バレリー・ドゥメインさん。
STRUT MAGAZINEより。
ロシアン・ディスココレクションのプリントより
 例年になく雪の訪れが遅かったものの、ある朝目覚めると一面銀世界のモントリオール。ついにモントリオールの長い冬が始まった。一年の半分近くを雪と共に過ごすモントリオールの人々にとって、冬こそ自分たちの夢への準備期間かもしれない。私をそんなふうに思わせた一人、モントリオールの若手ファッションデザイナー、バレリー・ドゥメインさんを特集したい。

 1997年にラサール・カレッジでのファッションの勉強を終えたバレリーは、その後6年間をモントリオール・ファッション産業の様々な会社でイラストレーターやデザイナーとして働く。1998年には2ヶ月間、ロンドンでインターンとしてファッションデザイナー、ゲイリー・マッコナギーのもとで働く。また、ケベックの若手デザイナーのコンクールで「Mention d' Honneur」という賞を1998年に、「Vêtement Féminin」を1999年に受賞する。2002年ケベック大学でドイツ語の学位を取り、3ヶ月間をベルリンで過ごす。モントリオールに戻った2003年1月、バレリーの本格的なファッションデザイナーとして道が始まった。

 今年の1月から現在に至るまでの彼女の道のりが非常に興味深い。ベルリンから帰ってきて間もない彼女に必要だったのは、まず仕事。しかし、6年間勤めたファッション産業へ戻るのではなく、彼女は独自のビジネスを始めることを決意。まず彼女が出向いたのはCLE (centre local d'emplois)という地元の雇用センター。そこでSTA (soutien pour les travailleurs autonomes)という政府からの若い企業家を目指す人への経済的サポートのことを知る。このサポートを受けることができるのは、過去3年間に一度でも生活保護を受けたことがあり、明確なビジネスプランがある人。このサポートは一年間、生活費が渡され、その間に自分のしたいビジネスの準備ができるというもの。このSTAを獲得した彼女はこのサポートに含まれるSAJEという組織の3ヶ月間の授業を取る。この授業では様々な分野でビジネスを始めたいという人々が学び、3ヶ月の授業の中でそれぞれのビジネスプランを具体的に作り上げていく。彼女の場合は政府からの経済的サポートの中にこの授業が含まれているため無料だが、一般の人でも授業料を払えばこの授業を受けることができる。このSAJEからビジネスを始めて成功した人の例に、フィリップ・デュバックというモントリオールのファッションデザイナーがいる。

(c) Valerie Dumaine
(c) Valerie Dumaine
(c) Valerie Dumaine
 彼女のつくる洋服のコレクションにはすべてテーマがある。また、彼女のような若手アーティストとのコラボレーションでコレクションを作っていくのもバレリー流。つまり彼女のデザイン・製作する洋服にコラボレートするアーティストのデザインしたプリントを入れる。

 2004年春夏のコレクションのテーマは「ロシアン・ディスコ(Russian Disko)」。ロシアの美学と宣伝用ポスターからアイデアを得た様子。「ロシアン・ディスコ」のプリントはパープレックス&ロラというファッション/グラフィックデザイナーのミランによるもの。このコレクションでは男性・女性用のストリートウエアが主なライン。モッズ的な外見に新しい流れ(細部に使われる黄色や赤の鮮やかな色によって黒・白・カーキを引き立てるというもの)を組み込んでいるのが特徴。

 サイズはどちらかといえば小さめ。男性ものにXSというサイズがあるということからも分かる。ゆったりとしたジャージー素材であっても、きちんと縫製されていて体のラインをきれいに出したセクシーな仕上がり。どの洋服も機能的であるだけでなく、アーティストとコラボレートしたプリントが他にはない彼女の独創性をあらわしている。また、カジュアルなスタイルであっても全体的におしゃれだ。近い将来、彼女の服をモントリオールのどこかで見つけることができたらいいのに・・・と思った。

 若いデザイナーとしてのビジネスを始める難しさを痛感しているバレリーだけに、才能はあるものの、作品を発表する機会の少ないアーティストと協力してひとつの新しいものを作り上げている。また、ダ・ユニオンという若いアーティストで作られている組織にも参加していて、互いを助け合い、それぞれの作品を発表する機会を作っている。

 現在バレリーは3ヶ月間の授業を通して独自のビジネスプランを練り、アトリエのある自宅で2004年春夏コレクションの洋服製作に追われる毎日を送っている。次のコレクションで発表される洋服はモントリオールのいくつかのブティックに試験的に置かれる予定だが、その後は彼女の頑張り次第。自分を多くの人に知ってもらうことに積極的なバレリー。モントリオールのファッション雑誌、ストラットに彼女の服が取り上げられたり、モントリオールのミュージシャンSAS-31の衣装を手がけたりしている。また今年の夏にモントリオールの旧市街地で行われたシンコ・ファッション・セレブレーションにライブ・パフォーマーとして人々の前で実際に洋服を作ることもした。

 今26歳の彼女は目を輝かせながら、「ファッションデザイナーになる夢は10年以上暖めてきたもの、物心ついたときから25歳ぐらいに夢を実現するだろうと思っていた」と語ってくれた。


Valerie Dumaineのウェブサイト:www.valeriedumaine.com
CLE/STAに関する情報:www.infoentrepreneurs.org

取材・文:和田 良子
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