昔、母からもらった本に載っていた岩山のてっぺんにあるフランスロマネスク教会の写真を見て、どうしても行ってみたくなった。その教会はみごとに崖の絶壁と一体化していて、道という道もなく、どうやってのぼるのかと思ったら、上からおろした滑車(と言うにはあまりに不安なバスケット)に乗り、それを上から引き上げる、という超ローテクな方法でしかたどりつけないようになっていた。ギリシア中部のメテオラにあるギリシア正教の修道院群のようだ。不安になるほど絶壁の奇岩に立ち並ぶメテオラの修道院はいったいどうやってこの建築機材を運んだのか?と思うほど。昔訪れたスペインバルセロナから1時間ほど行ったところにあるモンセラートの修道院も岩山の絶壁にあり、そこに行くための交通手段は駅からつながっている今にも落ちそうなおもちゃのようなケーブルカーしかなく、風がつよいと運行しないというかなり不便なところにあった。この修道院という制度はもとをたどると4世紀のエジプトで共同生活をしながら修行をする場として修道院の原型が生まれ、それがシリアを通ってヨーロッパに伝わったそうだ。現在残る修道院のほとんどが、え、こんなところに?というところにある。

 さてさて、前置きが長くなってしまったのだが、なんで修道院の話から始まったのかというと、今回の教会は、モントリオールからバスで1時間半ほどのイースタンタウンシップスにあるSt-Benoit-du-Lac Abbeyという僧院である。

 このSt-Benoit-du-Lac Abbeyはいつも私がお世話になっている方から聞いた‘山の僧院’である。見せてもらった僧院の写真は崖っぷちにあるわけではなかったのだが、湖畔にひっそりとたたずむ美しい建物で、ちょうど日本からやってきた母と明日は何をしよう、と話していたら、山へ行こう、僧院へ行こう、ついでに僧院で売っているチーズを買ってこよう、と、修道院へ行くにはあまりに不本意な観光気分で行くことが決まった。実際に行ってみるとその山の中にひっそりとある僧院と、そこで実際に働く黒いマントをきた修道士たちを見て厳粛な気分さえ感じてしまった。

 数ある修道会派の中で、St-Benoit-du-Lac Abbeyはベネディクト派修道士たちによって築かれたものである。ベネディクト派は、600年ごろ聖ベネディクトによって創設され、貞潔、清貧、従順を基本としたベネディクトウス戒律を守りながら祈りの生活の他に、修道士の養成、研究、労働を日課とした。このベネディクトウス戒律(会則)は西洋における修道院生活の基礎になったのものだ。当時の修道士たちは午前2時に起き4−5時間の祈りと6−7時間の労働を行い、午後8時に就寝という日課だったそうだ。世俗を断ち切り、祈りの生活に集中する。当時の修道士たちが残した美しい写本や、細密画、モザイク、フレスコ画などの美しさを見るとここまでくると本当に人間業とは思えなく、ただただ感心してしまう。

 St-Benoit-du-Lac Abbeyには現在60人ほどの修道僧が暮らしており、その歴史は1912年から始まる。フランスから追い出され、ベルギーに移り住んだベネディクト派修道士たちはさらにカナダへ移りそこでメンフレマゴグ湖半にある今の僧院を築いた。

 11時のミサに間に合えばグレゴリオ聖歌が聴けるはずだったのだが、ちょうど着いたころはミサが終わるころだった。観光気分で訪れるような僧院ではないことに気づいた私たちはミサを後ろからそっと見物した後、日本の寄木細工を思い出させる幾何学模様の回廊でのんびりし、地下のギフトショップへ向かった。(この辺がやっぱり観光客をやめられない私たち、、)ミサの間は閉まっていたギフトショップには終わったとたんに開き、ミサに参列していた人たちや、アメリカからやってきたツアーの団体がどどっと押し寄せ、僧院でつくられたアップルシダーや、チーズ製品を選んでいた。私はプチン用のチーズを買い込み、外でさっそく食べてみた。スーパーで売っているものよりもはるかに味があって美味しかった。気になっていた帰りの足はもはやヒッチハイクしかないと決め込んだのだが、うまい具合にマゴグに戻る人を見つけられず、困ってうろうろしていると歩いていた修道士が親切にタクシーを呼んでくれた。(行きもタクシー。マゴグからのバスはないそうだ。)結局、山へいこう、僧院へ行こう、のイースタンタウンシップスの旅は半日で終わってしまい、そのままマゴグからバスでSherbrookeまで乗り、ケベックシティへと向かったのだが、車さえあればイースタンタウンシップスの他の素敵なところを回れたのに、と運転免許書を持っていない私はタクシーの中でとても後悔した。

このあたりは秋の紅葉シーズンもため息がでるほど素敵だそうだ。ぜひとも次回は車でSt-Benoit-du-Lac Abbeyとその周りを回りたく、これから運転免許をとりにいくことに決めた。次回は車だ!

St-Benoit-du-Luc Abbey
Chemin Ficher
Web site: www.st-benoit-du-lac.com

取材・文・イラスト:りさ
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