ARCHIVE
メディア・アーティスト、Marc Fournel(2007/10/1)
ピープル
L'acquis et sa meurtrière (1997)
初のインスタレーション作品(プロジェクション部分)
Le Puits (1999-2000)
初のインタラクティブ・インスタレーション
Tontauben (2004)
[IN] (2006)
Ω (Oméga) (2006)
SKIN-PÔ (2006-2007)
現在、進行中のプロジェクトの一つ。
 今回はメディア・アーティストMarc Fournel氏にインタビューしました。

 彼はケベック州内に有る、メディア系のアーティストランセンター2軒の運営に長年携わった経験を経て、現在は自身のビデオ、インタラクティブ・インスタレーションのコラボレーション複数と各地での展示を中心にインディペンデント・クリエーターとして活躍しています。 そしてアーティストのみならず色々な顔を持つFournel氏は、今年8月末にモントリオールで開かれた第2回PureData Convention 2007で、キュレーターとしてLa Société des arts Technologiques (SAT)を会場としたニューメディア・アートの展示に腕をふるいました。また、 今年9月から L'Université du Québec à Montréal (UQAM)で講師としてクラスを持つなど、超多忙の日々を送っています。初対面の印象は何となく強面で一見、取りつき難い印象のFournel氏でしたが、意外にも(・・・と言っては失礼かも)本当に気さくな方で、忙しい合間を縫って今回のインタビューに快く応じてくれました。

--- アーティストになったそもそものきっかけは何ですか?

 「昔から物を創ることに興味が有って、色々な素材でオブジェを創ったり詩などを書くのも好きだったんだけど、昔は自己表現の手段と言うよりは単に趣味程度の事だったんだ。仕事を通してずっと“アート”と言う物に携わってはきたけど、アーティストをサポートするだけの立場だったしね。でもある時、アーティストランセンターで始めたアートビデオ製作支援のプログラムに、何となく興味が湧いたから参加してみようと思い立ったのがことの始まりだね。」

--- その当時はアートビデオの製作に力を入れていたようですが、始めにビデオを煤体として選んだ理由は何ですか?

 「僕にとってビデオは音と画像を結ぶ境界線的な物だからじゃないかな。異なった物が交わるインターフェイスって言うか何っていうか。でもすぐにビデオだけでは物足らない感じがして、インストレーションに移ったんだけどね。」

--- 何を物足らないと感じたんですか?

 「もともと“我々の肉体がどういう風に空間と関わりあうか”という事にずっと興味が有ったんだ。昔の作品を見ても分かる様に、“肉体”と言う物をテーマにした映像が多かったしね。でも、僕自身、体そのものを動かす事が好きだったから、一か所に座って観る作品が段々焦れったくなっていったと言うか何て言うか(笑)」

--- 映像で表現する肉体では無く、肉体その物の動きを空間に取り入れようと思ったと言う事ですか?

 「そうとも言えるね!」

--- 動きを空間に取り入れるという点では、現在、力を入れてらっしゃるインタラクティブ・インスタレーション作品に通じる物がありますよね?

 「もちろん!インタラクティブ・プロジェクトではさっき言ったように肉体、空間、作品が全て関わりあってくるからね。 さっきのビデオの質問にも通じるけど、僕は全く異なった物質がテクノロジーで繋がりあって、そしてその創られた新しい空間の中で共存していける可能性に情熱を感じているんだ。」

--- 実はずっと気になっていたんですが、貴方にとって“インタラクティビティー”ってどう言う事を意味するんでしょうか?

 「うーん… それは良い質問だね!(苦笑)」

--- それではビデオ・インスタレーションが観客を取り込んで空間の中に動きを作ると言う点ではインタラクティブと言えると思いますか?

 「確かにインタラクティブと言ったらインタラクティブだろうけど、それは肉体的と言うよりは理性的な物じゃないかな。しかも、ビデオ・インスタレーション作品は全てがコントロールされていて、アーティストの意図の中を観客が体験するような感じなんだけど、インタラクティブな作品にはコントロールが効かない部分が沢山有るだろう? 全ての人がどういう力加減で作品にじかに触れるなんて全然予想がつかないからね。 僕自身、作品を見せるたびにいつも興味深い発見が有るんだよ。」

--- さて、インタラクティブ・プロジェクトに限らず、ニューメディア・アートと言うフィールドの中で“コラボレーション”と言う言葉を良く耳にするのですが、このコラボレーションについてはどう言う考えをお持ちですか?

 「僕の場合、自分の苦手分野が強い人を選んで一緒に製作しているんだ。得意な所もそうでない所も全て自分でやるよりは、苦手なところはエキスパートに任せた方がやっぱり技術的完成度は高いしね。でも、これも人間関係だからうまくやっていける人を探すのは本当に難しいっていつも思うよ。しかも実際うまくやっていける人がいたとしてもその人がする全ての事に賛成出来るわけじゃないから、ある程度の妥協も必要になってくるしね。本当に難しい!」

--- 誰かと一緒に製作していて、後からクレジットが問題になるという事は有りませんか?

 「確かに僕が雇って一緒に仕事する人達の中にはただの技術者じゃなくって、自身がアーティストと言う人も多いからね。だからほとんどの場合、プロジェクトが進んでいくうちに技術面だけじゃ無くてアーティスティックな面でも色々貢献しもらってるんだ。だから最近では作品のアーティスト名を単に 【Marc Fournel in collaboration with】では無く【PLAN B】と言うグループ名で発表してるんだ。だってその方が平等だろう? この【PLAN B】に僕以外の固定メンバーは居ないから、これからも色々な人たちと一緒に自由に進化し続けていきたいと思ってるよ。」

--- 最後になりますが、これからの目標は?

 「ハイキングに行くこと!なんてね(笑)・・・・・そうだなぁ、世界各国で展示をして回る事と、だれか僕のキャリアのプロモーションをしてくれる人を見つける事かな!」

--- それは意外な発言かも!

 「だって僕には妻も子供もいるから、自分のキャリアのためにやりたい事全てをこなす時間が無いんだよ。もちろん家族が居てとても幸せだし、良かったとは思うけどアーティストとしての“自分の為の時間”、本当に集中出来る時間を持てる事って大切だからね。嬉しいジレンマと言ったら嬉しいジレンマなんだろうけど!」

--- お忙しいところ有難うございました、今後の益々のご活躍に機待してます!

文/Text:畑山理沙/Risa Hatayama
Photos: Courtesy of the artist


Marc Fournel氏のウェブサイト