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 ベトナム生まれ、モントリオール育ちの若手ファッションデザイナー、duyのコレクションが4月27日、シャーブルック通りの教会で行われた。今回のテーマはl'abysse(底知れない深淵、巨大な暗黒の空間という意味)。そんな彼に彼の考えるファッションと今回のコレクションについてインタビューした。

 シンプルで繊細かつ独創的な洋服を作り出す、私の中でのduy像と実際の彼とはかなりかけ離れていたものがあったものの、会って一瞬にして彼の人懐こい人柄でそれまでの緊張が吹っ飛んでしまった。 思わず裸の大将を思わせる大柄な彼からどのようにしてあのような素敵な洋服が作り出されるのだろうと思ったのもつかの間、ファッションのことを話しだすと、そんな疑問も一気に消えた。

 まずは4月に行われたコレクションについて話を聞いた。今回で4回目となるショーは、モントリオールの友達にお別れを言うために催されたと聞き、びっくりしてしまったが、彼のファッションに対する思いを聞くと頷かずにはいられなかった。2000年にモントリオールのLaSalleカレッジでのファッションデザインの勉強を終え、その後ロンドンに2年間住み、昨年の春にモントリオールに戻ってきた。以前は、モントリオールのファッションウィークでファッションショーをしたり、旧市街地に独自のショップを持っていたが、今ではそれらもすべてやめた。今後の彼のファッションの拠点はモントリオールではないようだ。これまでのモントリオールでのファッションビジネス経験から、彼の目指すファッションはモントリオールの人々の需要には合っていないことが分かり、今後しばらくはヨーロッパで活動する見通し。モントリオールの人々の多くは、流行を取り入れた手ごろな価格の洋服を好み、彼の作り出す、素材やデザインにお金をかけた洋服は残念ながら一般うけしないようだ。

今回のコレクションのテーマであるl'abysseというコンセプトはテレビ番組、ディスカバリーチャンネルで深海に住んでいる、未知の世界の生き物特集を見て思いついたとのこと。海底に存在する生物は、主に透明で血管が光っていて、お互いを食べながら生きている。つまり海底の全ての生物には、少しずつ個々の要素が含まれているということから、今回のコレクションで使われている洋服の素材、ひとつずつが様々な形で他の一点一点に使われながら、連帯性をなしている。生地は全て彼が気に入ったものを少しずつ集めて洋服にされ、今回のショーでの主な色彩であるバイオレットは自ら白の生地を染めるまでに至っている。前から見るとシンプルであるドレスでも、背中に大きなカットがあったり、ドレスであるものの裾を肩にかけるなど、何かしらワンポイント、彼の洋服には大きな驚きが見られる。このショーでは全48点の洋服が披露されたが、当初の予定では60点だったそうだ。通常のコレクションではだいたい30点ぐらいが平均とされる中、48点もの洋服をほんの2ヶ月で彼一人の手によって仕上げられた。

 そんなduyの目下の予定はパリに飛び立つことだそうだ。パリで彼のファッションに大きな展開が見られることを心より願い、お別れをした。いつの日かモントリオール出身のduyの洋服が世界で活躍するのも夢ではないような気がする。

取材・文:和田 良子
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