コロンビア美人のジェニーが遅めのランチに招待してくれた。アヒアコというジャガイモのスープに、プラタナのフライやうっすら味のついたライスも一緒にいただいた。ところが、この馴染みやすい味のアヒアコは彼女の出身地域の食べ物ではなく、首都ボゴタ周辺で食べられる料理だそう。それじゃ、ジェニーの出身地メデジンの名物は何かと聞くと、「バンデハ・パイサ(Bandeja Paisa)っていう素晴らしい定食があるの!」と大きな目をさらにキラキラさせて言う。コロンビア西部のアンティオキア県に住む人々は「パイサ」と呼ばれ、彼らは自身がパイサであることを誇りに思っている。パイサの文化のことになると、大きな声がいっそう大きくなり、メデジンの地下鉄とロープウェイの体相の交通機関の素晴らしさを語り、市の拡張計画の話になると、CGを使ったシミュレーションまで見せて説明してくれる熱心さ。パイサ文化に興味がわいた。その名物料理「バンデハ・パイサ」が食べられるいいレストランがモントリオールにあるという。

これがパイサの看板料理「バンデハ・パイサ」。金時豆のシチューは別にでてくる。豚肉のフライ、チチャロンとライスとトウモロコシのパンと卵と牛肉の組み合わせで、コーヒー農園で1日中働けそうだ。
金時豆のシチューをこうしてライスにかけて、いろんなものと混ぜながら食べる。焼きたてのパンとこれで、$20程。
コロンビア女性はきれいな人が多いというが、隣に座っていた美人はこれを食べていた。ビーフの煮込みにプラタナ、ユッカの煮物。
焼きたてのパン、Almojabana。ブラジルのポン・デ・ケージョに似たもちもちさくさくのチーズの香りのするパン。これは絶品! エンパナーダ($2.50〜)もかなり評判がいい。
 St-Laurent通りからRachel通りを東に入って数軒のところに、「Cafeteria Las Palmas」はある。店内は、知らないのに知っている風な懐かしい食堂という雰囲気で、こういうレストランがプラトーの外れにまだ残っていることに少し感動する。写真つきで大きく壁に張り出されたメニューの中から選ぶ。何の肉かなどの説明はないので、勘で行くかカウンターの中のお母ちゃんらに説明を求めよう。基本的には、ライスにプラタナのフライやお肉、芋類、野菜の組み合わせが一緒のお皿に盛られるタイプのご飯だ。

 私は例の「バンデハ・パイサ」を注文する。パンデハとは「お盆」や「定食」という意味で、コーヒー農園や体力の消耗激しい肉体労働者向けに用意されたのが始まりらしい。コロンビアでは、ゲリラの人質になっていた国会議員が救出された後、まず何がしたいかという記者からの質問に、「バンデハ・パイサが食べたい」と答えたというぐらいの郷土料理だよ、と店にいたコロンビア人の客が教えてくれた。でも、相当ボリュームがあるので、普通のオフィスワーカーが毎日食べるような「定食」ではなく、現地のパイサの人々にとっても、たまーに食べたくなる料理だということだ。君、全部食べられるかなぁ、と私の二の腕あたりを指しながら屈託なく笑った。

 さて、バンデハ・パイサの内容は、ライス、プラタノ(バナナのフライ)、金時豆の煮込み、卵焼き、チチャロン(豚肉の厚切り脂肪層のフライ)、牛ひき肉の炒め物、アレパ(トウモロコシ粉の丸いパン)。通常はこれにアボカドがつくらしいが、ここでは出てこなかった。金時豆の煮込み(塩味)は別のスープ皿に入って出てくる。日本人にも馴染みやすい味で、卵焼きを少しずつ崩してご飯とこの煮込みとまぜまぜして食べるのがお気に入り。南米各国で使われるプラタノ(バナナのフライ)やアレパなどはメキシコ料理、ベネズエラ料理、エルサルバドル料理、カリブ料理などで食べてきているので抵抗はないが、すごいなと思ったのは豚肉のプライ。脂肪の多い部分をブロックベーコンのような厚さで切り出し、それがカリカリになるまで揚げてある。昔、豚肉の脂は油で炒めることで、余分な動物性脂質が落ちてむしろ悪くない、と日本のテレビ番組で言われていたのを思い出す。それがこのチチャロンにも当てはまるかはわからないけれど、たしかに、山間部を手積みしたコーヒー豆の入った籠を担いで上り下りする人々がこれを食べて頑張る姿が想像できる。個人的には、コロンビア人達が言うほど、重いとか食べきれないという感覚はなかったが、午後2時ぐらいにここで食べて、その後夜12時頃に寝るまで全く空腹感がなかったのは確かだ。

 この日、私にはボーナスがあった。店について注文をしてメニューを眺めながら座っていると、カウンターの中からスペイン語で何か聞かれた。ぽかんとしていると、別の客が焼きたてのパン食べる?って聞いてるんだよ、と教えてくれた。ちょうど、できたてがあがってきたらしく、店の人達はドーナツ状のパンをもらって食べていた。もちろん私もいただいて食べてみたら、これがたまらなく美味しい!ブラジルのポン・デ・ケージョに似ている。実はそれより数段美味しい。焼きたてということもあるが、炭水化物本来のほんのりした甘みとチーズの香り、もちもちサクサクした独特な食感で、するすると胃に収まる。このタイミングに当たったらラッキー。後で調べてみたら、Almojabanaというパンらしい。これだけを食べにわざわざ出かける価値あり!

 隣に座っていた素敵なコロンビア女性が食べていたものをのぞかせてもらった。ビーフの煮込みに、やっぱりプラタナのフライ、ほくほくに調理されたユッカなどがライスと一緒に盛られている。彼女は、たまに自国の食べ物が恋しくなるとここに来るのだそう。家で作らないの?と聞くと、料理はするけれど、これだけの種類のものをひとりで作るのは手間だし、こんなふうに簡単にサーブしてもらえるのはやっぱり魅力だという。

 毎年、世界で最も幸福感の高い国の3位までに入るというコロンビア。店側の人たちはあまり愛想がない印象だが、そこに集うコロンビア人たちは優しく心に入り込んでくるような笑顔をみせる。彼らのハッピー気分をたっぷりもらって、いい余韻で店を出た。

Cafeteria Las Palmas(コロンビア料理)
14 Rue Rachel E
(514) 987-1243
Mont-Royal

取材・文:稲吉京子
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