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ラテンダンスのクラスで知り合ったおかまちゃんに、イタリアンピザの店に誘われた。彼はオフィス街の新しいレストランやバーに精通していて、あの店はダメ!or オッケー!か大まかな判断をしたいときに頼りになる。ランチ時間帯はとにかく人で溢れてて、昼間の食事は予約なしではほぼ無理だと唇を尖らす。モントリオールの標準的なピザを知っているだけに、ピザをわざわざレストランに食べに行くと言う気がしない。う〜んと渋っていると、「そこのピザはまきで焼いてるのよ」と懐柔してくる。
FiorellinoはオレンジラインのSquare Victoriaの駅から、2分ほど歩いたDe La Gauchetiere通りにある。店内は広くカジュアルな造りで、働くスタッフたちは皆若い。レセプションでは、当然予約はあるだろうという雰囲気で名前を聞かれたので、予約はしていないことを告げると、そんなに混んでいない水曜の夜だったが、店の中央のあまり居心地の良くない小さいテーブルに案内された。窓際の席や奥まった雰囲気のいいテーブルを確保したければ、夜も予約はしていった方が良さそう。私たちの隣のソファー席には、イタリア人らしい数人の男性たちが母国語で大いに盛り上がっていた。
バッファローのチーズを使っているというマルゲリータが運ばれてきた。1回ですっと切れる生地は薄くしっとりしていて、ナポリピッツァの特徴のひとつでもあるソースの付いてないコルニチョーネ(生地の外縁)にも味わいがある。コルニチョーネをそのまま食べて美味しいかどうかが合格の私的基準だとおかまちゃんに言うと、彼も同感だと言う。トマトソースもチーズも生地とよく一体化して自然で悪くない。トスカーナのテーブルワインとも合っていた。おかまちゃんのアンチョビのピザを一口もらったが、思ったよりいける。チーズなしでもこれだけ満足感を与えられるのは、やはり生地や焼きの環境がいいからかもしれない。 もちろん、うーんと唸らせる本場のナポリピッツァとは違うが、ケベック州内で食べてきたピザの中では、Fiorellinoのピザが最もナポリピッツァに近い印象だ。朝7時から夜11時までやっているし、思い立ったらメトロや仕事場からすぐに行ける立地は魅力だ。店のカジュアルな内装や簡素化されたサービスもむしろ心地良い。ピザしか頼まない客とわかると、一転して無表情になるサーバーや、偶然なのか皆ブロンドでピチピチのお揃いのTシャツを着ている女の子たちを見ても、店のあり方に一貫性を感じる。店と客という関係に中途半端な感情が絡まず、気遣いが生まれることもなく、これはこれで後腐れがなくて良い。使いやすい店の位置に収まりそうだ。 早速、今夜食べたマルゲリータの写真をナポリ出身の友人に送った。返信のメッセージには「モントリオールのピザ事情にも希望の光が差してきたようだね」とあった。 Fiorellino(イタリアンピストロ) 470, rue de la Gauchetière O. (514) 878-3666
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取材・文:稲吉京子 | ||||||||||||||||||
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