(c)Janet Werner
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(c)jake moore
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(c)BGL
 街からようやく雪が消えた始めたモントリオール。凍てつく寒さから守ってくれた重い外套を脱いで、うららかな春の日差しのなかを散歩していると、家々の軒下に小さな花々がちらほら咲き始めているのが見受けられます。

 さて、そんな春の陽気に誘われて今回やってきたのは、ダウンタウンの西外れにあるAtwater Marketにもほど近いコマーシャル・ギャラリー、Parisian Laundry。このギャラリーの名前は、建物が元々Parisian Laundryという旧洗濯工場だった事に由来しています。1929年に建てられてから50年ほど洗濯工場として操業を続けてきましたが、厳しい経済情勢の中で閉鎖に追込まれ、長い間、廃墟となっていたそうです。しかし、2000年に現オーナーがこの建物を買い取り、建築家たちと幾何度も試行錯誤を重ねて、昔の面影を保存しつつアート・ギャラリーとして見事現代に蘇らせました。その功績が認められ、昨年、モントリオール市から文化遺産強化賞を受賞したほどです。地下一階と地上2階から成るこの美しく広々としたギャラリーは、一年を通して専属作家の作品展や企画展などが開かれており、現在はモントリオール在住の二人の女性アーティストJanet Wernerjake mooreの作品展をみることができます。

 1〜2階の展示場ではParisian Laundry専属の画家、Janet Wernerの「Who's sorry now?」と言う題の、どことなく空虚な表情を浮かべる現代女性の大型肖像画を中心にした展示が開かれています。キャンバスに描かれる肖像と縫いぐるみなどの可愛らしいオブジェの羅列も魅力の一つで、この作家独特のちょっとキッチュで現代人の「美」の定義を風刺した様な世界を存分に堪能することができます。

 階段を下りて地下の展示室に進むと、招待アーティストのjake mooreの「pet」と題された、インスタレーション作品を見ることができます。展示室の入り口付近では蜜蝋で作られたゾンビの様な不気味なウサギに迎えられ、奥に進んでいくと、プロジェクターから映し出される無音のモノクロビデオ画像の光に照らし出された白く大きな物体が見えてきます。近くに寄ってよく見てみると、その表面は無数の白い羽に覆われており、暗闇に佇むその姿は、まるで巨大な鳥か飛行船と言ったところ。そして視線を床の方に落としてみると、そこには白熱球で煌煌と照らされた枯れたバラの花束が縦に配置された何ともミステリアスな感じの作品でした。

ちなみに余談ですが、2階の展示室には物憂げな表情で佇む一頭のボクサー犬(剥製)が展示されているのでが、これはJanet Wernerの作品ではなく、Parisian Laundry専属の3人組作家BGLによる作品だそうです。背中部分に銀色の四角い鋲が取り付けられ、ロック調の仕上りと、義眼が醸し出す表情の切なさとのコントラストに、ついつい眼が釘付けになってしまいました。

文/Text畑山理沙Risa Hatayama
Photo: With kind permission from Parisian Laundry
ギャラリー:Parisian Laundry
所在地:3550, rue St-Antoine Ouest
スケジュール:火〜土:12時〜17時
メトロ:Lionel-Groulx
電 話:514-989-1056
ウェブサイト:www.parisianlaundry.com
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