マルシェ・ジャンタロンからすぐの便利な場所にあるのに驚くほど静か。
テラスは全部木製で清潔、足を伸ばして座れる席もある。
何かいつもと違うものを求めているなら、カウンターまで来てオススメを聞いたりしながら、味見をさせてもらおう。
Béatrice(左)色からの印象とはまったく違う軽やかなビール。BOB(右)苦味が効いたビール好きが繰り返し頼むビール
DÉMAGOG 繊細な透明感のある可憐な味わい
IPPON コショウとショウガの風味と最後に弾ける甘い香りが気に入った
サーモンのグラブラックス(スカンジナビア地方の魚のマリネ)$11。ディルを混ぜ込んだ山羊のチーズ、ビーツとリンゴのサラダの盛り合わせ。意外な組み合わせでいろんな味のビールとも合う。
 万願寺唐辛子見つけたっ!と興奮気味の友達に誘われて、マルシェ・ジャンタロンに山盛りのそれを買いに行く。この時期のマルシェでしか手に入らない、いわゆるpiment douxという辛くない細長いピーマンだ。食べ物の話なら際限なく続くこの友人とは、万願寺唐辛子は炭火で焼いて、ちょっとお醤油を垂らして食べるといいとか、鰹節を振ってもいいとか、ナスのしぎ焼きのコツや揚げ出し豆腐の片栗粉の付け具合にまで話は渡り、こうなったら美味しいビールを飲まなきゃという結論に至る。

 地ビールとテラスが好きなこの友人と行くとなると、あの新しいbrew pubしかない。マルシェから2ブロック歩いたところにひっそりある、まだあまり知られていない穴場だ。

店内はかなり広く、まだ開店して9ヶ月のせいか、ゆったり座れて店内もテラスも気持ちがいい。
 brew pubとは、自分のところで醸造したビールを出すパブのこと。micro breweryと同じようにも見えるが、併設するパブで自家製ビールの25%以上をさばく前者に対し、後者は醸造所外で商品の75%以上を販売するという違いがあり、販売場所と販売量によって分類が変わってくる。 この10年でケベックの地ビールマーケットは急激に拡大した。小規模ブリューワリーやcoop式の醸造所が力をつけてきているのが、この1、2年の新開店するbrew pubmicro breweryの多さから感じられる。急増する自分ブランドのビールを出すパブの中でも、今回紹介するBirraは開店して間もないニューフェースだが、ケベックの地ビール事情に精通していて、かつ地ビール作りへの情熱やノウハウもある。

 bière maison(自家製ビール)という手書きの地味なサインに誘われて中に入ると、ハウスビール以外にケベック州内の他の地ビールもかなり揃えている。的を射た会話ができる素敵な女性サーバーは、ハウスビールから苦味が効いたオススメ1種類と、その他の地ビールから違った感じのものを1種類味見をさせてくれた。的確なビールの品揃えと、「分かり合える」サーバーとの短いやり取りで、この店の姿勢や経験の深さが伝わってくる。St-Laurent通りに作られた全ウッドデッキのテラスも清潔感溢れ、そこに座っている人々の感じが自然で良い。すると友人が、「分かり合える」女性サーバーがMasson通りにあるLa Succursale2014年2月紹介)にいたサーバーだと気づく。そういえば、ビールにもLa Succursaleのビールがあるではないか。聞いてみるとBirraLa Succursaleの姉妹店的存在だという。ビールのセレクションや店の姿勢が新参者っぽくない事に納得がいく。

Birraでしか飲めないハウスビールからは以下を注文(小グラス$4.50、 パイント$7)
●こっくりした苦味が特徴のBOB (American pale ale 6%)
●黒いビールだが、見た目とは裏腹に驚くほど軽やかでしなやかなBéatrice (black IPA 4%)

他の地ビールからは以下を注文(小グラス$4.75、 パイント$7.25)
●定番メニューにはないコショウとショウガの香りがすがすがしく可愛らしいIPPON (5.5%)
●綺麗なブロンドの見た目通りの繊細で透き通る可憐な味わいのDémagog (IPA 4.5%)
●夏の余韻を楽しめるキリッとした風味のShawi beach (IPA 7%)
●飽きがこないIPAの定番といった安定感のあるAngus (IPA 7%)

 それぞれのビールの違いがはっきり感じられるバリエーションがありがたく、小グラスでいくつも頼む方法が私にはしっくりくる。食べ物のメニューはごくシンプル。ビールを美味しく飲むための食べ物という大前提に変わりはないが、定番の形にとらわれない自分(店)らしさが込められたものばかり。こちらも色々ビールが試せるように、がっちりした2皿を頼んでみた。

●フムス、ムハンマラ、オリーブディップと小さなピタパンの盛り合わせ(ムハンマラ:シリア発祥のクルミやオリーブオイルから作る辛いペースト)$8.70
まず、見た目が好きだ。自家製のフムスとムハンマラはとてもバランスのとれたいい味で、これだけで3パイントはいけるほどの質と量。オリーブのディップは塩分がしっかり効いていて、おかわりを持ってきてもらうほどパンがすすんでしまった。シーンを選ばない手軽さで、早くも今後の定番になりそうな予感。

●サーモンのグラブラックス(スカンジナビア地方の魚のマリネ)$11
しっかりマリネされたグラブラックスというより、ほんのり気づかれない程度に燻したサーモンの薄切りと、ディルを混ぜ込んだ山羊のチーズ、ビーツとリンゴのサラダの盛り合わせだった。これをグラブラックスと呼んでいいのか?という疑問を呈する気にならないほど、ビールと一緒に楽しむ盛り合わせとしては悪くないと思う。バラエティや意外性、ボリュームという面から見ても楽しめる一皿。

3種類のペースト(フムス、ムハンマラ、オリーブディップ)$8.70を小さなピタパンにつけて楽しめる。味のバリエーションといいボリュームといい見た目の楽しさといい優秀なプレート
17時以降のメニューには、一捻りしたした面白そうなものが他にもあった。
●ビールを使った自家製のハムや、メープルシロップ漬けの玉ねぎを入れたグリルドチーズ
●キャベツとフェンネルのポテトサラダ
●ポークと子羊とミントの肉団子のカレーヨーグルトソースがけ
●軽くグリルした山羊のチーズのアプリコットジャム添え

 夏の終わり、まだまだ気持ち良くテラスでビールが飲めるこの時期に、穴場が穴場であるうちにどうぞ。

Birra(地ビールバー)
7129 Saint-Laurent
(514) 447-3154
De castelnau
Jean-Talon

取材・文:稲吉京子
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