「実は、ボク、高い所ってちょっと苦手なんですが・・・。」「アハハ、大丈夫よ。だって、常に壁に対面してる格好だもの。」これが、今回のアクティビティー、体験取材を申し込んだ時の会話でした。その日の夜は、ビデオで『スパイダーマン』を観て、翌日に備えました。

 そして、当日。ドキドキしながらやって来たのは、HORIZON ROC (2350 Dickson、最寄り駅Assomptionから22番のバスで約5分)です。壁の総面積15000平方フィートを誇る、カナダ最大のインドア・ロッククライミング・センターです。まず目に飛び込んでくるのは、やっぱり、壁。高さは、約12メートル。でも、広々とした空間のせいでしょうか、すごく高く見えるんですよ。そしてその壁には、大きさの異なる無数の“ホールド”と呼ばれる、登っていくときの手(足)がかりが取り付けてあります。壁を見上げながら「やっぱ、帰ろうかなぁ」って考えていたら、今回のインストラクター、フィルさんが登場。軽い挨拶の後、曰く、「絶対、面白いって!一度やったら、ハマるよ。安全第一だから、大丈夫。ココで死んだヤツは、まだいない(笑)。」そうで。

 ここでのクライミングは、ロープの両端で結ばれあっている二人一組で行うもの。このロープ、天井近くの太いパイプに一周巻いてあるので、これが定滑車となり、うまく二人のバランスがとれるようになっています。具体的には、まず一人(ボク)が上からロープで吊るされた状態で登る。そしてもう一人(フィルさん)は、下でロープを操りながら、相方(ボク)が降りる時や落ちる時には、グッと腰を落として、サポートする。そのほか、クライミングに使う器具やロープ(の結び方)の安全性もキチンと説明してくれました。

 まずは初心者向けの壁からチャレンジ。「よし、準備OK。さぁ、登ってみて」とフィルさん。「OK、フィル。オレとお前は、さっき会ったばかりだ。だが、オレは、お前を信じる。頼んだぜ、パートナー。」と、ボクはハードボイルドなコトを考えながら、登り始めました。イメージは、スパイダーマン。思っていたよりも簡単でした。スイスイ登れちゃいました。そして、10メートルくらい登ったときだったでしょうか、下からフィルさんが、「モウ・スコ〜シ!」って言ったんです。「あれ?日本語だ!」ってフィルさんの方に上から振り返った瞬間、ガーン。見てはいけないものを見てしまいました。そう、高い=怖い。もうダメ。手足は震え出すし、力が入らない。だから当然、動けない。ホールドにしがみついているのが、やっと。「今までの声援は、ありがたかった。でも、いきなり、日本語しゃべるなよぉ。怨むぜ、パートナー。」どうしようもなく、壁を見つめたまま「おっ、降ろして下さい。」情けないけど、一度、退却でした。

 しかし、この降りるときの感覚がとても不思議。ほら、レスキュー隊員がロープでビルの壁を蹴りながら降りる映像、見たことあるでしょ。ちょうど、あんな感じなんですが、そのとき感じる宙ぶらりんな浮遊感が、なんとも新鮮でした。普段味わえないような感覚って、イイもんです。

いろいろなアドバイスを受けて、気を落ち着けて、もう一度。今度は、意図的に落ちる練習(壁を蹴って、背面に飛び出してみる)も“やらされ”ました。「アンタ、鬼だぜ、パートナー。」しかし、これで安全性が確認されて、高さと落ちるコトへの恐怖心が、次第に薄れていきました。その後、教わった技術を確認しながら、一つずつホールドをクリア。腕の力で体を持ち上げるというよりは、脚で体を押し上げるのがポイント。そして、頂上に到達。文字通り、壁を乗り越えた瞬間。溢れる達成感。ガッツポーズ。YEAH!

 正直に告白します。ロッククライミングがこんなにオモシロイものだとは、思いませんでした。浮遊感や達成感もイイのですが、やはり、安全第一の下で自分の限界を少しでも高めようとする、その姿勢。カッコイイ。ハマる人の気持ちがわかります。最初は、お気楽トライアル・コース(一時間、$15)が、オススメです。本格的に始めるのなら、ライセンス取得のためのコースもありますし、施設も充実しています。詳しくは、こちらを参照して下さい。

 最後に、こっそりお教えしましょう。ロッククライミングで要となるのは、効率的な体重配分。そしてバランス。がむしゃらな力は、それほど重要ではないそうです。だから実は、非力な女性の方が上手だったりするそうですヨ。これは、体験してみてわかったのですが、ロッククライミングは、とても総合的なエクササイズなんですね。まず、筋力アップになりますよね。かつ、ある程度、体の柔軟性も必要になってきます。パートナーとの固い信頼関係の下、クライミング中の集中力、高さを克服するための精神力も大切です。長く厳しい冬に向けて、イイかもしれませんね。「ありがとよ。また会おうぜ、パートナー。」

取材・文:H.N
撮影:床井雄志
過去のアクティビティ
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