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まず、ギャラリー入口に隣接しているメイン会場ではJeanne Dunningのビデオ、写真等の作品を鑑賞することが出来る。製作された年月が異なる作品を集めたこの展示だが、全てに女性の肉体、皮膚等の変貌や崩壊、肉体と自己との関係がテーマとして扱われているので非常に一貫性が有る。たいがい芸術作品の中で魅惑的又はグロテスクな物として扱われ易い女性の体だが、そういった固定的な枠にもはまらない特有の表現方法に感銘を受けた。日常と言う設定の中で繰り広げられるちょっと怪奇なこのDunningの世界。中でも、肌色の巨大風船の様な物の中に液体をつめた不思議な物体にベットの上で服を着せていく行程を映す“Getting Dressed”と 女性が体から薄皮を剥いでいくのを映し出す“Extra Skin (Subtracting)”というシンプルだがインパクトの強いビデオ作品に足が釘付けになった。 一方のSamuel Beckettの作品は、中ニ階のそのまた奥にある映写室で鑑賞することが出来る。今回展示されている“Not I”と題されたこの白黒ビデオはBeckettが‘72年に書いた脚本をテレビ用に映像化した作品。暗闇で照らされた口、その名も“Mouth”という人物が折りなす独白劇で、人間の絶え間ない自己への問いかけからくる陥落、失望、不条理等がテーマだと言う。 照明の無い暗い室内では口だけが設置されたテレビのスクリーンに映し出され、 女性の無気味な囁き、叫び、狂笑が響く。台詞がもともと断片的に書かれている上、かなりの早口で演じられているため全てを聞き取るのが困難ではあるが、これがこの作品から伝わる不安定で切迫した感情の強烈さを創っている要因といっても過言ではない。 鑑賞し終わってから備付けの台本のコピーを読んでみて改めて“Mouth”が何を伝えよとしていたか、そしてその心の闇の深さについて考えてみるのも面白いだろう。
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文/Text:畑山理沙/Risa Hatayama | |||||||||
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