7月の中旬、プラスデザール界隈でジャズフェスティバルが幕を閉じる頃、ダウンダウン東方の繁華街サンドゥニ通りでは、カラフルなモニュメントの設置など「笑いのフェスティバル」へのスタンバイが始まる。エンターテイメントショーやテーマごとのイベントなど、年々新たなショービジネス界の公演形態を包括しつつ、「笑いは世界を制覇しうる」という印象をこの「ジャスト・フォー・ラフ」は流布している。

ジャスト・フォー・ラフ (Just for laughs)
期間:7月10〜7月20日
場所:サンドゥニ通り周辺数ヵ所

 1982年の設立以来、今日では世界中から約800人のアーティストが集い、2000近くの公演を展開するまでになったこのフェスティバル。観客数は2百万人にのぼる。数々の地元・外国アーティストによる漫談、ミュージカル、曲芸、演劇、大道芸、コンサート、マジック、テーマパレード、コメディ映画上映、即興演技大会…これらすべてのイベントが「笑い」をテーマに一挙勢ぞろい。

 まず、「ストリート・アート」と名付けられたイベント形式は、今後ますます発達する可能性を秘めている。世界中のどこにでもある「通り」は誰にでも開けた最高の遊び場であり、出会いの場であり、人が人生で最初に接する社会の一部である。そんな基本的な場で展開する踊り、歌などのパフォーマンス。あまりに人間的だ。2003年、アフリカのカンパニーOpositoは、モントリオールの通りをヨハネスブルグと化した。そこでは、美しくも寂しく、激しい祭りが展開する。

 また、近年映画化もされたおなじみのミュージカル「シカゴ」の初の仏語バージョンを公演。モントリオールオペラやグランバレエ・カナディアンなどでおなじみの演技者たちを集め、ブロードウェイとは一味違った仕上がり。この作品はブロードウェイの他、ロンドン、スウェーデン、アルゼンチン、メキシコ、オーストラリアで制作公演されてきた。

 ガンブーツなどを世界に紹介したCompania Maria Page'sが今回推したのは「AEROS」。1998年イタリアでの初演以来、国立ルーマニア体操連盟出身のアクロバット集団は、その鍛えられた体によるショーで観客たちを魅了する。

 演劇陣の顔ぶれも見逃せない。ミシェル・トランブレが仏訳した英語劇「Appelez-moi...Maman!」(原題:「Mom's The Word」)は、笑いを交えながらも、出産、体調の変化、家事、性生活の変化などに直面しながら、女性はいかに母になることを受け入れるのかといった社会的かつ人間的問題を取り扱う。一方、1950年代からケベック大衆演劇の興隆に貢献してきたポール・ビュイソノー(PAUL BUISSONNEAU)は、フランスで生まれ、自動車製造業を経て大衆演劇巡業からモントリオールにたどり着いた所以などを、自らモノローグ形式で語る。

 大中劇場でのイベントのかたわら、このフェスティバルは未来のコメディアンを育てることに余念がない。ユーモア学校に生徒たちによる公演も3日間に渡り開催された。

 また、ユニークなのは街中の双子たちがそろって大行進するWeek-end Jumeauxシリーズ。世代をまたがっての双子など、普段まとめてお目にかかることなど滅多にないだけに見ものだ。

 このフェスティバルには、もちろん、外国から参加するアーティストや観客が多数いる。特に夏のこの時期はアメリカ合衆国からの観客が多い。実際、笑いは国境を越える(?)と言いつつも、漫談などは言葉のニュアンスや文化背景がわからなければ笑えるものも笑えない。そんな状況を考慮して、このフェスティバルでは英語系イベントの「ジャスト・フォー・ラフ」と仏語系の「Juste pour rire」の2部に分けたプログラム編成がなされている。2003年版の英語系の目玉はビル・コスビーショーだった。

 また、フェスティバル関係者たちはケベック内に限らず、ヨーロッパなど世界中にスカウトに回っている。日本からは、2002-2003年と連続で、ぜんじろうが英語での一人コントで出場している。

 さて、風刺的ユーモアが存在するのはモントリオールでも同じ。他民族の混在する土地柄、一定の民族の特徴を微細にわたっておもしろおかしく指摘する。イベント「Les Maudits Francais」では、フランスパン小脇にベレー帽をかぶって身軽に歩くイメージが定着しているフランスの人々を風刺する。「彼らのこと好きだよ、でも耐えられない!いまいましいフランスの人たち!」などと声高らかに言えるのも、彼らがケベックの人々にとって「いとこ」的存在であるからこそ。一方、「Incredibly Incroyable」は英語のショーだが、フランス人であるBERTRAND BOSSARD作・演技による。ここにはもちろん、フランス人による英語系社会風刺が見られる。

 ちなみに、このテーマは「猫が行方不明」でおなじみのセドリック・クラピッシュ監督の映画「Auberge espagnole」(2002年、「スペインの宿」<仮題>)を思い出させた。多少のフランスびいきは見られるものの、違いを指摘し、結局はそれらを認めながら異人種たちと協力的に生きていこうとする前向きな意識が感じられるものだった。規模はまったく異なるものながら、ヨーロッパ連合がこの作品の学生たちの共同生活に投影されている。

 笑い一つをテーマにここまでのイベントを取り揃え、開催から20年以上たった今でもこのフェスティバルの制覇気風は留まるところを知らない。むしろ、時代が変われば笑いの形式もますます多様化していくようだ。とにかく、この快挙ぶりに「笑いは世界を制覇する」と思わず繰り返したくなる。

2004年(第22回)の日程は7月15日〜25日。


9月4日〜10月28日 Le Mois de la Photo (HP)

9月12日〜11月2日 The Magic Lanterns (HP)

9月25日〜10月5日 Image & Nation - Montreal International Queer Film Festival (HP)

9月30日〜10月12日 International New Dance Festival (HP)


取材・文:広戸優子
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