家族経営のアットホームな店
 ケベックの名物料理と言えばプティン、ポゴ(よく夜店で売っている、ソーセージに衣を付けて揚げた物)、蒸したホットドッグ等が思い浮かぶが、元来はそんなファーストフードが蔓延る街ではなかったらしい。今回は1938年創業、元祖ケベック料理の店を紹介しよう。

 店の名前‘ビネリー’は英語の豆‘ビーン’から来ている。ケベコワはそれを‘ビンッ’と発音し、フランス語で捩って‘ビネリー’。‘豆屋’と言う感じだろうか?フランス語と英語が公共語のケベックでは言語が入り交じり、その土地ならではの言葉が生まれるようだ。

 名前の通り、この店はシュガーシャックに行くと必ず出てくる甘く煮た空豆(Feves au Laud)の専門店。ここの豆はたっぷりのラードで時間をかけてじっくり炒めてあるので、脂で外側がカリッとして内側はとろりと柔らかい。口の中でじわっと豆の自然な甘さとラードの塩分が広がる。砂糖は全く入って無く個人の好みでメープルシロップをかけて食べる。

ころころしたおじさんがカウンターを仕切る
癖のないサッパリしたクレープ
席が約20くらいの小さな店
 朝食は豆が小皿に盛られ前菜(?)として出された後、どの店にでもよくある目玉焼き、ハム、ソーセージ、ベーコン、ポテトとパンが出てくる$5.95〜。11時以降になると1ドル追加。この店独特な所はクレトン(豚の脂がたっぷり入った豚肉ペースト)がついてくるところだ。パンの暖かいうちに付けると脂がじんわりパンに染み込んで重厚な味になる。難点を言えばどれも脂が十分過ぎて朝食にしてはちょっと重いところだ。

 他には蕎麦粉で作った薄いクレープとベーコンのセット$5.25。前記と比べると「えっ、これだけ?」と思うボリュームだ。蕎麦粉のクレープは小麦粉のよりも粘りけが少なく、ぱりぱりした歯ごたえだ。淡泊な味のクレープがメープルシロップを引き立てる。ベーコンにもたっぷりかけるのが通らしいが、大きな味覚の違いを感じる。

 軽食には何種類もあるサンドイッチ$2.60〜。もちろんハンバーガー、フライドポテト等は置いてない。パテシノワ(マッシュポテト、挽肉、トウモロコシで3層になったパテ)、トルチヤー(鶏、豚、牛肉の入ったパイ)、Tボーンステーキ、リブステーキ、ミートボールシチュー等$6.25〜。スープ又はオレンジジュース、デザート、コーヒーが付いたセットは$7.95〜。デザートには失業者のプディングと名の付いたケーキ$1.85、これはスポンジケーキの上にシロップが掛かった甘いお菓子。野菜のバラエティーが少なく、肉メインの料理は土地柄を感じる。持ち帰りも充実していて、クレトン小、中、大。豆のスープ、ミートソース、空豆、タルト、トルチヤー、サーモンパテ等$10.00以下で販売している。お食事券も発行している。

 昔はアイスホッケーの選手、有名な映画監督等もお得意さまだったそうだ。1981年にはケベックの象徴の風景としてビネリーの店を一部に描いた小説が出版され、それがグランプリを取り映画化されたそうだ。題は‘LeMatou’と言い、今でもそのポスターが壁に飾られてある。

La Binerie(ケベック料理)
367 Mont-Royal Est
(514) 285-9078

Mont-Royal
月〜金:6:0020:00
土日:7:3015:00
取材・文:坂井 桂子
過去のレストラン
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