ピスタチオとキュウリのスープ。浄化モードなら前菜だけを夕食にする手も。
毎日売切れるズッキーニのラザニア、サラダ付き。カシュークリームが全ての素材をひとつにまとめる。
こんがりだけれど焼いていないクレープ。ほんのり暖かく、爽やかな風味が口いっぱいに広がる。
満足感保証のデザート。一番人気のチーズを使わないチーズケーキ(奥)。甘酸っぱいライムのタルト(手前)
独りでもふらっと立ち寄れる雰囲気の店内。
フレンドリーなサーバー達から料理に関する個人的な感想も聞ける。
ケールチップス、クラッカーなど豊富なローフードスナックも販売。おやつからローフードを試してみては?
 浄化作用があると注目のローフード。加熱によって壊れやすい酵素やビタミン、ミネラルなどの栄養素をそのまま摂取できる利点から、アレルギーや体質改善、美肌・ダイエット効果が望める食事法だという。一方で、まだまだ賛否両論あり、自己流でできるローフードにも限界がある。一筋縄ではいかない奥深い世界だけに、まずは本格的なローフードレストランで試してみたい。

 ダウンタウンとプラトーにあるCrudessenceでは、前菜からデザートまで、火を通していない完全ビーガン(乳製品を含む動物性食品を摂らない食事法)料理がいただける。全てにオーガニック素材を使った料理は、ローフードで一環しながら、サンドイッチやバーガー類から、タイ料理あり、メキシカンなプレートありで、定期的に変わる季節のメニューが、さらに選択肢を広げる。小食、お試しだけの方にも、豊富な前菜や飲みものメニューは頼りになる。ローフードといえば、ナッツ類を使った料理が多いという印象があるが、ナッツ不使用の料理、ナッツ抜きリクエストができる料理がわかりやすく表示され、サーバーに好みやリクエストを伝えれば、的確なアドバイスももらえる。キッズメニュー($5程度〜)、15時までオーダーできる週末ブランチメニュー($9〜)もあり、いろんなシチュエーションにも対応しそうだ。

 ここでは、コンセプト色が強いレストランだけに、自分好みの支流に入り込まずに、本流目線で注文してみた。

 今日のスープ(前菜):キュウリとピスタチオのスープ。淡いグリーンのさわやかなコクが特徴。

 Pesto lasagna($15)(メイン):ごく薄いズッキーニの層に、カシューナッツのリコッタ、トマト、ほうれん草と、ピスタチオのペストが絡まるラザニアに、シーザーサラダが合わさったプレート。ラザニアは小ぶりだが、見た目も味も濃厚な存在感があり、ほぼ毎日売り切れになるという。サラダについてくるクリームタイプのドレッシングは思わずパンが欲しくなる味。

 La balnéaise($18)(メイン/季節のメニュー):ほうれん草、トマト、アボカド、ヒマワリのスプラウト、キュウリ、ディル、ミントが挟まったほんのり暖かいクレープ。付け合わせに、発芽黒米のタブレ*。さわやかな香りが口いっぱいにひろがり、バジル+ヘンプシードのクリームがこっくりと後味をまとめてくれる。「これ、焼いてないのよね?」とスタッフに念を押してしまった香ばしいクレープ地は、ズッキーニとチアシード、フラックスシードを挽いたものを水で混ぜ合わせ練り、薄く伸ばし乾燥させてもの。オメガ3や必須アミノ酸を豊富に含む両者は、水とふれると粘りがでる特徴から、卵を使わないベジタリアン料理では、つなぎとしてよく使われる。熱に弱い必須脂肪酸だけに、フラックスシードを生のまま食するのは理にかなっている。生といっても、酵素を壊さない48℃以下の熱なら加えることもあるようだ。(*レバノン発祥といわれる中近東、北アフリカ、ヨーロッパで広く親しまれるサラダ)。

 blueberry un-cheesecake($6)(デザート):カシューとココナッツオイルとブルーベリーでできたクリームチーズが、ブラジルナッツとイチジクのクラストに乗った人気ケーキ。リッチ感、満足感で締めくくってくれるデザートの模範。乳製品のチーズケーキより、こっちの方が好みかも。「ダウンタウンにいるんだけど、何か甘いもの買っていこうか?」とランダムなオファーがあったら、頼みたい一品。

 Lime pie($6)(デザート):舌触りのよいアボカドムースと、ココナッツとマカデミアナッツでできた薄いさくさくクラストのコンビ。上記のチーズケーキほど濃厚ではなく、ライムとレモンの酸味がきいてさっぱりフレッシュ。前菜、メインで十分ナッツ類を摂った私は、頭ではこっちを支持。他にはブラウニー、チョコレートバナナパイ、デザートの盛り合わせなど10種類程のデザートがある。

 日本的要素が取り入れられたメニューもある。水菜、セリ、梅干しなどを使ったutsukushiiという名の「手巻き」や、前菜のsushiを注文する声も聞こえた。面白い脇役が、クルトンやスープについてくるクラッカー。アーモンドミルクを作る時にでる繊維質をメインに、フラックスシード、ズッキーニを混ぜディハイドレーターにかける。ピリ辛のクルトンには、味噌や醤油を思わす濃いめのうまみがあり、メニューで見たオーガニックのビールかワインを頼まなかったことを少々後悔した。なすのベーコンもいろんな使い方ができそうだ。スナック感覚でつまめるこれらは、入り口すぐのショップコーナーでチェックできる。

 コンセプトが全面に押し出された食事は、味のぼんやり感が否めないことがあるが、今回その印象を全く寄せ付けなかったのは、各料理が持つ味の深みやバリエーションだと思う。「食」への意識が高い人々をリピートさせる秘密は、ここにありそうだ。定番メニューも絶えず入れ替えがあり、ウェブサイトのメニューにあったピザやカネロニを当て込んでイタリア人を同伴していったのだが、残念ながらメニューからなくなっていた。が、がっかりする間もなく、目新しいメニューの鮮やかさに心奪われた。そういう意味では、ベジタリアンレストランについてまわる、いつ何を食べてもなんとなく同じ味、という落とし穴にははまらなそうだ。

 来店後にわかったことだか、Crudessenceには日本人ヘッドシェフがいる。幼少から皮膚炎を抱え、使い続けた薬への依存から、ホリスティックな方法で回復を目指し、様々な食事法の研究をしてきた古田真矢さんから、個人体験をもとにローフードについて聞いてみた。 「基本的には(ローフードは)解毒を促進する食事法と言えると思います 。…(略)…私個人としては、オーガニックまたは減農薬で、季節のもの、ローカルなものを、その時の体調に合わせてベストな調理法で摂るということを重要視しています。」ローフードを盲目的にベストな食事法とせず、体質やライフスタイルにあわせて取り入れる、というスタンスのようだ。

 現在、次の季節限定メニューの試作が繰り返されている。消化力が鈍る真冬を迎える前に、秋の新作でプチ解毒といきましょうか。

Crudessence(ローフード)(HP)
2157, Mackay St.
(514) 6645188
Guy-Concordia

105, Rachel St. West
(514) 510-9299
Mont-Royal

日〜水:11:0021:00
木〜土:11:0022:00

取材・文:稲吉京子
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