今回のギャラリーレポートはArt Actuel 2-22の3階にあるLibrairie Formatsからお送りします!

 Librairie Formatsは、Regroupement des centres d'artistes autogérés du Québec (RCAAQ)というケベック州のアーティストランセーターや関連機関及びアーティストのネットワークを司る組織によって一昨年の3月に設立された、現代アート、ヴィジュアルアート関連の本を専門に扱う書店です。基本的には書店ですが、ワークショップやレクチャー、更にはパフォーマンス等も催される多目的な場所でもあります。さてこのLibrairie FoRMaTSでは昨年末から毎月Format Xと言うイベントを開催していて、アーティストが自身の活動に沿ったテーマを基に店内の出版物を選び、それが毎月店内で展示されると言う趣向です。

 さて現在このFormats XではFrank Traynorによる『The Perfect Nothing Catalog』が開かれています。実はこの展示名、もともとTraynorがブルックリンで開いている、色々なアーティストが手作りした風変わりな雑貨を販売しているThe Perfect Nothing Catalogという店と同じ名前だそうで、今回の展示では文字通り「nothing (ness)」をテーマにして選ばれた様々なジャンルの本や漫画等の展示となっています。選ばれた20冊程の本は、書店の真ん中に鎮座している灰色の生地のかけられた低めのベンチに並べられており、そのすべてにクラフト紙のブックカバーがかけられています。日本では書店で本を購入すると、紙のブックカバーを掛けるというサービスが存在するのでさほど風変わりな事ではないかもしれませんが、そう言う本が何冊も並べられていると言う事はカナダでは極めて稀なので不思議な感覚を覚えるのは確かです。これは日本文化に置ける「間」という考え方にインスピレーションを受けた為だそうで、何も無い余白などのスペースや一瞬の静寂が全体に与える影響を表しているそうです。たぶんTraynor的解釈のこの「間」のお陰で「本を手にとって開いて内容を確認したい」と言う衝動に駆られるのかもしれません。さて実際に本を手に取ってみると、草月流の三代目家元、勅使河原宏による草月流の生け花の本やジャン=ポール・サルトルの『存在と無』、ジャン・ボードリヤールの『物の体系』のほか、ジム・デイビスの新聞漫画『ガーフィールド』なども含まれており、Traynorの折衷主義的趣向が伺えます。個人的に面白いと思ったのは本の裏表紙に「consultation」とシールが貼られている以外の本は、実際に購入出来るという事で、選ばれた本の内容よりも、この作品の展示されている書店の中で本を展示し、しかも場合によっては買う事も出来ると言う、作品なのか単に売り物なのかと言う曖昧な状況の方に興味をそそられました。


文/Text畑山理沙Risa Hatayama
Photo: Courtecy of Librairie Formats
ギャラリー:La librairie Formats
所在地:2, rue Sainte-Catherine Est, espace 302
スケジュール:火:11時〜17時、水〜金:11時〜19時、土:12時〜17時
メトロ:St-Laurent
電 話:514-842-5579
ウェブサイト:HP
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