1年間近く教会めぐりから離れてしまっていた私ですが、復活!教会めぐりということで、今回から私の趣味・本業でもあるイラストを入れて紹介していくことになりました。

 教会を描くことが私の趣味だが、さすがに冬は寒くてスケッチなどしていたら15分もしないうちに凍ってしまう。かといって春先は雪解けの水で洪水になる街中では座ってもいられない。結局スケッチに行く期間は春終わりあたりから秋にかけてなのだが、暑さが苦手な私には、モントリオールの夏の暑さはこれまたけっこうつらい。いつのまにからか、スケッチしては教会内でしばらく涼んで帰るのが習慣になってしまった。今回はちょうどジャズフェスティバルが行われていたのでPlace des Arts の劇場裏手にあたる赤い屋根が目印の教会、The Church of St- John the Evangelistに行ってきた。1年ぶりに行くこの教会とジャズフェスティバル、まるで実家の夏祭りに行くような気分だった。

 もちろん実家の小さな夏祭りとは桁はずれに規模が違うモントリオールのジャズフェスティバルは相変わらずものすごい人出だった。本日の気温は32度。これはあの教会に行くしかない、と暑さで半分ふらふらになりながら教会へ向かった。

 赤い屋根に赤いタワー、赤い看板に赤い扉。正面にはよく手入れされた花壇に花が咲いていて、まるで子供の絵本の中に出てくるような教会だ。日本の赤といえば寺の鳥居に塗られる朱色のイメージがあるのだが、この赤はヨーロッパではマゼンタ系の赤で、ディズニーランドのメルヘンチックな赤(アメリカの会社ですが、、)を思い出させる。赤は色彩学でいうと暖色系に入り、古代中国では夏を象徴する色を朱色としていたり、今でも結婚式やお祝いの際には赤を基調にしたデコレーションをする。実は教会が完成した当時はスレートで覆われていて、“赤い屋根”になったのは1970年代に入ってからのことである。もしも現在も当時のままの屋根だったら、今にも熱い油や槍が飛んできそうな幅の狭いランセットアーチの窓が目立ち、子供の絵本というよりも、映画に出てくる中世の要塞みたいだな、、と思ってしまった。

 教会内は高い天井にプロペラ空調機が回っているだけなのにひんやりと涼しい。外観の石作りの壁と違い、内部は木と煉瓦細工の壁になっている。木枠の天井はドルチェスター広場近くにあるSt-George’s Anglican Churchに比べると装飾重視と言うよりも実用に重視しているようだが、その屋根を支えている壁の巨大なアーチや、美しいステンドグラス、違った色の煉瓦で模様を描いている壁とで全体的にはとても落ちついた雰囲気になっている。そして、ずらりと並べられた礼拝用の椅子が昔懐かしい日本の小学校のような素朴な木の椅子で、やはり“おとぎ話”の絵を思い出させるようなかわいらしさを感じる。教会後方にあたるスペースにはギャラリーになっていた。私が訪れた日には教会メンバーの方による絵が飾ってあった。‘教会の活動のひとつでもある、La Mission St-Michelというグループのメンバーによる絵なんですよ。’と教会案内係りの方が教えてくれた。その方の話しによると、一ヶ月に何回かのミーティングがあり、主に恵まれない方のためのボランティアをされているそうだが、絵の好きな人たちが集まって自由に書いていた絵を今月(7月7日まで)は教会内で展示しているそうだ。素朴で自由な絵や、子供達が書いた絵などが展示されていて、美術館とはまた違った趣旨でとても興味深いものだった。ちょうど私が教会を出るころに絵の具かばんを持った女性が一人、中へ入っていき、絵の続きを書き始めていた。

 教会外に出ると、巨大わにのぬいぐるみと共ににぎやかなパレードが繰り広げられていた。教会隣にはDu maurierの野外ステージが建てられており、夜のコンサートの準備をのんびりとしている。戻ってきた熱い陽射しに目を薄めながらぼんやりとパレードを見ていると、ちょうど正面ドア横で椅子に座っていた案内係の方が笑いながら、‘今日も暑いですね。ゆっくり教会で休めましたか?’と言われてしまった。私は、あ、ばれていたのね。と思わず苦笑いをし、また暑いジャズフェスティバルの人の渦の中へと飲みこまれていった。

-The Church of St.John the Evangelist
137 President Kennedy Avenue

取材・文・イラスト:りさ
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