このクリスマスシーズンに映画、ハリーポッターと指輪物語の続編が公開されるそうだ。そこで、ハリーポッターをまた読み直そうと本を読んだ。登場するいろいろな妖精や魔法使いの中、4巻目にLeprechaunという魔法使いが登場する。あっと思った。LeprechaunはSt Patrick'sパレードではよく目にするマスコットキャラクターで、パレードのある3月17日が近づくと1$ショップには全身緑色のLeprechaunグッズが棚に並ぶ。本国アイルランドに伝わる森に住む靴屋の格好をした老人の妖精で、金貨の詰まった壷をアイルランドのどこか虹の下に隠し持っている、と言われている。ハリーポッターにでてくるLeprechaunQuiditchのゲームにアイルランドチームのチアリーダーとして登場し、観客席に向かって金貨を撒き散らしている。

 さて、今月の教会はSt. Patcik's Basilicaである。アイルランド人の祭り、St-Patrick Day(3月17日)にパレードがあり、モントリオールは緑色のものを身につけた人でちょっとしたお祭り騒ぎになる。ちょうどこの日にSt. Patcik's Basilicaの前でまるで昔TVでとんねるずがやっていた‘もじもじくん’のような格好をした、全身緑色タイツ姿の友人に偶然出会ってびっくりしたことがあった。この教会は1847年に建てられ、モントリオールのアイルランド人移民の歴史の上でとても重要な教会である。

約150年前、アイルランドに大飢饉が起こり、多くのアイルランド人がアメリカ、オーストラリア、カナダへと移民をした。この飢饉により、アイルランドは人口の4分の1を失った。今でもアイルランドはこの大飢饉以前の人口には回復していないそうだ。紅茶で有名なリプトン家も実はこの時アイルランドからスコットランドへ移民した一人である。ケルト文化に見られる妖精の国、森と水の神秘的な国の平和なイメージとまったく違い、バイキングの侵略から始まった彼らの歴史は、ノルマンに侵略され、イギリスの圧政を受け、飢餓に苦しみ、移民を余儀なくされた。その頃のモントリオールはすでにイギリス領下で経済発展の真っ只中であった。港には貨物をつんだ多くの船がとまり、イギリス商人たちがあわただしく貨物のリストをチェックし、貨物を運ぶ馬車が行ったりきたり、、。その後もアイルランド移民は増え続け、信仰心が強かったアイルランドのカトリック教徒のためにこのSt. Patcik's Basilicaが建てられた。教会は初期ゴシックリバイバル様式で、シンプルな外観と装飾的な内部、とケベックによく見られる典型的な教会建築だ。当時、アイルランド人の移民の急増に対し、サルピス会はイギリスで当時有名だった建築家にデザインの依頼をするが、結局無視されてしまう。代わりにモントリオールで活躍していたフランス人の建築家を雇ったそうだ。

 Rene-Levesque通りから入ると教会裏手にあたる。緑が多い大きな敷地内の駐車場にはところ狭しと車が並んでいた。ミサ中かな?と思いながら中に入ると誰もいない。(駐車場はおそらくオフィスビルにかしているのだろう)屋根を支える大きな柱と美しく交差するアーチ、高い天井。光が多く入るようにステンドグラスがある。とにかく広い。パリのSt-Chapelleみたいだ。そういえば、この教会を建てるときに800 - 1000人が入れる大きさの教会を、と依頼したそうだ。

 壁のデザインは前回のCHURCH6でレポートしたイタリア人画家Guido Nicheriによるもので、アイルランドの国旗にもある三つ葉の模様が描かれている。シャムロックと呼ばれるこの三つ葉はアイルランドによくある花で、聖パトリックがアイルランドで布教活動を行ったときに三位一体を説くときに使ったそうだ。三位一体とは父である神と子であるキリスト、そして精霊の3つが別々でありながら、3者は一体である、という理論なのだがいまいちよくわからなかった異教徒たちは(私もよくわからない。。)その理論を信じなかった。

聖パトリックは足元にあったシャムロックの三つ葉を見せて、自然の中にもこのように三位一体は存在する、と教えを説き、異教徒たちは聖パトリックを信じたそうだ。それ以来、この三つ葉、シャムロックはアイルランドのカトリック教のシンボルとなった。シンボルと言えば、この聖パトリックもイギリスの国旗ユニオンジャックに象徴されている。イギリスの国旗は3つの十字架を組み合わせていて、それぞれイングランド、アイルランド、スコットランドを表している。赤の十字はイングランドの守護聖人、聖ジョージ、青地に白の斜めの十字はスコットランドの守護聖人、聖アンドレの十字架。そして白地に赤の斜めの十字はアイルランドの守護聖人、聖パトリックの十字架である。

 この教会はアイルランド人コミュニティーのシンボルとして、また、カナダの移民の歴史を語る上で重要な建築としてNational Historic Siteとして登録されている。来年のSt-Patrick's Paradeの時にまた行って、全身緑色のアイリッシュ版もじもじくんにまた会いたいものだ。

St. Patcik's Basilica
460 Rene-Levsque West


取材・文・イラスト:りさ
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