新年明けましておめでとうございます!昨年10月から始まったギャラリーガイドは、私にとってアートをじっくりと見つめる素晴らしい機会となりました。本年も楽しんで書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 2007年の一本目は、Saidye Bronfman Centre for the Artsに併設されているLiane and Danny Taron Galleryから。このアートセンターにはギャラリーの他にアートスクール、劇場、青少年会館、などがあり、ジューイッシュコミュニティーセンターの施設のひとつである。馬の頭の立体造形が目印の立派な建物で、アートスクールでは地元の現役アーティストが講師を務め、絵画、彫刻、デザイン、写真、版画、ジュエリーなどが学べる。興味のある方はアートスクールのページへ。

 Conceptual Cartographies展は、五名のカナディアンアーティストによるグループ展。美術館の一室のような空間に展示タイトルにのっとったアーティスト各々の概念的地図を表した作品が展示されている。会場に足を踏み入れてまず目に入ってくるのは、左手の大きな壁一面に鮮やかなオレンジの蛍光ペンで描き込まれた無数の線。離れて眺めると、世界地図状の線の集まりが二つ、ミラーイメージで描かれているのが分かる。一つは実際の世界地図の国境だけを抜き出したもの、もう一方は主な河川だけを描いたものだという。この世界に、二つの異なる根源によって刻まれた「境界線」が、そこはかとなく似通って見えるということに気付かされる。バンクーバー在住のアーティストAntonia Hirschが、着眼点を変えて改造する地図によって示唆しようとしているのは、地球規模のポリティカルなテーマに違いない。

 右手の壁にはこれまた大きな壁面いっぱいに、黒い粘着テープでたくさんの線が引かれ、市街地の地図の様相を成している。これはトロントから参加のSandra Rechicoによる「Mayシリーズ」からの一点。2003年から06年の五月におけるアーティストの行動を線で記録したもの。昨年の9月からトロントで展示された同作品は、シリーズの最終項として、期間後にギャラリーのスタッフによって剥がされ、丸められたテープまでが「五月の名残り」という作品として扱われたという。私は個人的に、そのアイデアはちょっと、、、と思ってしまった。コンセプトと、そして作家と作品の関係に重点を置き過ぎているのでは?ひとりよがり感が漂う。これと同様の感想をもう一人のトロントのアーティスト、Gwen MacGregorの作品にも持った。彼女の作品はGPS(全地球測位システム)とコンピュータを用いたという手法の違いこそあれ、アイデアは前述のRichicoと同じ、自身の一定期間の行動を逐一記録し、線の堆積としてモニター上で見せるというもの。ニューヨークでの行動とトロントでの行動が一つの画面上にそれぞれ描かれていく作品があったが、どうせならば似たり寄ったりの大都市二つではなく、例えばニューヨークと、ミクロネシアの小島かどこか、全く生活体系の異なる場所での日々の行動範囲の違いを見てみたかったかも。オタワのJuan Geuerの作品群では、mylarというポリエステル材の画面に細い格子状の線がエッチングされており、機械で引かれたような精緻な線のところどころに現れる「ゆらぎ」が心地よい。8点のシリーズのように思われる作品の制作年が、1975年〜78年からいきなり2003年〜04年に飛んでいるのが謎。

 最後に、広い展示室の片隅で二台の小さな小さなロボットが、カタカタと音を立てながらケナゲに働いているのが見えてくる。モントリオールのEric Raymondの作品は、工業技術とそれに影響された自然への思いを表現しているようだ。ロボット達は天井から下げられた機械にマリオネットのように何本もの細いコードで繋がれている。小さなかわいいタイヤを少しずつ進ませると、ボディーの下に仕込まれたエンピツがつたない線を紙の上に描いていく。この線は何か明確な形を描いているわけではないが、何らかの意思が感じられる線ではある。ロボットのすすむ方向を司るのは、人工衛星の画像と、自然界の電磁気が混ざり合った波動なのだという。意義のあるコンセプト、作品そのものの魅力、技術面の面白さ、などなど見所や見ごたえにあふれた作品。コンセプチュアルアートがしばしばコンセプトしかないアートになってしまっているように感じることが多い中で、この「Scribe」のような愛すべき作品に出会えて嬉しかった。何事に対しても、ジャンルやカテゴリーで一括りの評価を下してはいけないことを、改めて感じた。

Conceptual Cartographies展は1月28日まで。  

文:本田 恵生
ギャラリー:Liane and Danny Taran Gallery
所在地:5170 Côte-Ste-CatherineCôte-Ste-CatherineWestburyの角)
バ ス:129 ・17(徒歩3分) 161(徒歩5分)
メトロ:Côte-Ste-Catherine(徒歩5分)Snowdon(徒歩10分)
スケジュール:
冬期(10月〜5月)月〜木:9時〜21時 金:9時〜14時 土 休館 日:10時〜17時
夏期(6月〜9月)月〜木:9時〜19時 金:9時〜14時 土:休館 日:10時〜17時
電 話:514-739-2301
ウェブサイト:www.saidyebronfman.org/gallery/g_home.html
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