"CATMAN" "Oh!スーパーミルクちゃん" "Petro Canada TVCM"などのキャラクターを一度は眼にした人も多いだろう。これらの作品を手がけたのは青池良輔さん。彼は、山口県下関生まれ。大阪芸術大学卒業後、映画プロダクションの就職を機に8年程前からモントリオールに移住。彼の最初のアニメーション作品である"CATMAN"Atom shock wave.k.kの当時のプロデューサー平澤真一氏(現Creative Artists lnc代表)の眼に留まり、それ以降ウェブ、TV、DVD等にFlashを用いてアニメーションの制作を行っている。この他にも新聞広告や試写会のポスター、フライヤー等でも活躍している。
 インタビューはSt-Denis沿いに面している彼のオフィスで行われた。白と赤でシンプルな部屋にはフィギュア、日本のビデオや本等が多くあり居心地の良い落ち着いたお部屋だった。彼の幾つかの作品を見ながら、インタビューは始まった。

--- 何故Flashの技術を使ってアニメーションを作ることを試みたのでしょうか?

 「友人の紹介でマクロメディアのプロデューサーと知り合うことになり、その人によってFlashの存在を知りました。Flashのソフトにより、アニメーションの書き取りや音楽も付けられ、ショートフィルムのような作品が家のパソコンで作成できるという衝撃的な事実を知りそれがきっかけですね(笑)それから沢山作り始めました。」

--- 一つの作品に費やす時間というのはどの位なのでしょうか?

 「作品によって全然違いますね。去年ラサールカレッジのTVコマーシャルを作ることになって30秒間だったのですけれど、4〜5週間は掛かりました。厳しい時は仲間と一緒に共同制作をしています。」

--- 共同制作の仲間というのはモントリオールの方ですか?

 「一緒に働いているDana Rempelはもちろん、こちらの友達にも音楽やFlashの基本的な作業等を 手伝ってもらっています。 」
今年のオリンピックを観ていた方は誰もが知っているだろう。Petro CanadaのCMも彼は手がけている。いくつかの雑誌や新聞でも取り上げられている。
「アニメーションツールとして最近Flashを使う人というのが増えてきています。それはアニメーションプロダクション出身ではなくても作ることが出来るからなのですよ。そして互換性が高いのです。CATMANに関しても日本では劇場、TV、ネット、携帯等で公開されたのですけれど、携帯だけはさすがに字が小さくて読めないと言われたのですがそれ以外は特別に何かしなくてはいけないというのはなかったですね。実際問題アニメのFlashをあまり仕事にしている人がいないのですよ。Flashを使用することによって作家として作品を作った後ネットに5分程で載せる事が出来るというのは有難いですね。」

--- 仕事について日本でとは考えられた事がありますか?

 「日本は忙し過ぎるかな。仕事の量的にこなせなくなってしまうと思います。日本では流れるプールのように流れに巻き込まれてしまい自分の立っている立場が分からなくなってしまうような気がしますね。でもここに居ると日本が少し遠くから見られるという利点もありますし、あまりテレビも見ないので入ってくる情報が少ないというのが良い面として取り上げられますね。」

--- 作品においてのインスピレーションはどこからくるのでしょうか?

 「学生のときは中国映画の奥の深さに惚れて沢山見ていました。何処か行く際にも常いくつか何か考えています。一つの作品を作ることによってどんどん欲というのはでてきますね。落語を元にしたエピソードを作ったり、ネタを考える際に落語を読んだりはします。」

--- 今後モントリオールの生活を続けていかれるのですか?

 「モントリールには長く住みたいと思っています。National Film Board of Canada (NFB)というカナダ文化庁映画課、アニメーション課があり、そこに登録しようかと考えています。基本的にカナダ映画というのは映画庁が作っている国営映画なのですよ。映画というのは文化活動として支援しなくてはいけないことですし、経済の活性化と税金の還元に至っている面があるのです。それでも純粋なカナダ映画は年間25本位しかないのですけれど、それはカナダ政府と州(モントリオール・ケベック等)がお金を出しているのです。きちんとそういう制度があって守られている国でしたらそこに入り込みたいなと思いますね。カナダはアニメーションがとても有名な国です。ある時期短編アート作品のアニメーションというとカナダでした。そしてアニメフェスティバルもオタワで行われますよね。これは世界4大の一つなのです。来年の目標なのですが僕のやっている仕事というのは文化庁、デジタル産業の援助が得られるのです。デジタルコンテンツ開発というのがコンピューター業界ですとケベックはとても強い場所で、CG等の技術は本当に進んでいるのです。最新の技術を開発したいという事に大変力を入れています。その様な所で働く事を目指して行きたいですね。」

--- お若いときから漫画等は読まれていましたか?

 「コミックボンボン、ヤンマガ等は読んでいました(笑)僕の叔母が青池保子さん“エロイカより愛を込めて”の漫画家なのです。」

--- 作品を考える際に何か気をつけて考える特別な点はありますか?

 「僕の仕事は個人でやっているクリエイティブというのと企業との繋がりの真ん中にいることで有難い事に融通のきく場所なのですよ。作品についての裏切りというのは考えますね。その人、物そのままと言うのは出来るだけ考えないようにします。ステレオタイプにならないように人のリアクションに関してそれを伝えつつも期待通りの答えにならないようにというのは常に考えています。」

 青池氏は2年前に元薬剤師の清子さんと結婚されて今は彼女も制作に協力している。効果音や小道具作り等は彼女の担当だ。その他ディナ・ランボーは彼の良いパートナーである。青池氏は変化と不変の両方をたずさえていつでも見物側の方を向いている。だからその作品は世代や時間を超えて私達に共感を与えてくれる。そして尚且つ彼独特の毎回違った作風で常に新鮮さを感じさせてくれる。

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取材・文:水島真理
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