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前菜は5品、メインは6品と多くはないが、似た系統はなくバラエティに富んだ選択肢を用意しているので、自分の気分に合うものが見つかるはず。しかも、前菜も選び方によっては、メインになるほどしっかりしたものもある。例えば、チッポリーニ・タマネギ(イタリア原産の平べったいタマネギ)を使ったオニオンスープ($9)はこの季節にぴったりなあつあつの食べるスープは、これだけでも1食になる十分なボリュームと味だ。地元ビールと薫製ベーコン、熟成した蜂蜜、Louis D’or(オーガニックの生乳から作られるケベックのチーズ。ナッツや果実の香りが特徴)と一緒に料理され、豊かで深い味わいのスープ。形をとどめながらもトロンとしたオニオンとよく絡まる。その一方で、持ち込んだ物語で胸がいっぱい、ワインと軽いつまみ程度の前菜がいい、という人には、ガスベジ産トラウトの薫製+酸味の利いたクリームと梨のチャツネ2年熟成添え($12)がすっきりはまるかもしれない。垂れるソースもスープもなく、ワインや本を片手に、背もたれに身体を預けたままいただける。 メインはこんなものを頼んでみた。 ● ターキー、カリフラワーのロティ、エルサレムアーティチョーク(キクイモ)、リンゴのゼリー、アイスサイダー(リンゴ酒)のフォアグラ。$19 ● 子羊、チッポリーニオニオン、ズッキーニのオランダソース、人参と野生キノコを肉汁で。$27 女性の拳ほどの大きさのターキーは、ヘルシー感かつ期待以上のアピールと満足感があった。その弾力は肉の良質さを語り、ソースがかかってない部分でもしっとりして十分旨みがある。ソースは斬新な部類ではないが、誰もが食欲をそそられる安定感がある。また、同プレートに添えられたカリフラワーのペーストが、主役を食うほどの存在感。香り高いフォアグラもつき、1つのメイン皿で2度も3度も楽しめ、気分が高揚する。 子羊の方は、運ばれてくるのを見たときから罪作りだった。見事なボリューム、暖かみのある彩りと食材、テーブルを席巻してしまう芳しい香り。まさにアタリ!肉の味が良いのは言うまでもなく、付け合せの黄色いマッシュポテトのようなズッキーニソースに鎮座するローストオニオンが取り込んでくる。さっきまでの本への胸の高鳴りを忘れ、口の中で起こる快感に没頭してしまう。定番メニューだからこそ、熟達度やセンスがとわれる料理だ。シャンパン3種を含めたワインリストも充実しており、白ワイン13種類から、6種がグラスで頼め、22種の赤からは4種のグラスワインが選択可能だ($8〜$10)。自家製のデザートは数種類あり(全$7)、コーヒーやココア($2.75〜$4)を頼んで、買った本をぱらぱらやるのもいい。 ここで味わえるのは、ケベック各地から集められた選りすぐりの食材、いい物へのこだわり、かけられた手間隙や情熱といったものではないか。本好きでなくても、愛しくなってしまうレストランなのだ。その愛を高める理由のひとつに、夏のテラス席がある。店の裏手の植物棚が絶妙な日陰を作り、本を片手に日がな過ごしたくなる。とはいえ、まずは静謐な雪の日に、内側からぽっと暖まるお出かけにどうぞ。 Livrairie & Bistro Olivieri(ビストロ)(HP) 5219 Chemin de la Côte-des-Neiges (514) 739-3303
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取材・文:稲吉京子 | ||||||||||||||||||||||||
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