シーズン真っ盛りの11月にエネルギーを燃焼したかのように、この12月のダンス界、公演数がグッと減る。クリスマス休暇はダンス関係者にも必要などと妙に納得しつつ、バラエティに富んでいた11月のラインナップを思い起こす。ところで、コンテンポラリーダンスのキーポイントといえばズバリ、"interactive"。言いかえれば、コンテンポラリーダンスはコミュニケーション手段の一つということだ。これは継続的にダンス鑑賞をしつつ発見したことだ。作品を観るたびに創作者の内面を垣間みる。アーティストの内面だからといって何も特別なものではない。ひとりの人間の内面にすぎない。わかるとかわからないということは重要ではない。世の中、実際他人にわかりやすい人間もいれば、わかりづらい人もいる。何か共感や反感、感動など反応があれば、それが自ずと自分自身との対話につながる。

 11月に公演した振付家兼パフォーマー NATHALIE PERNETTE (Cie Pernette Schemid: "Le Sacre du printemps", "Suites")は、「あなたにとってダンスとは?」という問いにこう答えた。「スタジオに入るたび、そこには現実とは切り離された別世界が広がっている。そこでクリエーションをしながら、自分の中の複数の扉を開けていく」―こうした振付家や演技者自身の生の声を聞くことができるアーティストトークが毎週一回、公演後に一般公開されている。主要コンテンポラリーダンススペースである Agora de la Danseでは公演のある週の木曜日、Espace Tangenteでは金曜日だ。また、Usine Cでは日によっては地下のビストロ、Studio 303ではショースペースで、公演後に出演したアーティストたちと歓談する機会がある。コンテンポラリーダンスは観るだけではなく、観て感じて、考えて、フィードバックし、それがコミュニケーションにつながる…といったサイクルで成り立っている。だからこそ、とても奥深い。

 今月の Tangente のショーケースでは二つのソロが見られる。振付家が創作し自ら演技するもので、これこそかなり純粋度の高い個人の世界。表面的なものはいっさいうち捨てられた、振付家自身と対面するひとときは格別。

クレジット(写真右上):Cie Pernette Schemid, Photo: Claude Journu
日   程:Thr.12.6.2001 - Sat.12.8.2001 8:30pm, Sun.12.9.2001 7:30pm
振   付:MARTIN BERNIER / NANCY LEDUC
演   目:Martin "Cruel Mystere" / Nancy "La Cavalier Bleue"
写   真:Paul-Antoine Taillefer / Rolline Laporte
劇   場:Espace Tangente
料   金:$15, 学生$13

"Cruel Mystere"では、女性と男性、欲望と恐れ、強さともろさなど、我々のアイデンティティを形成するもののなかで敵対する関係にある要素に焦点をあてる。MARTIN BERNIERはバレエをフランスで、モダンダンスをモントリオールで身につけ、11年来 Montreal Danseのダンサーとして活躍。NANCY LEDUCと言えばビジュアルアート趣向の強い人。特にコスチュームの多色使いには彼女らしいものがある。個人的に彼女のムーブメントは単調でいまひとつだと思うが、その分ある程度はストーリー性と舞台装置でカバーできている。今回は彼女のスペイン人としての起源に迫った作品。

日   程:Thr.12.13.2001 - Sat.12.15.2001 8:30pm, Sun.12.16.2001 7:30pm
振   付:PIERRE LECOURS / AUDREY LEHOUILLIER
演   目:Pierre "L'heretique" / Audrey "Vous savez…madame?"
写   真:Alain Lecours
劇   場:Espace Tangente
料   金:$12, 学生$10

同世代の中では露出度の高い若手振付家たち。2人ともすでにかなりはっきりとしたユニバースをもっている。ムーブメントに加え、演出がある創作が特徴。見るからにナイーブな印象の PIERRE LECOURSは、前作 "La banquette arriere: la presentatrice"同様の映画チックな悲喜劇風ラブストーリーをダンスで表現。一方の AUDREY LEHOUILLIERが描くのは、同じカラフルでもNANCY LEDUCとは一味違うポップなコスチュームなどの色使いで、あくまで軽く軽く仕立てられた世界。パフォーマーとして出演するPIERRE LECOURS必見。

日   程:Thr.12.13.2001 - Sun.12.16.2001 8:00pm
振   付:EMMANUEL JOUTHE, HAROLD RHEAUME, JULIA SASSO, TASSY TEEKMAN
演   目:"Tous asimuts"
劇   場:Theatre la Chapelle (3700 St-Dominique x Prince-Arthur, Metro Sherbrooke or St-Laurent, tel. 514-843-7738)
料   金:$8

毎12月恒例、モダンダンス学校LADMI卒業生たちによる公演。この催しのおもしろいところは、モントリオールの中堅以上の人気振付家たちによる振付を見比べることができる点だ。そしてそれを若い表現者たちがどう解釈し演技しているかにも注目。
<観劇後感あれこれ> 先月も10本以上観た中、それぞれが違ったタイプでどれをクローズアップするか迷うところ。例えば JULIE LEBELの作品 "Isabelle" ( Tangente, Sun.11.4.2001)は、20代のパフォーマーISABELLE CHEVRIERと10歳の素人 GENEVIEVE TREMBLAYによる演技だった。子供たちをターゲットにしたイベントという向きが強く、美的な期待度の低さからパスしようかと思っていた。が、一方でモントリオールで頻繁に見られる子供向けのコンテンポラリーダンス公演には社会的な視点から興味があり、足を運んでみたら、これがまた一つの発見となった。期待どおり社会的なアクションをとり得るコンテンポラリーダンスの現実を見た。また、特別、このカナダ社会での親子関係のあり方を考えさせられた。エゴとエゴの対立。そして共存。

 IRENI STAMOU ( "Odyssia", Tangente, Thr.11.8.2001)は、体を一つの研究素材とし、パーツを徹底して動かすことに集中していた。それが極めて美的だ。中間色のない光に溢れた世界。真っ白な空間。どこからか風が吹く…舞台装置とボリューム一杯のテクノ風ミュージックを駆使したマキシマムな環境にミニマルな動き。それは自然、例えば風と対話するかのようだった。ソロ短編集の抜粋だったのでとても短く感じた。来年のAgora de la Danseでの完成作公演に期待。同夜に公演した IMED JEMAA(チュニジア)によるデュオ "Dar Ellil" (Tangente, Thr.11.8.2001)は、IRENIのそれとは対照的に何やら薄ぐらーい室内で展開する。ソファにはまっているちょっとハラの出た男。ズボンがタータンチェック柄。時折ソファからずり落ちたり、立ち上がればころんで、また立ち上がりそうな態勢で突然静止したり。「自分の足をもう片方の足で踏もうとしてそれを避ける」的ステップを繰り返したり。決してストリートダンスでもなく、ただただIMEDの試行錯誤ダンスを繰り広げる。彼の存在感が抜群で、舞台で演劇が繰り広げられているような錯覚をおぼえる。そしてパートナーの SOUAD OSTARCEVIC。しっかりとした基礎のある動き。両手を組んで無限大マーク(∞)型にし、その中にすばやく頭を通す。知恵の輪のごとく。そして2人の絡み…。トラディショナルな舞台を予想していたが完全に裏切られた。心地よくも。これが彼の初のコンテンポラリーダンス公演だとは誰が予想できるだろう。成熟した思考・アイディアがあれば、これだけ魅力あるステージを繰り広げることができるのだ。クレジット:Ireni Stamou, Photo: Zoi Kilakos

 ALAIN BUFFARD(フランス) の "Good Boy" (Musee d'Art Contemporain de Montreal, Fri.11.16.2001)は、11月のフラッシュ的存在だった。ところで、筆者にとっては「美的=シンプル」という図式が限りなく当たっている。でも空間をベースとした舞台上のレイアウトによって、同じシンプルさの効果はぐっと変わってくる。そのへんの勘がしっかり養われているのがALAIN BUFFARDだ。思わずスケッチしたくなる。特にハロゲンライト使いは最高。正直、観客から見ると鈍いまぶしさが邪魔し、その陰にいる彼の顔がよく見えない。そのへんも計算ずみだろう。動きもこれまたエキセントリック。自虐的なまでに体をいじめる。脇の下を集中的にパシパシ叩いたり、腕を変形させたり…「美的」な人体実験といったところか。IRENI STAMOU にしても、このALAIN BUFFARDにしても、動きの研究を重ねた結果、何かしら「オーガニック」な動きに行き着いたようだ。クレジット:Alain Buffard

クレジット:表紙写真/Ireni Stamou, Photo: Francois Dufort
取材・文:YUKO H.
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