On the Surface (detail)
On the Surface (animation still)
On the Surface (animation still)
 今回のギャラリーレポートは、MAI (Montréal, arts interculturels)からお送りします。

 モントリオールのダウンタウンとPlateau-Mont-Royalの境目にあるこのMAI (Montréal, arts interculturels)は、異文化交流やそれをテーマとしたアートの発展や促進などを目的に1999年に設立されました。建物内にはギャラリー、劇場、2つのリハーサル室、カフェ等が完備されており、一年を通じて作品展、コンサート、ダンス、演劇など様々な催しが行われています。

 現在MAIのギャラリーで開かれているのは、ガイアナのジョージタウン生まれで現在はバンクーバー在住のLucie Chanによる『On The Surface』という、文化に属する事と自己の空想文化喪失の狭間に揺れる不安をテーマにしたドローイングと、それをベースに作ったアニメーションなどのインスタレーションです。この展示は、主題でもある「On The Surface」と「Yearning to See」 という2つのインスタレーションから構成されています。

 入り口を入って直ぐに観ることができる「On The Surface」は、ChanがハリファクスとバンクーバーのCraigslist(注:求人、不動産情報などを交換出来るコミュニティサイト)に載せた広告に応えてくれた人々に語ってもらった個人の文化体験をベースにした作品で、天井から吊るされた無数の顔のドローイングを切り貼りして作った巨大コラージュやプロジェクターから映し出されるアニメーションループ3つ、壁に設置されたドローイングのコラージュの中に埋め込まれた小さなLCDモニターに映し出されるアニメーションループ2つから構成されています。まずコラージュに関してですが、スケールの大きさから非常に目を引くのですが、残念な事に近くに寄ってみると貼りあわせるのに使ったグルーガンの糊の塊や糸が各所に見られ、せっかくの作品が粗雑に見えてくる感じがしました。アニメーションの方ですが、どれも紙に描いたモノクロのドローイングをライトボックスの上で撮影してアニメ化したという事もあってか、ややピンぼけ気味。でもそのおかげで、思い出の抜粋を見ているようなノスタルジックでセンチメンタルな作品に仕上がっています。しかし、全体的にそれぞれの作品がとても短絡的で、描かれている内容に入り込む前に終わってしまう為少し物足りなさを感じました。

 一方で展示室の左奥に設置されている「Yearning to See」はChanがカナダ人やカナダ移民、海外からの訪問者から受け取った10個の「文化的教訓」を基に作ったドローイングで、ドローイングその物とドローイングを見た参加者一人一人のリアクション(顔の表情のみ)を両方アニメーション化したもの。室内では2つのプロジェクターが向かい合わせに設置され、片方に教訓が、そしてもう片方にリアクションが映し出される趣向になっています。二つのアニメを遠巻きに同時に見ると、なんとなくそこに二つのアニメーションの対話の様な物が見えてくるのですが、一つ一つバラバラに見てしまうと、顔の表情しか映し出されないスクリーンよりも変化に富んで、内容が濃くストーリー性の有る10個の教訓のアニメーションに目が行ってしまい、リアクションのアニメーションの方の比重が軽すぎて存在感が希薄になってしまっているように見受けられました。


文/Text畑山理沙Risa Hatayama
Photo: Courtesy of MAI
ギャラリー:MAI (Montréal, arts interculturels)
所在地:3680, rue Jeanne-Mance, Bureau 103
スケジュール:火〜土:12時〜18時
メトロ:Place-des-Arts, Sherbrooke
電 話:514-982-1812
ウェブサイト:HP
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