木々が一斉に新芽を出し、葉が勢い良く繁る新緑の季節となりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?

 今回訪れたのは La Maison de l'architecture du Québec (MAQ)。以前何回かご紹介した事があるので、記憶されている方もいらっしゃると思います。ご存じない方の為にちょっとおさらいをすると、La Maison de l'architecture du Québecは今から10年ほど前にMonopoliというアートギャラリーがもとになって設立された機関です。建築と都会生活の考察を深める事と、それらに関わる多種多様なアートを発信するため、一年を通して様々な活動を行っています。

 現在開催されているのは、「Lab-École」。題名はプロジェクトの主体となっている非営利組織Lab-Écoleから来ており、今回の展示では彼らの活動の記録を見ることができます。このLab-Écoleという組織の活動自体ですが、一口に言えば、物理空間、健康、食の3つの観点から、現代のケベックにおける学校のあり方を問うことが目的です。その背景にあるのは、ケベック州の公立学校における自主退学率の高さ。 貧困、家庭内暴力のほか、学習障害のある生徒への対応不足、教育そのものへの関心の低さなどがその理由として挙げられますが、特に男子生徒の自主退学率はカナダでも群を抜いています。この社会問題への取り組みとして、2017年にLab-Écoleが発足され、生徒一人一人が有意義な学生生活を送るために学校そのものを見直し、現代の教育に合った空間を作ること、そして何よりも、実際にその空間を使う生徒たちが夢を育めるような、活気ある空間作りを提案する活動が始まったという事です。

 この活動にはPierre Thibault (建築家)、 Ricardo Larrivée (料理人) Pierre Lavoie(トライアスリート)の地元の著名人3人がスポークスパーソン兼役員として参加しているほか、教育委員会の委員、州議員、大学の研究者、実業家、教育省の関係者、市の職員など、多方面からのエキスパート達が参加しています。今回の展示では、そのエキスパートたちが実際に学校に通っている生徒とその親、そして現場の学校関係者への聞き取りを基に、現在の学校の空間の問題点をまとめたパネルや、ワークショップでの意見交換を基に作成、厳選された「理想の学校空間の模型」も多数展示されています。現実になったら本当に学校に行くのが楽しみになるのではないかという模型が沢山あり、空間作りの可能性と大切さについて深く考えさせられました。

 なお、展示室にはLab-Écoleの活動をまとめた本「Lab-École, Penser l’école de demain」もあり、訪れた人がその場で読むことができるようになっています。興味のある方はぜひ手にとってみてください。

Lab école: http://www.lab-ecole.com


文/Text畑山理沙Risa Hatayama
Photo: Courtesy of La Maison de l'architecture du Québec
ギャラリー:La Maison de l'architecture du Québec
所在地:181 rue Saint-Antoine Ouest
スケジュール:水〜金:13時〜18時 土〜日:12時〜17時
メトロ:Place-d'Armes
ウェブサイト:HP
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