しみ方ができそうだ。

Sa-FranSushiバー+フレンチ・ビストロ)(HP)
3979 St-Denis
(514) 439-9964
Sherbrooke
Mont-Royal
月・火:休業
水・木:11:0022:00
金・土:11:0023:00
日:11:0022:00

取材・文:稲吉京子
過去のレストラン
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