アートを志すならモントリオールへ!カナダで活動する新人アーティストなら誰もが一度は耳にする言葉ではないだろうか。確かにこの街のアートへの関心は高く、いたる所でオリジナルなアートを楽しむことができる。芸術家に対して門戸が広く、美術鑑賞ファンにとっては見逃せないイベントが目白押しのモントリオールアートシーンを、現役アーティストがレポートする。

 言わずと知れたモントリオール現代美術館は、プラス・デ・ザール駅と地下道で直結しており、またダウンタウン散策の途中で立ち寄れる立地の良さ。規模はさほど大きくないがその分リーズナブルな入場料金となっており、下記の無料サービスなども利用して、お気に入りの展示に何度も足を運び理解を深めるのも良い。館内やその周りにはメディアセンター、書店カフェ、レストラン、アートショップがあり、講演会やワークショップも充実している。

 今回は9月14日から2007年1月7日まで開催している「ネオ・ローシュ」についてレポートしたい。

 ネオ・ローシュは近年優れた画家を多く輩出しているドイツ、ライプチヒ出身。カナダでは初の展示。会場に入るとまずその絵の大きさに驚いた。すべての作品が約3m×2mの大作だ。近年の作品ばかりであるのにかかわらずレトロな雰囲気の濃いローシュの絵は、東ドイツの挿絵の流派と商業広告、産業象徴主義や社会主義リアリズムの特徴をあわせ持ち、一見いつの時代に描かれたものか分からない。かろうじて画面のあちこちに配置されたスポーツグッズがそのレトロな時代色に違和感を与えている。この「違和感」こそは彼の絵の特色のようである。

 神話の神とサッカー選手、トレンチコートの男達が緑の氷上でアイスホッケーをし、事務員風の女性が聖火を掲げている、、、そしてこれらの不条理な場面に繰り返し現れる不思議なモチーフの数々は、これらの8点の作品をひとつの大きな物語として繋げる役割を持っているように思われる。(同じくドイツ出身の作家で、「モモ」を書いたミヒャエル・エンデの著書にとても似通ったイメージと手法を持つ作品があるが全くの偶然だろうか?)ローシュの絵の中に物語はあるのか。それを知るにはきっと本人に尋ねてみるしかないのだろう。そしてその物語は、彼の過去や環境やドイツという国の情勢を知った上でなければ、理解が難しいものなのかもしれない。しかし私は彼の作品を情報的に理解しなくても良いのではないかと思う。今日の情報化社会では必要な(そして不必要な)情報を得ることが非常にたやすく、想像力を働かせるような機会は少なくなっている。ローシュのシュールレアリズムの不可解さを目の当たりにしてフラストレーションを感じる時、観る者は想像力を喚起させるべきなのかもしれない。現代社会のあり方に対する疑問が、レトロで時代錯誤な作風の中に秘められているようなローシュの作品に囲まれて、私は謎を謎のまま受け入れる心の余裕について考えさせられた。

文:本田 恵生
ギャラリー:MUSEE D'ART CONTEMPORAIN DE MONTREAL
所在地:185 Ste-Catherine Ouest
メトロ:Place-des-Arts
バ ス:15, 55, 80, 129, 535
スケジュール:火〜日:11時〜18時 水:11時〜21時(18時〜21時 入場無料)
入場料:大人$8 シニア$6 学生$4 12歳以下無料
無料ツアー:水:18時・19時・19時30分(仏)18時(英) 土日:13時・15時(英仏)
ウェブサイト:www.macm.org
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