モザイク文化のカナダ。ダンス界にもさまざまなバックグラウンドをもつアーティストが混在している。なかには自己表現がアイデンティティ探しにつながり、その結果マイノリティー文化が色濃く表れた作風をもつ振付家もいる。コンゴ系ZAB MABOUNGOU、イギリス出身インド・アルメニア系ROGER SINHAはその代表的な例だ。両者とも数十年前に移住して以来、モントリオールを拠点としているお馴染みの顔だ。今月はそんな彼らのイベントが目立っている。また、ギリシャ系 IRENI STAMOUの場合は幼少に家族で移住した後も、長年、出生地アテネとモントリオールを行き来していた。現代カラーに多分に投入されている伝統がエキゾチックだ。一方で、「多文化」な創作が特徴の振付家 MARIKO TANABE。先月、彼女がオーガナイズした興味深いイベントがあった。アンダルシア地方のフラメンコ研究にインスピレーションを得た、教会内での幻想的なダンス公演、そしてそれに先立つフラメンコの起源に関する講演会である。中世に発達したフラメンコ自体がユダヤ・アラブ・インド・ジプシー系の舞踊や音楽をベースとしているのが象徴的だ。MARIKO TANABEはニューヨークで20年近く活躍した後、モントリオールを拠点として創作活動をしている。ユネスコ「国際文明間の対話年」("International Year of Dialogue Amongst Civilizations") プロジェクトの一環だったこのイベントの担い手として抜擢された彼女、18ヶ月に渡る準備を経て実現させた。さて、今シーズンは無料イベント満載!
■Thr.2.14.2002 - Sun.2.17.2002 7:00pm to 0:00am

Studio 303主催、第二回を数える多種アート混在型イベント。小スペース内でダンス等のパフォーマンスあり、ギャラリーでは映像上映あり、地下やちょっとしたデッドスペースでライブ音楽あり。さまざまな分野のアーティストがあちこちでデモンストレーションする。ラウンジで毎夜DJライブに酔うもよし、小スペースに居座るもよし。夜7時からミッドナイトまで、ふらっと立ち寄ってこんなアートライブスペースをブラブラしてみるのはいかが?

<イベント>Projet/projo <劇場>MAI - Montreal, arts interculturels (3680, Jeanne-Mance x Prince-Arthur) <料金>無料 <写真>p. de s.-line-up <パフォーマンス>JENN GOODWIN(トロント), JOHN BOEHME(ヴィクトリア)- Thr.2.14 & Fri.2.15、MARYSE POULIN, STEPHEN O'CONNELL(トロント)- Sat.2.16 & Sun.2.17 <ビデオ>JASON ARSENAULT, JANICK ROUSSEAU, JULIE-CHRISTINE FORTIER, CLAUDETTE LEMAY, SEBASTIEN PESOT (Perte de signal)


■Thr.2.14.2002 8:00pm (Laissez-passer*Thr.2.7.2002 5:00pmより配布)

Danse-Citeの人気シリーズ、今回は ESTELLE CLARETON を抜擢。地元で一目置かれている感性豊かな振付家。日常の何気ないしぐさをダンスに仕立てるマジック、それもヌーベルバーグ時代の映画チックな演出で彩られた…。先回観た CLARETON 自作自演ソロ "Juliette" ではそんな魅力を存分に発揮していた。お勧め。カンパニー Montreal Danseとのコラボレーション。なお、この作品の本番は 2.22-23, 2.26-3.2の間、Theatre des Deux Mondes (チケット予約 Tel.845-7277)にて。

<劇場>La Maison de la Culture Plateau-Mt-Royal(Mdlc; Metro Mt-Royal, Tel.872-2266) <料金>無料 <振付>ESTELLE CLARETON <演目>Projet Clareton ; Formule 18 "De Julia a emile, 1949"(公開舞台稽古)


■Thr.2.21.2002 8:00pm (Laissez-passer* Thr.2.14.2002 5:00pmより配布)

MABOUNGOUの哲学を形成するのはフランス滞在、モントリオールでの活動、そして出身地のコンゴ文化だ。魂に響くリズミカルダンス。

<劇場>La Maison de la Culture Plateau-Mt-Royal(Metro Mt-Royal, Tel.872-2266)ZAB <料金>無料 <カンパニー>Danse NyataNyata <振付>ZAB MABOUNGOU <演目>Mozongi <写真>Cylla von Tiedemann


■Sat.2.2.2002 8:00pm 他

ユネスコ「国際文明間の対話年」枠内イベント。モントリオールのアフリカ系各種アーティストが勢ぞろいし、パフォーマンスを繰り広げる。アーティスト同志だけでなく、観客との対話も主催者のねらいのひとつだ。

<日時・場所>Sat.2.2.2002 8:00pm, MAI (Tel.982-3386)・Sat.2.9.2002 8:00pm, Mdlc Cote des Neiges*(Tel. 872-6889)・Sat.2.18.2002 8:00pm, Mdlc NDG*(Tel. 872-2157)・Sat.2.23.2002 8:00pm, Mdlc Plateau-Mt-Royal*(Tel. 872-2266) <カンパニー> Black Theater Workshop <演目>Sea Change <演技>CHIMWEMWE MILER(ナレーション+音楽)、NAH-EE-LAH(詩+パフォーマンス)、ZAB MABOUNGOU(ダンス+振付) <料金>無料

*Laissez-passer(レセ・パセ)という無料券をあらかじめ、各劇場入り口で入手する必要があります。基本的に公演一週間前から配布されています。MTL在住者向けなので、市営図書館の貸出証、ケベック州免許証、BellかHydro-Quebec 請求書、Acces Montrealのどれかを提示して下さい。なお、事前にチケット残数も含め、それぞれの会館に確認することをお勧めします。


■Fri.2.1.2002 7:00pm

DJあり、VJあり、ダンスありのワンナイトイベント。音楽・ビジュアル・ダンス界のアーティストたち、そしてその他実験的アートを開拓する新進アーティストたちが集結。等身大な創作が心地よい MARTINBELANGERのパフォーマンスは必見。ステージ上より、こういったスペースでの方がごくナチュラルな彼を発見できるはず。

<イベント>Passage.2 <劇場>SAT (305 St-Catherine W., Metro Place des Arts) <料金>$15・前売り$10 <ライヴ>GORDON FIELD, TAO-NHAN, NEERAV, DEW, MANA-7 <ダンスパフォーマンス>MARTIN BELANGER, LYNE NAULT, ROBOTEN BALLET, ANNE-MARIE BOISBERT


■Thr.2.7.2002 - Sat.2.9.2002, Wed.2.13.2002 - Sat.2.16.2002 8:00pm

カナダコンテンポラリーダンス界のメジャーでありながら、ごくごく個人的な探求心を固持し続けているROGER SINHA。彼の作品にはインド舞踊が色濃く出ており、彼自身、それを「一文化の肉体表現」と呼んでいる。民族的アイデンティティに裏付けられた表現には、他と比べものにならないほどのエネルギーが秘められている。それはアイデンティティの探索そのものにつながるからだ。2002年 Canada Dance Festivalの際に公演された "Loha" は、カナダで最も著名なインド現代舞踊家の1人NATASHA BAKHTとROGER自身のデュオ。声楽とパーカッションにGANESH ANANDAN、エレキギター演奏にRAINER WIENSを迎える。加えて、公演期間中、ROGERの世界に感化された画家 ANNE THIBAULTによる展示がラボラトリーで公開される。

<劇場>Agora de la Danse <料金>$23・学生$16 <カンパニー>Sinha Danse <演 技>ROGER SINHA <演 目>Loha/Thok <写真> Michael Slobodian


■Thr.2.21.2002 - Sat.2.23.2002 8:00pm

夢と欲望に視点を据えた作品 "Flux"。91年にモントリオールダンスシーンに登場して以来、ヌーベルダンスフェスティバルでも公演した。街の規模にしては音楽・演劇など舞台芸術が盛んだと言われるウィニペグで注目されている存在。マニトバからのアーティストには滅多にお目にかかれない。正統派かつ、ごく個人的な身体ボキャブラリーに注目。

<劇場>Agora de la Danse <料金>$23・学生$16 <カンパニー>Ruth Cansfield Dance <振付>RUTH CANSFIELD(マニトバ) <演 目>Flux <写真> Mirek Weichsel


■Wed.2.27.2002 - Thr.2.28.2002, Fri.3.1.2002 - Sat.3.2.2002 8:00pm

体・空間・時間を操りながら展開するVAN GRIMDEの世界。ミュージシャンをステージに招き、音楽の放つパワーに呼応する体の動きを見せる。5パフォーマーのための振付コンサート ―3ダンサープラス2ミュージシャン―。実際、このプロジェクト Erosioはサクソフォニスト REMI BOKDUDの発案。

<劇場>Agora de la Danse <料金>$23・学生$16 <カンパニー>Van Grimde Corps Secrets <振付>ISABELLE VAN GRIMDE <演 目>Erosio/Esquisse 1: Lina, Graffiti pour une nui blanche <写真> Michael Slobodian

<観劇後感>

観 劇 日:Sat.1.19.2002
振   付:PETER TROSZTMER
演   目:Sketch 1
写   真:E. Langley (写真上: PETER TROSTZMER)
劇   場:Studio 303

先月の嬉しい発見。PETER TROSZTMER自作自演のソロ。クラシックバレエの貴公子風にも見え、若い坊ちゃん風にも見える彼、個性と深い思考をもつ人のようだ。「労働後の精神・肉体疲労状態」的テーマがはっきり見える。へとへとに疲れたサラリーマン。手も頭も重心力が強く効きすぎて、ぶらっと垂れている。Yシャツの肩衿だけが背広の衿に隠れている。神経が指先やつま先に集中したかのような、ごくごく偏ったエネルギーの中でもがき闘う。上半身使いが多い中、顔の表情で鮮やかに演じきっている。なんとも言えずデフォルメした、痛みといおうか疲れ、いやそれを通り越した怒りが噴き出したような醜い表情。この作品を観つつ、ふと思った。西洋人の彼らが舞踏を真似る必要などあるのだろうか。強い思い入れと微細な感覚を見つめるミクロな視点さえあれば、こんなにエネルギーを燃出するソロ作品ができあがるのだ。若そうに見えるけれど、いろいろ経験することで培った視点をもっている人だ。ダンサーとして今まで数回見たPETER TROSZTMERのインパクトは薄かった。振付家のユニバースを忠実にリフレクトしようとしていたためか。振付家としての彼に今後も注目!

クレジット:表紙写真/PETER TROSZTMER, Photo: E. Langley
取材・文:YUKO H.
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