モントリオールでは実に様々なイベント・フェスティバルが大小問わず常にあちこちで行われている。夏に行われるモントリオールジャズフェスティバル、国際フィルムフェスティバルを始めとして、マイナス25度以下になり一年で一番寒いと言われている2月でさえ、Festival Montréal en Lumière(モントリオール光の祭典)、Rendez-vous du cinéma québécois(ケベック映画のランデブー)、Festival Voix d'Amériques(アメリカの声フェスティバル〜話される言葉の祭典〜)など、多くのフェスティバルが行われている。
 アーティスティックなイベント・フェスティバルは多いが、中でも、ビジネスとアートとの融合という、画期的な概念で企画されたフェスティバルがある。Celebration de l'existence(存在の祝祭)と呼ばれるこのイベントは、2003年5月に初めて行われ、今年で3回目になるという。モントリオール、ケベック内でも様々なメディアに取り上げられた。ビジネスとアートという対極にある世界を近づけようというこのフェスティバルを企画・運営したcinco(シンコ)というイベント企画会社のNicolas Marullo氏に話を聞いた。

--- cincoを始めるまでの経歴についてお聞かせ頂けますか。

 「そうですね、まず、僕は16歳で会社を始めました。そして18歳の時には15人のスタッフを雇っていました。ビジネスが僕のやりたいことだったし、それがどういうものかを知りたかったからです。そして、モントリオールのロースクールに行って法律を勉強しました。そしてフランスのパリで(製造業の大手、米国)General Electric社に勤めました。そして、M&A(企業の合併と買収)を専門として働きました。そこではヨーロッパ、アフリカ、中東担当部門でした。つまり、僕はカナダ人でありながら、ヨーロッパ、パリにある、アメリカ資本の会社にて、サウジアラビアの人々と働いていました。だから、非常に多様な国々の文化を学ばなければならなかったし、接することになり、とても面白い経験をしました。

 僕はモントリオールではフランスのシステムに基づいたフランス語の学校に行っていたのでフランス的な教育を受けながら育ちました。フレンチシステムの学校に行きながら、ケベックの高校にも行っていたのです。だから、朝の8時から夕方5時まで学校に行く毎日で、とても一生懸命勉強しました。(笑)また、僕の家族はモントリオール出身で、その前の世代はイタリアから来ました。つまり、僕は様々な文化の混在した存在なのです。それからロースクールに行き、ヨーロッパに数年滞在し、その後数年世界各地を旅行しました。オーストラリア、ニュージーランド、アジア地域、例えば日本、中国、タイ、それにヨーロッパの各地などを旅行しました。当時僕にとって旅行することは職業的にも、また学術的にも、予備知識・経験を得るためにとても大切でした。とてもいい勉強の場だったのです。

 ロースクールは僕にとって、基礎を固めるためにとても大切でした。ロースクールに行きながらベンチャー企業でも働いていたので、ロースクールで勉強すると同時にビジネスの現場からも実地での教育を受けました。そして、モントリオールに戻ってからは、モントリオールのIT企業に勤めました。同時に、M&Aもしており、年間で約40社の企業を合併・買収しました。当時2000年はITブームだったので、たくさんのハイテク企業を買い取りました。 それから、企業の合併に関する専門的技術を磨き、大学にてMBAの会議を開きました。24歳でMBAの会議でスピーチしたのです。Executive MBAの会議だったので、ほとんどの出席者は50代でしたが、僕はまだ24歳でExecutive MBAの会議に出席し、彼らに講義をしていたのです(笑)。 モントリオールのベンチャー企業で働いた経験、ヨーロッパでM&Aの仕事をしていた経験、さらにモントリオールでの2年のM&Aにおける経験と充分な経験、実地経験があったので、2つの会議を開き、UQAM(ケベック大学モントリオール校)でも会議を開きました。そしてその後、自分で事業を興すことにしました。物事を確立したり創造したりするのが好きだからです。それがcincoです。25歳のことです。 」

Celebration de l'existence
Celebration de l'existence
Celebration de l'existence
Celebration de l'existence
Celebration de l'existence
--- フェスティバル「Celebration de l'existence」について聞かせてください。

 「僕は、人々は皆人生に置いて、仕事・私生活・新しいことの発見/情熱、この三つの間のバランスが必要だと考えています。新発見というのは、芸術でもあり得るし、どんな種類の趣味でも、どんなことに対する情熱でもあり得ます。もし充実した私生活とあなたが大好きな人々と、興味があって大好きなこととのバランスがとれていれば、仕事にも情熱を注ぐことができるのです。

 このような考えのもとに僕はcincoを始めました。cincoの使命はアートの世界とビジネスの世界の距離を近づけることです。アートは、彫刻、絵画、アートパフォーマンス、音楽など、全てを含みます。基本的にビジネスの世界とアートの世界は水と油のようで、一緒になることがありません。基本的なアイデアは、両者をつなぐ橋を創造するということです。それで、2003年に「Celebration de l'existence」というイベントを開催しました。ビジネスの世界にアートを持ち込むという概念です。絵画、彫刻、アートパフォーマンスなどが存在していると同時に、同じ場所に商品が存在するのです。商品は日常生活に関係するもの、携帯電話、車、IT技術など、なんでもあり得ます。ビジネスの世界は常に新しいことにとても関心があります。僕らはビジネスの世界をアートの存在する環境に持ち込みました。僕らはビジネスアイテムについて知ることができると同時に、芸術、新しいコレクションを生み出しているアーティスト、例えば洋服や絵画について学ぶことができるのです。

 それは芸術とビジネスが同時に存在する環境です。例えば、同じ場所で画家の新作を見ることができ、また、最新の携帯電話の情報も得ることができるのです。それがフェスティバル「Celebration de l'existence」のアイデアです。

 仕事が終わってアフターファイブに友達と一緒に「Celebration de l'existence」に行ったとします。そこにはバーもあり、飲み物を飲み、話しながら歩き回っていると、最新の機能を搭載した携帯電話があり写真を撮ったりムービー機能を試したりすることができる。そしてその隣では画家の最新作を楽しむことができる。更に進むと、新車が展示されていて、試乗でき、その向こうではサーカス出身のアートパフォーマーの最新パフォーマンスが行われていたりする。アートとはヴィジュアル的なものとは限らず、音楽でもありえるし、ファッションショーでもあり得る。アートとビジネスが同時に混在する場所なのです。「Celebration de l'existence」は週一回、2ヶ月間ダウンタウンで行われ、合計約25,000人が来場しました。それが第一回で、昨年2回目をPlace des ArtContemporary Art Museumで行いました。」

--- アートとビジネスを同じ環境に持ち込むというこのようなイベントは他では行われていないのでしょうか?

 「モントリオール、ケベックでは他にはこのようなものはありません。二つの世界を近づけ、また好評を博し、25,000人の人々が訪れるようなイベントは他にはありません。いろんなメディア、ラジオ、新聞、テレビなどで報道されました。他の都市でもこのようなことを行おうとしていたと思いますが、僕らほど強力にプッシュしたかどうかはわかりません。僕はビジネス出身で、芸術的なバックグラウンドを持っているわけではありません。でも、僕らのチームメンバーの多くは芸術畑でした。多くのフェスティバルは、芸術を生み出しているアーティストが開催するか、ビジネス畑の人間が開催しています。けれども、cincoは両者が一緒になって二つの世界を近づけようとしたのです。ビジネスの世界の人間だけではなく、アートの世界の人間だけでもなく、両者が一緒になって二つの世界を近づけようとしたのです。

 新しいことに出会いたい。でも、みんな時間がなかったりどうして良いか分からないことがあります。そういうとき、cincoがそのきっかけを提供しているのです。例えばイベントに来てもらって、もしそれが気に入らなければ一杯飲んで友達としゃべってから家に帰ればいい(笑)。場所とやり方のひとつを提供するので、cincoに来てみてください、ということです。」

--- 仕事・私生活・新しいことの発見/情熱のバランスというアイデアはどうして生まれたのですか?

 「僕自身旅行していたとき、いろいろと考えることがありました。パリにいたときは自分もひとりだったし、家族はモントリオールにいたし、いろいろな国々を旅していたとき、たくさん考えました。何が一番自分にとって大切なんだろう、とか、自分は人生に何を求めているんだろうとか、誰もが自分一人の時だけにしか考えないようなことです(笑)。そして、自分が何を優先すべきなのか考えました。もちろん成功することですが、同時に自分も楽しめることがしたいと思った。そしてこの考えにたどり着いたのです。

 たいてい自分のゴールにたどり着くためにはしたくないこともしなければならない。僕はロースクールにも行ったし、一生懸命働いた。よし、やりたいことをやろう、そして自分のやりたいことをやり続けようと思ったのです。もし明日オーストラリアに行きたければチケットを買って行けばいい。それをやりたいと思えば、やればいいのです。自分がやらなければ、誰がやってくれるでしょう。やらないと、後悔します。人生には悪い経験というのはそうそうないと思います。何を経験しても、良い点は何だったか、その経験から何が学べたかあとから考えることができます。例えばビジネスで言えば、失敗してお金を失ったとしても、少なくともこれは二度とやらない、少なくともこれを学ぶことができた、ということができます。」

--- アーティスト主催の多くのイベントでは資金についてたびたび問題が発生すると思います。今回はアーティストだけの主催ではありませんが、開催資金についてはどうされたのでしょう。

 「開催資金は完全に僕らが投資しました。政府からの援助等はまったくありません。それは僕らにとっても大切なことでした。なぜなら、そのフェスティバルこそが僕らの会社を軌道に乗せるためだったからです。新しく会社を始めるとき、その会社を世間に知ってもらうには10年くらいかかることもあります。例えば、cincoという名前を聞いたときに、人々が「あ、cincoね。知ってる。」というくらいになるまで、あるいは25,000人の人々がcincoについて話すほどになるまではね。でも、そのフェスティバルを行ったことで、急速に人々に認知されることになったのです。

 それで、僕らは会社をふたつにわけました。ひとつはパブリックサイドで、フェスティバルに来た人々を顧客とし、もうひとつのコーポレイトサイドでは企業をクライアントとしました。コーポレイトサイドでは、例えばいくつかの企業から新しい香水、新車をプロデュースするためのイベントを企画して欲しいという話がありました。それで、僕らはいろいろな企業のためのイベント企画を始めました。VolkswagenFerrariHugo BossLouis VuittonCirque du Soleilなどがcincoに興味を持ってくれました。」

--- 企業のためのイベントというのはどのようなものでしょう。

 「それはまた違ったものになります。例えば、VolksWagenの新車発表イベントでは、豪華な新車二台を展示し、その背景でレイヴパフォーマンスが行われました。Ferrariにもイベントを企画しましたし、ガンにかかっている子どものためのモントリオールにある組織「leucun」に年一回イベントをすることで支援してもいます。実に様々な異なるイベントを企画しました。とても高品質で細部にこだわったイベントです。細部にこだわることはとても大切で、それが他のイベントとの違いを生み出しています。誰でもイベントを開催しようとすることはできますが、イベントを行うときに細部に気を配ることは大変なことです。我々のクライアントは細部の違いを大切に思ってくれています。よりアーティスティックであること、例えば、イベントに招くアーティストはシルク・ド・ソレイユであったり画家、歌手であったりします。企業のためのイベントは、企業が僕らの芸術における専門性とビジネスにおける専門性プロジェクトを企画し、実行する力の両方を買ってくれているのです。

 例えば、6月に5日間で5つのイベントを行います。それぞれ一日約500人の人間が関わります。なので、プロジェクトマネジメントはとても大切です。ただアーティストを呼んで「ありがとうございました!」というわけではありません。技術的なこと、照明、ケータリングなども含めたイベント全てに関わるプロジェクトマネジメントが必要なのです。また、例えばクリスマスにはどの会社もイベントを行いますが、僕らはオールドモントリオールでイベントを行いました。Nöel Extravaganza(クリスマス狂想曲)というイベントで、オールドポートにクリスマス環境を作り出しました。食べ物、ダンス、様々な種類のアーティスティックパフォーマンスが行われるイベントです。これが、企業のために企画したイベントのひとつです。パブリックサイドではフェスティバルを企画し、コーポレイトサイドでは新商品などの紹介、クリスマスイベント、セミナーなどを企画します。これがcincoです。

--- もちろんモントリオール出身ということもあるでしょうが、なぜこのイベントを始めるのにモントリオールを選んだのですか?

 「なぜなら、モントリオールは新しいことを始めるのに最適な場所だからです。『新しいことを創造する』『危険を冒す』のに最適な場所の一つと言えます。まず、ここにはたくさんのアーティストがいて、たくさんの創造的な力がある。それから、モントリオール発信の素晴らしいこと、例えば、セリーヌ・ディオン、シルク・ド・ソレイユなどがある。更に、新しいことを始めるに当たってかかるコストが他の都市に比べて比較的安く済む。例えばU.S.に行って新しいことを始め、失敗したとすると、全ての財産を失うこともあります。U.S.では何百万ドルとかかります。でもモントリオールではより新しいことを始めやすいので新しいことにチャレンジできます。ヨーロッパやU.S.よりコストの面で新しいことを始めやすいのです。そして、それを世界に輸出、もちろん日本へも(笑)発信するのに最適な都市です。これは自信を持って言えます。

 モントリオールは小さな市場ですが、ここで新しいことを始めてそのエキスパートになれば、それを他の都市へ持ち込むことができるのです。モントリオールで何か新しいことを始めて、それをモントリオールだけに閉じこめておくのは良い考えとは思いません。モントリオールで始めて、築き上げ、強化して、それから輸出するのです。これが基本的な考えです。」

--- モントリオールと他の地域のアーティストに違いはあると思いますか?

 「どこ出身だからといって違いがあるとは思いません。モントリオールは刺激に囲まれていて、実にたくさんのショーがあります。夏の間は町中でフェスティバルが行われているし、たくさんのアートギャラリーがあるし、モントリオールの人々は芸術に対して批評家だし、簡単とは言わないけれど、アーティストにとってもっと学んだり知ったりする機会に囲まれています。モントリオールはそういう街だと思います。2005年には世界で一番イベントが行われる街になると思います。

 他の都市、東京なんかに比べたら小さい街ですけど、とまることのない街なのです。また、カナダの他の都市やU.S.に比べてより多様な文化的背景があります。フランス語を話すこともそのひとつで、僕らをより他とは異なる存在になるように刺激してくれます。僕らは異なる存在になりたい、僕らは何か他とは異なることをしたい、僕らは「黒い羊」になりたいんです(笑)。羊は普通白いでしょう?その中で一頭だけ違う「黒い羊」に僕らはなりたいんです。モントリオールはアメリカ文化に囲まれていますが、同時にヨーロッパの感覚を持っています。フランス語を話すこともあってヨーロッパの影響があります。一人でいるときは誰でも異なることを強いられるでしょう?」

--- cincoはトロントとニューヨークにも支店がありますが、トロントやニューヨークとモントリオールの人々との違いを感じますか?

 「もちろんです。トロントはよりビジネス志向が強いのですが、モントリオールはより文化的です。人々はショーを見に行ったり新しい物を見たりするのが好きです。僕らはトロントでもイベントを企画しますが、よりビジネス的です。企業は、より、いかに顧客を獲得するかということに熱心です。より楽しみの部分が少ないのです。モントリオールでは楽しむために何かをすることができるのです。飲み物を飲んだり友達と楽しんだりするためにね(笑)。」

--- トロントもいろいろな国々から来た人々が多いですよね。

 「そうですね。でも、トロントに行くと違いを感じます。人が違うのです。例えば東京に行くと、特に地下鉄など、とてもたくさんの人で混雑していて、いつも何かを急いでしなければならない、いつもせかされているような気になって、ストレスを感じることがありますよね。そんな感じがあります。でも、モントリオールに来ると違います(笑)。地下鉄に乗ってもみんなもっとリラックスしていて、走らず歩いているし、せかされることがないのです。都市が生き方を変えるのです。」

--- ヨーロッパの影響についてどう思いますか。

 「とても美しいと思います。ヨーロッパに住んでいたこともあるし、フレンチシステムの学校に行っていましたし。ヨーロッパにはたくさん提供できる物があります。文化、歴史など。もちろん、アメリカにも多くの物があります。物事を早く進めようとする精神性、ビジネス的な考え方など。でももしそれらの二つの世界を一緒にして、それぞれの一番いいところを持ち寄ってブランドを作り上げたら、モントリオールになります(笑)。良い面にもなりうるし、悪い面にも成り得ますが、たくさんの機会が与えられているという点はアメリカの良い部分です。何か新しいことを始めたいと思ったら、できるのです。ヨーロッパではそういうことがもっと難しいのです。この学校出身でなければいけないとか、この人物を知っていなければならないとか、この人物の娘の息子でなければいけないとか(笑)。ここでは、賢明であれば、成功することができます。たくさんの機会が転がっています。ただ、熱意とやり方が必要です。ヨーロッパではこの学校に行かなければいけない、この学校を卒業していなければ行けない、ということがありますが、ここでは、もし賢明で、やりたいことがあれば、そこにはチャンスがあり試すことができるのです。ヨーロッパは歴史や文化、階級をモントリオールに持ち込み、アメリカは機会を持ち込みました。これら二つの世界が一緒になって、モントリオールを作り上げているのです。」

--- バイリンガリズムについてはどう思いますか?

 「違いを尊重することが大切だと思います。もちろん多くの人がフランス語を話しますし、フランス語を守ることは大切だと思います。歴史があるし、それもまたモントリオールを異なる存在にしている要因だからです。ただ、私が好きではないのは、人々がギャップを作り出している場合があることです。英語、フランス語を話す人々が、同じ地域にいるのにそれぞれの言語でしか話をしなかったり、それぞれの言語を話す人だけとしかつきあわなかったりすることがあります。それが、時々カナダ、モントリオールの不安定さを生み出していると思うからです。でも、違いを認めることは大切だし、フランス語を守ることも大切だと思います。特にモントリオールは英語を話す環境に囲まれているので、フランス語を守らずにいたら、数年で英語だけを話すことになるでしょう。そうなったらとても悲しいと思います。なぜなら、他の地域と異なることは美しいことだと思うからです。

 僕らは、テレビ局も英語とフランス語の両方があるし、小さい頃から英語とフランス語の両方に慣れ親しんで、両方の言語環境に囲まれているので、多くの人々がどちらも話すことができます。もちろん、多くはどちらかの言語の方がより流暢ですけれども。でも、それによってより人々が面白くなると思っています(笑)。それに僕らはとても人間が好きです。ケベックの人々は人に会うのが好きだし、とてもフレンドリーで、人を家に招待したり、歓迎したりするのが好きです。マイナス25度以下の真冬でさえ、人々は暖かです。」

--- 理由はなんだと思いますか?

 「そうですね、もしかしたら僕らは人を受け入れる歴史があるからかもしれません。昔から多くの外国人が来ましたし、異なる精神的、文化的な背景に囲まれています。もしモントリオールで10人の人間が集まったら、ここで生まれたのは多分2人くらいでしょう(笑)。世界中から人々が集まっているし、僕らはそれに慣れ親しんできました。人々を歓迎するという歴史があります。もしかしたらまだ人口が足りないからかもしれませんね。ケベック州はたったの約7万人ですから(笑)。東京は12〜15万人くらいでしょう?」

--- 日本にも旅行されたそうですが、日本をどう思いましたか?

 「とても興味深いと思いました。人々の精神性はこことはとても異なっています。東京に一週間ほど滞在したので、長期間ではなかったのですが、すべてがとても速いスピードで動いていました。人生全てがとても速いスピードで動いていて、またすべてがテクノロジーに近く、だれもがちょっとした機械?を持ち歩いていました。それはとても面白かったです。僕自身、そういうものが好きですし。でも、モントリオールにはもっと機会があると思いました。何かをしたければ、一生懸命になって熱意を持ってすれば、可能だということです。ここで何か新しいことを創造したければ、誰も止める人はいません。モントリオールにはフェスティバルがたくさんあるし、夏にはストリートのあちこちでパフォーマンスが常に行われていたり、人々はよくショウを見に行ったりします。それが僕らの日常生活の一部なのです。日本人の精神性はとても成功主義だと思います。学校に行き、一生懸命働きます。ここでもそういう精神性はあります。もちろん、でもよりトーンダウンしています。人生を楽しみ、一生懸命働いて、でも自分のための時間もとりなさい、という考え方です。それはとても大切なことだと思います。ここでは仕事のことだけを考えていなくても成功することができるのです。一生懸命働けるし、成功できるし、素晴らしいキャリアをつむことができる、でも同時に、自分の時間も持て、人生を楽しむことができ、家族との時間も楽しむことができる。よいミックスだと思います。人生、仕事、情熱とのバランスです。 」

--- cincoはスペイン語で「5」という意味ですよね?なぜそのような名前にしたのですか?

 「僕らの会社はアートとビジネスの接合点です。多くの人々は仕事に行き、5時に仕事が終わります。だから、cinco、5は仕事、つまりビジネスと仕事の後の新しいことの発見との境目なのです。また、自分以外の要因に支配されている世界―仕事と、自分の持っているものにのみ支配されている世界との境目なのです。また、ロゴが手の形なのは、何をするにも新しいことを始めるにも夢を叶えるにも、最初に手を動かすことから始まるからです。たとえば家を建てるにも手を動かして始めないと何も始まりません。そこから来ています。 」

--- なぜスペイン語なのですか?

 「ひびきがいいからです(笑)。」

--- Nicolas氏のエネルギー、モチベーションはどこから来るのでしょう?

 「僕はハッピーガイで、僕は自分のしたいことが分かっている。でも一番重要なことはしっかりとしたバックグラウンドを築くことだと思います。仕事の上でも学術的なことでも人物的にも。たくさん旅行をして、いろいろな仕事を一生懸命やって学校で学ぶ、それをしっかりやれば、世界はあなたのものです。もし何か始めてそれがうまくいかなければ、これはうまくいかなかったんだ、他のことをしよう、他の方法でやろう、とするだけです。僕はただ、新しいことをするのが好きだし、それを試してみることが好きだし、人と異なることをするのが好きなんです。僕は新しいことを作り上げることで満足感を得ることができます。新しいことを作り上げる、それが僕のやりたいことなんです。」

--- cincoの今後についてはどうお考えですか?

 「僕らは急成長しています。たくさんのスタッフを募集していますし、僕ら自身やっていることをとても楽しんでいます。私生活の充実と情熱について話をしているとき、僕ら自身がその内容を楽しんでいるのです。また、僕らのやろうとしていることを具体化・結晶化して、将来は他の国に進出しようと考えています。でも例えばヨーロッパに進出するのは5年くらい先を見積もっています。現在は半年に一度トロント、一年に一度ニューヨークでイベントを行っていますが、ほとんどのイベントはケベック内です。」

多文化が同時に存在するモントリオールで、多文化的背景を持った彼が始めた新しいこと。彼の言うように、これからもどんどん新しいことがモントリオールで生まれ、育ち、世界に輸出されることを期待したい。

取材・文:後藤さおり
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