ペルーの国民的飲み物チチャ・モラーダ。アントシアニンいっぱいの紫トウモロコシのジュース。できあがりまで数時間かかる昔からのやり方で作られる濃いジュースは、意外にさりげない味で美味。インカ帝国の時代には、もう飲まれていたという記録も。
メロと魚介のフライとクリーミーソース$24.99。ボリュームもあるし、味も世界中の人に愛される少し濃いめのリッチな味。ココナッツミルクのソースとライスの組み合わせが食事の最後としっかりと締めてくれる。
メロのセビチェ$19.99〜。 とにかく新鮮で、丁寧に作られているのがわかる味。室温で出すというのもオーセンティックなセビチェの要素で、それを叶えるために作るタイミングや魚の仕入れ・管理がされる。脇役のユッカやスイートポテトが素朴な味わい。
各料理は量があるので、複数の料理を、3〜5人で取り分けて食べるとちょうどいいかもしれない。
大家族の集まりと、何組かのお客さんからはスペイン語しか聞こえてこなかった。
すっきり清潔な店内。
 会えば美味しいものの話か、犬の話ばかりになる知り合いがいる。

 今どんな料理に注目しているかと聞いてみると、彼女はペルー料理をそのひとつにあげた。ペルー料理と言えば、今や世界の美食家や料理人たちが注目している旬のジャンルだ。日系ペルー料理へ寄せられるヨーロッパからの熱視線については、去年紹介したTiradito(2018年12月)の記事でも少し触れた。ペルー大使の通訳もする彼女ならではのコメントで面白いなと思ったのは、「国を代表する立場の人々は、ペルーを先進国と違わぬモダンな国と見せたいから、郷土料理という切り口は一切見せない」という部分だ。

 ここはモントリオール。まさにモダンな国をアピールする人々が語らない食べ物を味わえる店がある。先進の洗練されたペルヴィアン・キュイジーヌのルートとなる料理だ。

 リトル・イタリーにあるResto Chichoは、気をつけていないと通り過ぎてしまうレストランだ。オーラは出ていない地味なレストランだが、ここのキーワードは「オーセンティック」。優しく誠実などこか懐かしさのあるペルー人男性が、モントリオールにあるペルー料理を出すレストランを4軒を試したが、まったく比べ物にならない、Chichoは「オーセンティック」だと形容した。

 まさにその通りだと私が感じたのは、インカ帝国の時代から飲まれているというスーパードリンク、チチャ・モラーダ(Chicha morada ピッチャー$8、ハーフピッチャー$5、グラス$2.75)。

 昔からの作り方に従うと、出来上がるのに何時間もかかるという。紫のトウモロコシを、パイナップルの皮とかりんの実の欠片と一緒に茹でて、シナモンやクローブを加えて、長いこと煮だしたあとに、濾してからケーンシュガーを加えてフルーツなどを一緒につけ込み、冷蔵庫で寝かせる。茹でる代わりに、紫コーンを蒸す方法もあるらしくこちらの方はもっと時間がかかる。このレストランでも、伝統的な作り方で作られたチチャ・モラーダが飲める。現地ペルーでも、このやり方で作られるチチャ・モラーダは少ない。色は濃い紫色で、味は色とは裏腹に繊細でさりげなくフルーティー、何より滋味を感じさせる。この飲み物はどこでも飲めるものではない。

ペルーの典型的な料理を食べたいならまずはセビチェ。
Ceviche de Pescado $19.99〜

 勧めてくれたペルー人男性にさらに聞いてみる。セビチェはどこでも食べられるし、メキシコでも南米の国々でも地元料理などとして紹介されるけど、ペルーのセビチェをそこまで誇る理由はなに?

 「ペルーのセビチェは、海鮮物ならなんでもいいわけではなく、魚は新鮮な白身魚、特にメロでないといけない。巷のイカやタコ、マグロなどを使ったセビチェとは違うんです」と言う。

  なるほど。冷凍のミックスシーフードの袋からダーッと作ったんじゃないかと思わすあの臭さとゴムのような質感が苦手で、私はセビチェと聞けばだいたい避けるメニューのひとつだった。あのセビチェとは違うと聞いたらもちろん試したい。ライム果汁でマリネされたメロという魚を頼む。他にもいろんなセビチェがあるが、まずは本当のセビチェを知ってもらうために、これを頼んでほしいと勧められた。

 出てきたものは、今まで見たセビチェとはかなり違う。たっぷりのライム果汁の酸で表面が軽く料理された生魚の薄切りと、紫玉ねぎのスライス、カンチャとよばれる炒ったトウモロコシ、ユッカとヤムポテトの蒸しものが大きなお皿に盛られて出てきた。生に極めて近いメロを食べるのは初めて。ほのかな桃色で、見た目にも食欲が高まる。臭みは皆無、味はすっきり清潔でまさにオーセンティック。今まで食べてきたセビチェは何だったんだろうと思ってしまう。まず、セビチェから食べてほしい。他の料理の味がしっかりしているので、このフレッシュな味は前菜向き。

もうひとつペルーのオーセンティックな料理としてすすめられたのが
Mero a lo Macho$24.99

 メロと他の魚介類のフライが黄色のクリーミーなソースに浸っている。ココナッツカレーを思わせるソースと魚のフライとライス、美味しくないはずがない。ボリュームがあるので、メインとして人とシェアで頼むのがよさそうだ。セビチェとはまったく違う世界の美味しさ。しっかりした味の満足感のある一皿。

 各料理は少し高めだが、新鮮で質の良い魚介類を使っているし、量もあるので、グループでシェアしながらのディナーから試してみるといいかもしれない。

Resto Chicho(ペルー料理)
6580 St Laurent Blvd
Beaubien

取材・文:稲吉京子
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