(c)Catherine Bolduc
(c)Catherine Bolduc
(c)Catherine Bolduc
 今回のギャラリーリポートは、ちょっと趣向を変えモントリオール北隣の街Lavalからお送りします。

 地下鉄オレンジ線の最北端、Montmorency駅から歩いて10分ほどの場所に位置するMaison des arts de Lavalは、1986年に設立されたLaval市営の芸術文化センターです。この建物の一角にあるLa Salle Alfred-Pellanは、20世紀を代表するケベックの画家Alfred Pellanの功績を讃えて命名された展示室で、ビジュアル・アートの専門の展示に使われています。現在は地元ケベック州出身の作家Catherine BolducMes châteaux d’airと言う企画展をみることができ、Bolducの過去10年余りのインスタレーション、ドローイング、彫刻作品等を一堂に集めた作品展で、彼女独特の世界観から産まれた、ちょっとダークで幻想的なおとぎ話のような世界を、余す所無く堪能出来る構成となっています。会場の壁に多数設置された作品を紹介する文章も、キュレーターとの会話で出てきた作家自身が語った作品に対する思い入れなどのコメントの抜粋を文章化しただけあって、展示全体を通じて作家の世界観をより深く把握する事が出来る上、文章のレイアウトや字体も古典的なおとぎ話や童話をたくみに引用したりと、細部までこだわりが見えて面白いと思いました。

 さて、作品の方ですが、数有る中でもとりわけ私の印象に残った一つに、入り口を入って直ぐ左のスペースに設置された、Chronique des merveilles annoncéesと言うビデオ作品があります。壁に映し出された映像には、ピントのずれた動く物体が3つほど交互に現れ、それを背景に4列に並べられた色々な言葉が数珠つなぎに画面を横切っていくという趣向。 また、同スペースの天井にはミラーボールが一つ取り付けられ、反射したプロジェクターの光がチラチラとを舞う中、壁に投影されたビデオの真ん中辺りにミラーボールが陰を落とし作品構成の一部となります。一見奇妙に見えるこの陰が、私にはビデオ、空間、そして空間に存在する「時間」を結ぶような役割を持つかのように見うけられたため、作品全体としての構図がより新鮮で魅力的に見えました。それから、展示室右奥にひっそりと佇む白いドアの向こうで体験出来るLe jeu chinoisというインスタレーション作品は、鑑賞者が眼に突き刺さる様なストロボスコープで照らされた強烈な光の中を這うように進んで行くのが面白い作品。部屋の奥には湾曲したアクリル板鏡が設置されており、強烈に点滅し続ける光に耐えながら眼を凝らして鏡の表面をみてみると、そこには無数のストローが荊の様に鏡をびっしりと覆っている・・・といった趣で、古典的な童話などの原作の結末がかなり残酷なのと同様に、この作品も良い意味で最後まで徹底的に残酷さを醸し出しています。余談ですが、このインスタレーションのなかでしばらく眼を閉じてみたのですが、激しい光の点滅が太陽光に手をすかした時の様な役割を果たすので、瞼の血潮が面白いほど鮮明に見えて、この作品との面白いつながりを作ることができ、自分なりにより一層作品を楽しむことができました。興味のある方はぜひ会場に足を運んで、実際に体感してみて下さい。

展示は4月11日まで。

文/Text畑山理沙Risa Hatayama
Photo: Paul Litherland
ギャラリー:Maison des arts de Laval
所在地:1395 boul. de la Concorde Ouest, Laval
スケジュール:火〜木:13時〜17時 金:9時〜12時/13時〜20時 土〜日:13時〜17時
メトロ:Montmorency
電 話:450-622-4440
ウェブサイト:www.info.ville.laval.qc.ca
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