”Tout ce qui est petit est mignon.” というフレンチの表現がある。「小なるものは美しい」というところか。5年ほど前、このキャッチフレーズを打ち出していたカフェビストロがLaurier駅近くにあった。白いお皿の真ん中にちょこっちょこっと乗る食事が印象的だった。量が重要視されるモントリオールでも、小ぶりで質の良いものを出す店が認知されだした頃だ。今日紹介するリトルイタリーの外れにあるPastagaもそんな流れのひとつ。夜は、自然派のワインに大胆で気の利いた食事を合わせて楽しむ人でいっぱいになる。それだけに、本を片手にひとりくつろげる週末のブランチは狙い目だ。薄曇りのボーっとしたい土曜、メイクはせずに気持ちのいい服でフラリと出かけた。

土日のみのブランチは、10時開店から11時半までにはいるのがおすすめ。夜とは違った力の抜けた落ち着きがある。
アロンジェは濃く美味しい。アミューズがついて、なんと$2
ポークの薫製と卵のオランダソース添え$15.5
キノコと野菜のバゲットトースト$15
甘いブランチと塩っぱいブランチにわかれるメニューはコンスタントにかわる。人気のあるメニューは形を変えて登場する。
 まず、こんなにすがすがしい空間だったのかとわかるほど、混んでいないのが嬉しい。St Laurent通りを遠目に眺めるソファー席に座る。通りを何気なく見ているだけなのに、視線の途中にいる人と、何度も目が合ってしまうなんてこともない。メニューをもらう前にとりあえず頼んだコーヒーはコクがあり美味しい。そして、ゆっくりメニューに目を通す。質のいい物にひねりをきかせて出す食事スタイルは、ブランチメニューでも同じようだ。

 普段なら、好みのcroustade aux pommes(りんご焼き菓子)を頼むところだが、Pastagaではいい意味で期待を裏切ってくれるので、こちらも大胆な選択ができる。私が2杯目のコーヒーと一緒にたのんだのはこれ。
Benedictine au pulled pork(自家製スコーン、64°Fで調理した卵、オランダソース 付き)$15.5

 その他、気になるものとしては、以下のものがあった。梨のパンケーキ(キャラメルソース、シャンティリソース)ブタのコロッケ(冷たい卵のソース、ニース風かたゆで卵 付き)自家製黒ソーセージ(焼きパースニップ、ピューレ、マリネ、卵付き)

入店して45分経つが、他の客と目が合うこともない。まったり本を読みながらのブランチ。
 当然、洗練されたサイズのプレートが運ばれてきた。ポークの薫製肉を細く薄く削ったものに、いわゆる温泉卵状態のトロっとした卵、少しホットに寄ったオランダソースが合わせてある。小さく切った薄切り肉、ピリッとするクリミーソースの絡まる半熟卵、フレッシュな野菜を一口大にして頬張ると、こういう説得力のあるブランチもありだと納得する。予定を入れていないグレーな土曜日が、実に充実した時間に見えてくる。一口食べるごとにフォークとナイフを置き、本を読んだり、通りを眺めて空想にふけったりしながら、ゆっくりと食事を進める。お皿がキレイになる頃には、すっかりいい気分になっている。「お腹いっぱい!」という幸福感とは違う、ワンランク上の充実感が湧きあがる。3杯目のアロンジェを頼み、食事の余韻を楽しむ。真っさらなこれからの時間をどう過ごすか、ぽつんぽつんとアイデアが浮かびはじめる。

 シェフMartin Juneau率いるキッチンスタッフは、毎週日曜の夜に新たなアイデア出し合い、翌週のメニューを大胆に変えていく。血のソーセージのような定評のある物は形を変えてメニューに残るが、かなりの頻度で斬新なものに出会えるようになっている。また、簡素なメニューの名前からは想像しなかったようなものが目の前に運ばれてくる面白さもある。自然派ワインとディナー中心の店だけに、朝型派の人には土曜、日曜のブランチの存在は貴重といえる。ベジタリアンフレンドリーなーメニューも必ずある。10時開店を目指して行くのがいい。金曜だけランチを提供しているのも見逃せない。

Pastaga(カフェビストロ)
6389 St Laurent
(438) 381-6389
Beaubien
Rosemont

取材・文:稲吉京子
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