戸外に出るのが心地よい季節。待ってましたとばかり、毎週末のように街を歩きまわったり、テラスでサングリアを数杯かたむける今日このごろ。これからは各種野外フェスティバルがお楽しみ。この夏もパーク・ラ・フォンテーヌの野外劇場で、ダンスを含めた無料公演があるはず。時期が来たらご案内します。

 5月はオフシーズンを前にした劇場のにぎわいを満喫した。まずは先月号に引き続き、劇場紹介をどうぞ。それにしてもこうして改めて列挙してみると、数々の劇場やスペースが街にちりばめられているなぁと実感。久しく行ってなかった場所で公演があると、ほとんど劇場目あてで行くこともある。劇場それぞれ、ステージの奥行き、幅、天井の高さなどに微妙な違いがあり、例え同じショーを観ても印象が変わったりする。そんなわけで、私の一番気に入っている劇場から。
Usine C(500席)1345 ave. Lalonde, Montreal (x Visitation, metro Beaudry) TEL (514) 521-4493

Usine(=工場)という名のとおり、煙突をたずさえた工場を改築した建物。演劇上演の週が多い。当初はモントリオール発の音楽劇 "Notre-Dame de Paris"(http://www.ndpofficial.com)のプロデューサーGilles Maheuが創立した劇団Carbone 14のレジデンス劇場だった。ちょっとへんぴな所にあるけれど、時間をたっぷりとって地下のしゃれたビストロに立ち寄りたい。

MAI - Montreal, Arts Interculturels(100席)3680 rue Jeanne-Mance (x Prince-Arthur West, metro Place des Arts) TEL (514) 982-3386

1999年に設立された新スペース。ここも演劇、ダンスとプログラムが多彩。広いギャラリーが併設されていて、特にマルチメディア絡みの展示は要チェック。

Centre Pierre-Peladeau(800席)300 Maisonneuve Est (x St-Denis, metro Berri-UQAM) TEL (514) 987-6919

インターナショナルな音楽・ダンス・エンターテイメントショーを公演。たまにこうしたコンテンポラリーダンスにしては大きな劇場に足を運んでフォーマルな気分を味わうのもよい。2000年に日本からのカンパニー、H. アール・カオスが公演。

Place des Arts 175 St-Catherine West (x Bleury, metro Place des Arts) TEL (514) 842-2112

Salle Wilfrid-Pelletier(3000席)
毎年末定番のGrand Ballet CanadienによるNutscrackerの上演はここ。世界に誇る、カナダのダンスカンパニーLa la la Human Stepsの最新公演 Exauceもここで上演された。

Theatre Maisonneuve(1500席)
フランスの巨匠モーリス・ベジャールの公演があった。

Cinquieme salle(500席)
先秋、日加共同プロジェクトCJ8が公演された。

La maison de la culture

市営のいわゆる文化会館。各地区に点在しており、プラトーモンロワイヤル、Cote des Neiges、 Frontenac等は各メトロステーションの近くにある。いずれも市営図書館併設。音楽や演劇の他、ダンス公演もある。無料公演が魅力的で、各公演一週間前から配布されるLaissez-passer(レセ・パセ)というチケットを入手する。Laissez-passerはモントリオール在住者対象。ケベック州の免許証の他、市営図書館の貸出証などを提示する必要がある。
観劇後感(4,5月)

観劇日:Thr.5.9.2001
振 付:CATHERINE TARDIF
演 目:Et Marianne et Simon
劇 場:Theatre La Chapelle

 壁むき出しの倉庫のように見える天井の高い部屋。壁に当たったライトが3つの大きな窓のフレームを投影している。パフォーマーたちが光と陰の2層を行ったり来たり。この作品は10人のパフォーマーによるソロで、それぞれが10人の異なるミュージシャンによる楽曲に組み合わされている。振付家によると、「ホテルの一室で地震が起きた早朝」的な「有事」シチュエーションに遭遇した個人を想定しての創作。だから、みんなパジャマとかジャージといったカジュアルウェアで(下着にファーコートもあり!)、それぞれがデザインの異なったイスを持って登場。ソロの合間合間に演技者同士の絡みもある。時には9人が壁にもたれて思い思いに一人のソロを見ている。おもしろかったのは決して10人1グループとして見えることがなかった点。同じ状況に直面していても十人十色、パフォーマー自身の個性が浮き彫りにされていた。この公演に先立ってリハーサルが一般公開された。アーティストとのトークもあった。以前からその特徴的な外観からパフォーマーとして注目していたカトリーヌ。予想以上にビジュアル感覚の鋭い人だ。と同時に人間とか状況とかものの見方が奥深い。アンテナにひっかかった情景を胸の奥底にストックしておいて創作時に引き出す、というようなことを言っていた。あくまで一観客の私としては、振付家としての彼女は完成度をアップする余地がまだまだあるけれど、その野生的感性でこれからおもしろさを増していくだろうと期待している。

観劇日:Sat.4.28.2001
振 付:GERZSON PETER KOVACS(ブタペスト)
演 目:Coax
劇 場:Espace Tangente

 シンプル。ミニマル。成熟したデュオ。ラディカルなわけではなく、常に「軸」を意識した動き。冒頭の約15分間は、2人が並列して両足が床にはりついた状態で上半身だけで動めく(ムーミンに出てくるニョロニョロのよう)。ぎこちなく、でもそれなりにアクティブに。振付家によると、「古代神話の世界、地軸は垂直方向に走っていた」というプロットによる。その後、時代が移るとともに水平方向に動きが変わる。ラストはサークル状だ。中盤、強いライトがあたり、2人の影がくっきりと背面の壁に浮かび上がる。ふたたび実物の姿を見た時、そのギャップに、まるで別次元を浮遊していたような感覚さえ受ける。スペースシャトルも宇宙服もなく、ただライト効果と抑え気味の動きだけで、完成度の高いユニバースを創り上げていた。アーティストとのトークの際、モントリオールの観客は活発に意見や質問を出した一方、ハンガリーでは静かなものだったらしい。振付家Kovacsはハンガリーの観客は決して意見がないわけではなく、こんな質問をしておかしくないかなどとちゅうちょしていただけだろう、と言っていた。それでもやっぱり私は、他の街に比べてモントリオールの観客は、よりコンテンポラリーなダンスに親しんでいると思う。あくまでマイノリティーなのだけど。

取材・文:YUKO H.
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