バス停を降りてすぐにLa Succuresaleの看板が見える
日中と夜の雰囲気がずいぶん違う店内。共通しているのは清潔感。
お試し4種のビール$8。人と8種類、12種類頼むともっと楽しい。
ヤギのチーズ・ピスタチオと蜂蜜いり。
人気のあるNachos$9.75。あったかいうちに食べたい。
ソーセージのほかほかのサンドイッチ。食べにきた人にはこれ。スモークミートのサンドイッチもあり。
チーズの盛り合わせ。$11。ビールのゼリー(中央)は面白い。
座る場所によっても雰囲気がずいぶん違う。座る場所によっても雰囲気がずいぶん違う。
 ケベックに来て、私の嗜好を180度変えた数少ないもののひとつに、ビールがある。Molsonのビールではない。ケベック州の地ビールだ。ケベックに初めて入植してきたフランス人たちが、ワインよりビールやアップルサイダーの製造に力を入れていた地域出身だった影響のせいか、ケベックで作られる地ビールは、北アメリカに普及しているビールと比べ、味もスタイルもまったく違う。地ビールに対する盛り上がりもケベック独特のもののように見える。日本にいた頃の私は、座るなり日本酒や焼酎を注文するような人間で、「とりあえずビール」の楽しみを知らずに人生の大半が過ぎ、モントリオールで飲んだ地ビールで私は開眼した。

 魅了されたのは、その表現力。すべてが最高に美味しいわけではもちろんないが、こういう味もありか、と思わせる遊び心がある。狙い通りなものから、突拍子のないものあり、付け焼刃的なものもあれば、まねっこのようなものも含め、それぞれの地ビールがもつ方向性や意図にバリエーションがある。それ以来、公園でビール、電気のない山奥でビール、家のベランダでビール、畑でビール、と生活に地ビールが登場するようになった。と書くと、そうとういけるタイプのようだが、そうでもなく、ビール小瓶1本が致死量となることもある。顔は赤紫になり、ひどいときには発疹で顔が覆われたりする。それでも飲まずにいられないのが、ケベック地ビールなのだ。

 さて、冬真っ只中だからこそ出かけてほしい地ビールバーがある。誰といっても楽しくなるようなところだ。

 メトロLaurie駅が始発のバス47番にのって10分程度。この数年発展目覚しいMasson通りと9iem ave.の角でバスを降りると、前方にLa Succursaleの看板がみえる。ここが新鮮な自家製ビールを飲ませる地ビールバーだ。本来はブラッスリー(Brasserie)と呼ぶべきなのだが、モントリオールでブラッスリーと名のつくところのいろんな意味で垢抜けない感じと清潔感のなさや、さらにはビール醸造所を持たないブラッスリーとは一線を画したくて、あえてここでは地ビールバーと呼ばせてもらう。

 開放的で清潔感あふれる店は、それだけで入りたくなる。天井は高く、ガラスを多用した壁から差し込む自然光で店内はぱっと明るい。バーとはいえ、日中は子供連れの家族が食事する姿をみかけるるほど、すがすがしい空間がある。そして、日が暮れると明かりは落ち、バーの要素がぐっと押し出され、ロマンティックにさえなる。それでいて健康的な感じが失われないのは、ここはバーである前にビール醸造所であるというアイデンティティのせいかもしれない。

 試してもらいたいのが、Palette de Degustationのシステム。10種類前後ある自家製ビールからビール4種類を選び、小さなグラス(150ml)4つにつがれたビールが木の枠にはまって運ばれてくる(8$)。人と一緒にいくつも種類を試しめ、生産コストがかかる値段の高いビールを選んでも値段はかわらないという点でもうまみがある。1点から味見(verre de degustation$2.25)もできるので、ちょっと楽しめればいいという人にはこの「おビール」サイズがありがたい。通常サイズはpetite($4.25)、Grand($6)。もちろんノンアルコールのビールや、ビールベースのカクテル、ワインやリンゴ酒もある。毎週水曜日にはしぼりたてや新作がお披露目され、週半ばでも味見グラスで1杯だけ飲みに寄る人もいるようだ。ちなみに私が頼んだのはこの4種類。

 定番メニューにはないベルギータイプのブロンドL'ardenne IPA(アルコール度6%)は、アロマティックではじけるような後味があり、今日の一番のお気に入り。Triple de la reine(8.2%)もいつ行ってもあるビールではなく、高いアルコール度と低い苦味があるだけに食べ物との相性がいい。ドイツのケルン地方で製造されるKolschタイプのPetite cote(4.8%)は店の定番中の定番。そして、ギネス好きな私に店の女性が薦めてくれた黒いビール1814(5.5%)。

 そして、ここでの食べ物のあり方がいい。べたべたぎらぎらせず、あくまでビールのお供に徹する潔さがある。だからといって、ありきたりな軽食ではなく、ビールを最後まで美味しく飲み終えるよう演出されている。味わい深いビールと合わせると、この食事で最後ぴったりになった。人気があるのはNachos Tostadas($9.75)。オリーブやたまねぎ、ホットピーマン、チーズとともにオーブンで焼かれたNachosは、2,3人でシェアできる大きさ。食べたい人には熱々にグリルされたソーセージのSandwich a la saucisse miel et ai($7)が薫り高くてお薦め。私が気に入ったのはヤギのチーズにピスタチオと蜂蜜が混ざったfromage de chevre, pistaches et miel($6)。これは、かりかりに焼いた薄切りパン(Croutons)と一緒にサーブされる。塩味とビールの組み合わせに口の中が飽きたころ、対照的な甘みでもって最後のビールの何口かを別の領域で楽しめる。チーズプレートは、‘いろいろなチーズ’といいながら、凡庸なチーズ2種類だけでがっかりだったが、その付け合せにある自家製ビールで作ったゼリーとナッツの組み合わせはなかなか面白い。Veriete de fromages avec gelee a la biere maison et noix.($6ー$15)

 いつもある定番ビールに関しては、苦味やアルコール度、味の系統などが店のウェブサイトでチェックできる。麦芽をお湯につけて甘みを出し、それをろ過した麦汁にホップを入れて煮出し、最後に酵母をいれるというビールの製造過程を、醸造所で実際作業するオーナーのコメントを交えてビデオクリップにしたものも見られる。ビール初心者は一度のぞいてみるといいかもしれない。ついでに、ビールに含まれるビタミンB群や、抗酸化物質であるフラボノイド、善玉コレステロール、心臓疾患の軽減、などなどビールをめぐる美容健康情報も調べてみると、ビールの見方が変わるかもしれない。

 ケベックの人気の地ビール会社Unibroueも数年前にSapporoに買収されてしまったと聞いている。降り積もる雪を眺めながら、小さな地ビール生産者の作りたてビールを直接その場でぐびっと飲める贅沢は、つかの間の夢かも?。

La Succursale(地ビールバー)(HP)
3188 RUE MASSON
(514) 508-1615
Laurierから47番のバスで10分

取材・文:稲吉京子
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