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いつも発音と表記に迷う。10代の頃にシカゴでフムスと出会ってから、私は長いことヒュームスに近い音で発音していた。google検索のヒット件数でいくと、フムスという表記が一番人口に膾炙した名前のようだ。このフムス、地中海地域で広く食されるひよこ豆のペーストだが、好き嫌いが別れる食べ物だと思う。フムスの話で人と盛り上がったこともない。地味な存在なのかと思っていたが、「美味しいフレッシュなフムス、お腹いっぱい食べたいね」と意気投合できる友人が現れた。いろんなタイプのフムスが食べられるフムス・バーに出かけるしかない。。 St-Laurent通りにあるフムス専門店のBirona Hummus Barは、店に入るだけで上向き気分になる明るい空間を持つ。 お気に入りはギリシャという名のついた、グリルしたナスのフムス($14.75)や、チュニジアのシャクシューカ風フムス($15.75)だが、今日はエルサレムの文字が目に止まった。フムスにファラフェル、タヒーニ、辛いソースを合わせている。私が初めてファラフェルを口にしたのは、エルサレムだった。迷路のようなスークの路肩で、ドラム缶のような大きな鉄鍋で調理されたものを手づかみで食べた。塩辛く硬くモサモサしていた。あのファラフェルではなく、さっくりふわふわのファラフェルをイメージして、祈るような気持ちでこのエルサレム($14.50)を頼んでみた。他にはシリア、エジプト、レバノン、イラク、北アフリカ、フランスなど26種類のフムスがある。 ふんわりと暖かい自家製のパンとフムスが運ばれてくる。フムスは濃厚で新鮮。ファラフェルは素晴らしいコンディション。期待を裏切らない味と食感だ。フムスもファラフェルも、他の国に適応し、独自の進化を遂げている。 友人が頼んだのは、ファラフェル、フムス、タヒーニ、キュウリ、トマト、玉ねぎ、ピクルス、パセリが入ったファラフェルサンドイッチ($9.50)。 ふかふかのピタパンに綺麗な色の千切り野菜が詰まっていて、その中に仕込まれたファラフェルがパンの縁からのぞいている。友人は一刻も待てずに、ファラフェル部分から思い切り大口で噛み付く。サクッ、ふわっ、シャキシャキ、ジュルル、マリアージュという具合に口の中に至福が訪れたようだ。 ナスをメインに使ったメニューはこれしかないので、特に目を引いた。ナスをソテーして美味しくないわけがない。トマトを使った赤いソースと、アフガニスタン特有のヨーグルトでできた白のソースに、くったりとしたナスが埋もれている。しんなりしたナスは2種類のソースと絡んで、さらにとろける味と舌触りで、まさに口から喉から胃から潤って満ち満ちる感じ。もうちょっと食べたいというところで、次のラビオリが湯気を立てて運ばれてくる。想像より洗練された薄めの生地はつるっとして、中に包まれた香草類の香りが濃いめのクリーミーなソースと合う。 フムス以外には、グリルした肉類やソーセージなどのメニューもあり、どんぶりの感覚で食べられるbowl類($12〜)もある。ヘルシーをコンセプトにしているレストランでは定番にもなりつつあるbowlだが、ここでは、ベースとなる炭水化物を、ご飯、キノア、クスクスから追加料金なしで選択し、スイートポテト、ひよこ豆、焼き野菜、フレッシュグリーン、3種類の自家製ソース(ケーパー・レモン、サルサ、ペスト)が基本アイテムとして乗る。そこから自分好みのトッピングを有料で追加し、自分色を出していく。トッピングの具は、テンペ、グリルしたチキン、シュニッツェル、卵、ツナ、豆腐、ナッツ・シード各種。 素敵な店内でゆっくりしたければ、平日の2時過ぎから2時半頃が狙い目。2時すぎると急にランチ客がひけるので、店内を独り占めできる可能性が高い。月曜から水曜は3時半閉店だが、木曜から週末にかけては夜10時半まで通しでやっていて、12種類の生ビールとフムスを楽しむ人で賑やかになるらしい。 Birona(フムス専門店) 5417 Boul St-Laurent
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取材・文:稲吉京子 | |||||||||||||||
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