Georges Audet "Merlin l'enchanteur" (2003) Georges Audet "Merlin l'enchanteur" (2003) Ghislaine Charest "Aimez-moi d'un amour d'enfant" (2001) Ghislaine Charest "Aimez-moi d'un amour d'enfant" (2001) Ghislaine Charest "Tout près de Vigée-Lebrun" (2001) Jonathan Woods "Farwest" (2011)（左） "Level Crossing" (2009)（右）

　さて、今のこの季節、ただ暑いだけでなくコマーシャルギャラリーと美術館を除くアートセンターの大半が夏期休業に入っています。そのためこの時期のギャラリー探しに毎年苦労しますが、今回は幸運な事にl'édifice Belgo５階にあるコマーシャルギャラリーJoyce Yahoudaでグループ展を開催中！とのことで早速見学に行ってきました。

　この「Once upon a time/Il était une fois」と名付けられた今回のグループ展にはGeorges Audet、Ghislaine Charest、Milutin Gubash、Harlan Johnson、Céline B. LaTerreur、Jean-Marie Martin、Andrea Szilasi、Irene F. Whittome、Jonathan Woodsの９人が参加しており、彫刻、写真、ビデオ、ドローイングなど色々な作品から構成されています。「Once upon a time/Il était une fois」つまり日本で言う童話やおとぎ話などの出だしの「むかしむかし」と言うフレーズがそのままタイトルになっている所から想像できるとおり、おとぎ話に出てくる様な不思議で魔法がかった世界感をもった作品を集めた展示会となっています。

　なかでもGeorges Audetの「Merlin l'enchanteur」はその名の通り、中世の魔術師マーリンの伝説を題材としており、鏡や手袋など古典的且つ儀式的なモチーフを組み合わせて「魔法」と言う見えない力を上手く視覚化させた作品だと思いました。 Ghislaine Charestは「Aimez-moi d'un amour d'enfant」と「Tout près de Vigée-Lebrun」の２作品を出品しているのですが、「Aimez-moi d'un amour d'enfant」の方は井戸の様な木製の大型の筒の中を覗き込むと筒の底にジャン・コクトーの白黒映画「美女と野獣」に出てくる野獣の顔写真のライトボックスを観れるという趣向になっています。まるで覗き込んだ私たちの真の姿は「野獣」なのだと言わんばかりで、感慨深いものが有りました。もう一方の「Tout près de Vigée-Lebrun」と言う作品は、パリのルーブル美術館に展示されている有名な自画像の前にてディーベアを置き、写真に収めてた「Tout près」というシリーズ中のひとつで、タイトルでも分かるように１８世紀のフランス人女流画家、エリザベート＝ルイーズ・ヴィジェ＝ルブランが描いた「娘と一緒の自画像」の前に縫いぐるみを置いて撮影した物です。この絵が描かれた当時には無かった″縫いぐるみ″がフレーム内に存在するだけで、何故か不意に想像力が掻き立てられ、この絵のからいろいろな物語が引き出されてくるから不思議です。ルブランのこの自画像自体も視線が直接私たちに向けられているので、なんだ余計に絵の中の彼女がやさしく語りかけてきそうに感じられました。そしてもうひとり気になったのは、Jonathan Woodsの「Farwest」と「Level Crossing」と言う写真作品。各地を旅をしながら架空のストーリーを生み出し作品にしてゆく日本人アーティスト島袋道浩氏の作品を彷彿とさせ、写真からちょっと不思議な物語が産まれて来そうな予感を漂わせる面白い作品でした。