聖遺物、、、と聞くと何を思い出すだろうか? キリストの顔が布に現れていると言われているトリノの聖骸布、アーサー王伝説にも出てくるキリストの聖杯。 映画、‘インディアナジョーンズ最後の聖戦’で出てきた聖杯は、最後の晩餐に使われキリストが十字にかけられた時に体から流れ出る血と汗をためたものだといわれている。現在聖杯は行方不明とされているが、言い伝えによるとその聖杯は井戸の底に投げ入れられ、そのためその井戸の水はキリストの血のように赤い、とか。もちろんこれは有馬温泉の赤い湯のように、鉄分が多いため水が赤くなってしまうからだ。トリノの聖骸布にしても、最近の炭素調査で本物ではないことがわかったそうだ。何かと現代では説明ができるようになってしまい、有馬温泉の水と同じと言うと一気にロマンのかけらもなくなってしまうが、歴史の長い宗教に関する神秘的な要素に、聖遺物、聖杯、現在行方不明、などのタイトルが付くと、私が探しに行くわけでもないのになぜかちょっとインディアナジョーンズ気分で心が躍る。

  モントリオールにも、教会でおこった奇跡や不思議な話がいくつか残っている。今回の教会は、今でもその奇跡に授かろうと北米各地から人が訪れる北米最大の巡礼教会のひとつ、Oratoire St Josephだ。底冷えする寒さの中、今回から写真をとってくれることを引き受けてくれたT氏と一緒に山向こうの教会へ行ってきた。今回のCHURCHは不思議なこと(?)が続々と起こった不思議な一日でもあった

 Oratoire St Josephはいつ来てもその美しさに圧倒される。MontRoyalの自然に同調するかのように凛として堂々と建っている。イタリアルネサンスに回顧したデザイン、バチカンのSt Peters寺院に次いで2番目に大きいドーム屋根を持つ教会だ。冬山の背景がまた寒さを引き立てる教会前で、T氏にさっそく注文をつけ、写真をとってもらうことにした。が、え?動かない?何しにきたんだ?慌てる私。T氏はもうひとつのカメラで写真をとることにした。ところが、このカメラも寒さで凍り付いてしまった。ふと、私が教会をスケッチすればいいんだ、とも思ったが、今度は私が凍り付いてしまうだろう。結局、何枚か取れたのを頼りに教会内へ避難することに決めた。

 教会内は、中へ入ると夕方ミサに参加する人が集まってきていた。この教会は2つの博物館、2つの礼拝堂がある大規模な教会である。中にはエスカレーターもあり、とても近代的だ。この教会の‘奇跡’は奇跡の人と呼ばれるアンドレ修道士が起こした不思議な治癒力のことである。20世紀のはじめ、多くの病人が彼を頼って彼の元へ尋ねていった。昔、私の母親がモントリオールに遊びに来てこの教会を訪れた後、ひざが悪い彼女は(なんだかひざが軽くなったみたい)と喜んでいたが、あれは気のせいだったのか、それとも本当に何か起こったのか?

 ちょうど正面入り口から入ったところがアンドレ修道士のお墓のある回廊になっている。いつ来てもここはとても幻想的な世界である。赤白緑ガラスに入った数百ものろうそくと、ちょっとデザインが凝っている蜀台の明かりがゆらゆらと揺れている。壁にかけられている多くの松葉杖は感謝祭の時に病気が治った人から奉納されたものだ。寒さから生き返ったT氏のデジカメを覗かせてもらうと、フレームの中にそれこそ小さい天国みたいな世界があった。

 今回、カメラマンT氏を引っ張ってきた理由のひとつでもある、‘アンドレ修道士の心臓’が教会奥の博物館に展示されてある。この心臓は1973年に盗まれたことがある。そのためなのだろうか、ガラスケースに展示されてある心臓は重い鉄のドアで閉められるようになっている。たとえ盗んで持っていても薄気味悪く感じるのだが、聖なる遺物だと考えると納得してしまうかもしれない。仏教でもお釈迦さまの舎利を分骨して寺に奉ったりしているので、キリスト教でも遺物崇拝があったのは奇妙でも気味の悪いことでもない。今では聖遺物の売買は禁止されているのだが、昔中世ヨーロッパでは、聖遺物ブームが巻き起こり、聖遺物の売買がさかんに行われた。得に十字軍の時代、遠征で得た聖遺物の品の数は数知れない。本国に持ち帰ったところで高額でたたき売り、もちろんその中のほとんどが偽物だったにもかかわらず、聖人に関する遺体の一部から身の回りのもの、はたまた触った(といわれる)石や、歩いた(といわれる)土から何から何まで集められた。聖人もこれではやすやすと眠りにつけないのでは、、と思ってしまう。アンドレ修道士は聖人ではないのだが、数々の病気を治し、一生を神に捧げた彼の貢献は後にローマ法王によって祝福されている。そんな彼の心臓は盗まれた翌年の1974年に見つかり、ここに収められている。

 最上階の礼拝堂でオルガンコンサートを聴きたいと思っていたが、行った日は残念にもやっていなかった。その後やっと教会を出るとすでに日が暮れていた。中も静かだったが外も雪のせいか、薄気味悪いくらい静まり返っている。

 ところで、帰り際に取った教会横のチャペルの写真に、何か不思議なものが写っていた。なんだこれ?と覗き込んだカメラのモニターには白い煙のようなものが影のように映っている。二枚目の写真は普通に取れていた。(やっぱりさっき展示されている心臓をがんがんカメラで取ったから、、、)とか、(教会だしありえる話だよねー)などと面白い半分にT氏を脅し、最後には(この写真、今日消しても明日残っていたら怖いよね。消したはずなのに!!!絶句、なんてね。)と、とことんT氏をからかった後、家に帰った私は、なんとその夜高熱をだして寝込んでしまった。その日の寒さで体がまいってしまったのだが、あまりのタイミングの悪さにちょっとぞっとしてしまった。これっていったい、、、?何でしょう?

Oratoire St-Jospeh
3800 Chemin Queen Mary (Metro Côte-des-Neiges)

博物館10h- 17h
日曜オルガンコンサート 15h30
3月19日St Joseph祭の特別ミサ 10h, 14h30, 20h

取材・文:りさ
写真:床井雄志
当ホームページ内の画像・文章等の無断使用、無断転載を禁じます。すべての著作権はFROM MONTREAL.COMに帰属します。情報の提供、ご意見、お問い合わせは「左メニューのCONTACT」よりお願いします。
Copyright (c) 1996-2007 FROM-MONTREAL.COM All Rights Reserved